やってしまった。
乗らなければ、外野からあーでもないこーでもないとけちをつけて、自分とは縁の遠い存在と思っていられたのに。
乗ってしまったら、問答無用のPOWERにがつんとやられてしまった。
ムルティストラーダ1200は、恐ろしい奴だった。
土曜日は雨です、と昨夜の天気予報は言っていた。
だから深酒をしてのんびり起きたのに、起きたらまばゆい光が差し込んでいる。
おお、出遅れた。
こんな日は、おまけ目当てにムルティストラーダ・デビューフェアに行くしかない。
DTWに向かう途中、ふと思いついてアプリリアの店に寄り道。
どうせなら、モードマッピングのできる気になるもう1台ということで、ドルソデューロにも試乗してしまおう。
こうして、試乗だらけの1日が始まった。
ドルソデューロ。足つきは普通。両足だと土踏まずまで、片足だとべったり。軽い。
HYP796よりもフラットな、まともなポジション。メーターが大きくて見やすい。
最初はツーリングモードでお試し。なんだかぴんと来ない。
DTWの裏手の試乗コースに入ってSPORTモードにしてみると…
おお、油断してると体が置いていかれる。
750って早いなぁ。
でも、こんなので1日走ったらいやになりそうだな。ファンも回りっぱなしで熱いし。
購入候補からは、そそくさと消える印象。
さて、お待ちかね。さっきも走った道を通ってDTWへ。
珍しくバイク置き場が満杯。店内は、いかにもムルティストらしき30代~40台がいっぱい。
じゃーん。ご対面~。モーターショー以来のムルティ1200。
初代もそうだったけど、写真で損してる観のあるムルティくん。
二代目も前からはともかく、乗車姿勢で見る車体は引き締まっていてなかなかのルックス。
乗って初めて気づいたけど、このオートバイはミラーが大きい。
クルマでいうとRV車のそれで、かつて実家で乗っていたハイラックス・サーフを思い出した。
こちら、ツーリングエディションの白。パールが入っていて、きれいな色。
グリップヒーター・センタースタンド・パニアケースの3点セットが揃う、箱おやじにはよだれもんのセットメニュー。
このオートバイで気に入ったのは、ここ。
足の先だけ白い犬みたいで、かわいい。
さて、その箱はどうなっているのだろう。
右側の箱は、排気をよけてえぐってある。耐熱プレートが全面を覆っている。
案の定、右側はほとんどものが入らなさそう。
左側はふつうの構造。今の型よりも、先が尖っていない分、中が広く感じた。
GiviのOEMにしてはえらく立派な内彫りの鍵が…と思ったら、これは車両の予備キーだった。
車両と同じキーなので、ふだんは車両のリモコンキーに内蔵されているメカニカルキーを使って開けるのだそうだ。
順番が来たので、1200に試乗。
試乗車は1200sのSports Edition。
面白がって4モードを試したけど、乗っている間にモーター音を響かせて車高が上下…ということはなかった。
サスの高低や硬軟は、正直よくわからない。この辺は、わからないくらいが美徳なのかもしれない。
反対に、ものすごく違いを感じたのはエンジン。
出だしはツーリングで出て、試乗コースの霊園を抜けたところの信号待ちでスポーツモードに切り替えた。
(アクセルが全閉じゃないとモードは変更できない。クラッチを握って惰性で走りながら…は禁断の裏技。)
!!!
