山口 香の「柔道を考える」

柔道が直面している問題を考え、今後のビジョン、歩むべき道を模索する。

新たな反則

2010-09-07 11:52:55 | Weblog
 世界選手権を目前に控えてIJF(国際柔道連盟)は新たな反則を導入することを決めた。

 報道によると、組み合う前に相手にいきなり抱きつくなどの行為で1度目は「待て」で試合を止めて警告し、2度目から「指導」を与えるそうである。今回の大会から導入される。

 導入の理由は、今年から、双手刈、朽ち木倒しなど、帯から下の下半身を直接攻撃した場合は即座に「反則負け」とする新ルールが適用されたが、それに伴い、それらの技を得意としてきた選手を中心に、相撲のもろ差しのように上半身に抱きついて攻めるスタイルが急増し、組み合って技をかける柔道を奨励するためにも好ましくないとのことである。

 確かに近年レスリングスタイルが加速して柔道競技の独自性が失われる危機感からいわゆる足取り行為を禁止した措置は方向性としては理解できないでもない。しかしながら、以前にも書いたが「反則負け」にする必要があるかというと疑問を持たざるを得ない。実際、相手の技に反応してかけた朽ち木倒し、実際には「反則」にならないと思われるケースで反則負けになった試合もある。つまり、審判によって判定が曖昧な部分が少なからずある。

 選手には「反則」と言われてしまえば抗議することもできない。選手の立場を考えた場合、やはり「反則負け」という取り返しのつかない裁定はいかがなものか。同様に今回の反則の導入も「この時期に????」という疑問がある。確かにヨーロッパで行われた大会で運用されていたという情報はあったが、知っている人間がどれだけいるのか?また、どういった状況であれば反則なのかという共通理解も今の時期では得られない。

 さらにいえばIJFは今年1月に新ルールを発表した際に、今後はオリンピックまでルールは変えないと明言している。つまりIJFの約束は守られないということか?選手からすれば、IJFに対して「反則だ」と言いたいところだろう。

 確かに柔道は組み合って行うものだが、格闘技としての側面もある。「あれをしてはいけない」「これをしてはいけない」と規制をかけていけば格闘技としての部分をどんどん減らしていってしまう。選手達は決められたルールに対応していく。抱きつくような行為が禁止され、それに選手達が対応し、次の策を考えたら次は何が反則になるのだろうか???