BikeRide&Climbing
クライミングと自転車。
エナジー日記。
・・・飲酒日記と料理の日々・・
 



 昇は留年する。このままでは卒業も危ぶまれる。
 担任と顧問と、父、宣出も三者で悩み、葛藤する。が・・
「本人が立ち上がらない限り、我々は無力ですな。」
 父の宣出の言である。

 とある日。瞳は昇を呼び出す。校舎の屋上へ。
 
 昇くんはもう登らないの?なぜ、前向きに進もうとしないの?と。
 昇は弱々しく吐く。
「なにもわかっちゃいねーんだな。」
 コンペで勝つ。ということ。身をすり減らして勝つということ。100%では足りず、常に+アルファ。120%を求められる、+怠らぬ前進を求められる世界で勝つ、ということの意味を。と。
 要は怪我してコンペなんてありえねーって、ことだよ。100%の身を持ってしても、どこまで戦えるかは分からない世界だ。リハビリ?ま。。楽しむクライミングならいいだろうけどな。オレには興味ねえよ。
 
 瞳はうつむく。でも。

 震える肩。
 きっと、見据える目をあげ、昇に真っ直ぐな眼差しを向ける。射るように。

「ヒュー・ハーは足がなくったって、100mを11秒で走るんだよ。12だって、普通に登るんだよ。小野みねおだって、足ないけど12はふつ~に登るんだよ。怪我したって、足、ちゃんとあるじゃない。コンペで世界に立てなくったって、、クライミングができないわけじゃないじゃない。コンペで勝つだけがクライミングなの?あなたのクライミングって、そんなもんだったの?あなたの登りで、どきどきしたり、感動したり、明日を夢見たりする子供たちだっているんだよ!絶望に日がさしたり、一筋の感動が勇気を与えるってことを想像してみたことはないの!??あなたの登りを、一挙一頭足を、、全て見つめている人たちがいることを、その人たちの目を、意識したことはないの?あなたの登りはあなただけのものじゃない!みんなに支えられてるってことがわからないの!?そんなの、勝手だよ!あなたはあなただけで登ってるんじゃないのよ!」

 昇はなにも言葉を返せなかった。
 

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