うわっ、さっきまでとぜんぜん違うぞ、このムルティ。
ツーリングモードではちょっとパワフルなムルティ1000(つまり1100くらい)という印象だったのが、
スポーツモードにすると、アップライト・ポジションのSBKそのものの加速に変貌。
同じアクセル開度でも、回転の上昇と加速、そのときの速度がまったく違う。
速い。
これは、速い。
うわぁ。乗らなきゃよかった。
ちなみにスポーツモードの加速に備えて前傾すると、角度のきついスクリーンが目に刺さりそうになる。
けっこう厚みがあるモールなしのふちは、ちょっと気になるところ。
そのほか、位置・サイズともに見やすいメーター、よくデザインされたステップ、ステー要らずのサイドケースと、文句のつけようがない布陣。
よく違いがわからなかった電子制御サスもカーボンパーツもいらないので、STD(それでも標準でABSがつく!)にセンスタとグリップヒーター(メーターパネルから制御できるらしい!)とサイドかトップケースをつけると、いくらになるんだろう。。。
あああ。知らなければよかった。予想していたより、遥かに心に突き刺さった、1200。
予想外に良すぎたムルティ1200の衝撃を中和すべく、やけ気味にさらなる比較試乗。
向かった先は、BMW。
ついに本家GS軍団と向き合う気になったのだ。
お目当てのオートバイが試乗に出ているところだったので、最初に一番自分の使い方にあっていそうなF650GS(コンパクトで前後キャストホイール)に乗る。
感想。地味すぎる。おだやかなシティ・コミューターにして優秀な長距離ツアラーかもしれないけど、いかんせん地味すぎる。
振動ゼロ。ついでに静か過ぎて、最初エンジンかかってるかどうかわからなかった。
ここまで地味なオートバイに、このプライスタグはないなぁ。
がっかりして帰ってきたら、お目当て1号が巨体を震わせながら待っていた。
ずん。泣く子も黙るベンチマーク、R1200GS。
しかも出たばっかりのDOHCヘッドのGS。
おそるおそる乗ってみる。アクセルをあおると、確かに右に振られる。
走ってると気にならないけど、疲れ果ててとまってる時だと、ぐらっとくるかもしれない。
走り出すと、異様なまでの低重心で、切り替えしが早いこと早いこと。
ブレーキングでフロントが一向に沈まないのに違和感を覚えて、しばらくして気づく。
これがパラレバーの効果なんだ。初めて実感。
なんだか不思議な乗り味。
F650から乗り換えると、パワーにも振動にも、活き活きとした躍動感を強く感じる。
前から見ると太っちょな1200GSも、ライダー目線ではスリムなデザイン。
何より、振動があるのがいい(←すっかり感覚がおかしくなっている人)
倒しこんでもこける気がしない安定感、適度に向こうにあってムルティ1200のような突き刺さり感のない大型スクリーン。
これはムルティ1200と同じくらい、「知らなきゃよかった」オートバイ筆頭だなぁ。
ムルティ1200はGSイーターだ、という評もあるけれど、こうして乗り比べてみると全く傾向が異なることに気づく。
同じマルティパーパスの中でも、ゆったりロングライド系とスポーツ系、かなり両極端の2台だと思う。
R1200GS。ライダー人生、あがりのバイクとして名高いだけのことはある。
R1200に酔いしれて帰ってくると、別の店に行っていたF800GSが戻ってきていた。
もうFのツインはいいや、と思いながら、お店の人に薦められるままに試乗する。
本日5台目。
このF800GSは日本標準仕様のローシートで、両足だと土踏まずまで、片足だとべったり。
F650GSはエンデューロ・シートがついていたけど、同じ。
R1200GSもムルティ1200も、今日のった5台の足つきはみんな同じ。
さて、F800。
乗ってみて驚いた。F650とはCPUの違いだけでずいぶんパワフルになっているんだけど、驚いたのはそこじゃない。
今のムルティ1000にそっくりなのだ。
もちろんドゥカ特有の音も振動もがっつりした出だしもないけれど、しなやかなサスのストローク感とか、
パワーの出方とか、まさしくくりそつ。
BMW試乗車3台の中で、いちばんリラックスして、すぐに自分のオートバイみたいに走らせられたのはF800GSだった。
かっこもいいし、かなり気に入ったけど、ここまで似通っているとF800GSには乗り換える意味がないような気がする。
やはり、すごいです感とか、いいものです感をかんじさせてくれるのは、巨匠R1200GSだなぁ。
ムルティ1200とR1200GS。
よりによって、このジャンルで一番高い2台に惚れこんでしまうとは。
うかつにいいものに触れるんじゃなかった。
[そんなうかつなジョンマンさんの、今後の行く末]
今後の行く末A:オートバイに200万も出すご身分じゃありません。(ムルティ1000車検通すコース)
今後の行く末B:…いいもんはいいんじゃ。でへへ。(破滅コース)
第三の選択肢C:Aで車検通すんだけど、夢のセカンドバイクとか行っちゃう?(セカンドが何かが問題)