こちらk-603. かつらの木と少女
いなかの学校の裏門のわきに、小川が流れていた。
そこに一本の大きなかつらの木があった。
その木のうしろに少女が立っているのを見つけたのは、
10月の、ちょうど今ごろだった。
ぼくは、一人で家に帰るのがすきだった。
石をけりながら。
ある日、石が小川に落ちたとき、川面にきいろい葉が流れているのを見た。
色づいたかつらの葉が、何枚も流れてきた。
たどっていくと、かつら木の根元にその子がいた。
少女は胸の前でちいさく手をふった。
知らない子。
次の日も少女はいた。
かつらの木のわきを通るとき、背中がもぞもぞして、
石けりを忘れそうになった。
少女は口をすぼめて、うわ目使いで、こっそりわらった。
ぼくは小股歩きになって、あわてて石をけとばした
それは小川にとびおちた。
水がはねた。
ぼくのこころもはねる。
10月のちょうど今ごろ、
かつらの木のわきを通れば、
ぼくは後ろをふりむいてみる。
もしあの少女がいれば、
わらって、大きく手をふろう。
いなかの学校の裏門のわきに、小川が流れていた。
そこに一本の大きなかつらの木があった。
その木のうしろに少女が立っているのを見つけたのは、
10月の、ちょうど今ごろだった。
ぼくは、一人で家に帰るのがすきだった。
石をけりながら。
ある日、石が小川に落ちたとき、川面にきいろい葉が流れているのを見た。
色づいたかつらの葉が、何枚も流れてきた。
たどっていくと、かつら木の根元にその子がいた。
少女は胸の前でちいさく手をふった。
知らない子。
次の日も少女はいた。
かつらの木のわきを通るとき、背中がもぞもぞして、
石けりを忘れそうになった。
少女は口をすぼめて、うわ目使いで、こっそりわらった。
ぼくは小股歩きになって、あわてて石をけとばした
それは小川にとびおちた。
水がはねた。
ぼくのこころもはねる。
10月のちょうど今ごろ、
かつらの木のわきを通れば、
ぼくは後ろをふりむいてみる。
もしあの少女がいれば、
わらって、大きく手をふろう。