時間の歴史
HISTOIRES DU TEMPS
ジャック・アタリ 著
蔵持不三也 訳
ちくま学芸文庫
2022年2月10日 第一刷発行
本書において、時間を測るもろもろの道具の歴史、すなわち日時計から現代の実に奇妙な格好をした時計にいたるまでの歴史を詳細に通観し、あわせてその理論家や発明家、製作者の歴史を垣間見ようとしています。
第1章 水と日時計
Ⅰ 神々の時
しばしば太陽と月といった天体と同一視される原初期の祖霊が、地上に対して統制と力を行使する。
Ⅱ 聖なるものの暦
中国の場合、時間と権力と暦の間の関係はほかのほとんどの王朝や帝国以上にはっきりしていた。
すなわち、帝国の首府は皇帝の大権と権力の堅固さを象徴する欽天監(天文・暦数の測定推歩を司った役所、1370年以降)を有していなければならなかった。
Ⅲ 水と日時計
紀元500年頃になって、ようやくローマ人たちはパレスチナのガザにヘラクレスの大時計を建てる。
これは動く彫像を伴う巨大な水時計で、ヘラクレスが共鳴箱の上で時を打ち、メデゥーサの一人が流し目を左右に送る仕掛けになっていた。
教会の表層的な権力獲得、キリスト教の暦管理、暴力統御の究極的な聖性観、これがヨーロッパの紀元千年であった。
教会による時間の管理は修道院の設立運動から出立する。
Ⅳ 時打ち人形と市塔
時打ち人形が仕掛けられた市塔は、新しい都市権力の重要なシンボルとなる。
第2章 重錘と棒テンプ
占星術が機械に、神官が警吏に、水時計が大時計に、鐘楼が市塔にそれぞれとって代わられることで、時を告げる場が根底から一変した。
Ⅰ 身体の時
中世が終わりを告げる頃、最初の工業機械ともいうべき〈大時計〉が出現する。
大時計の時鐘には、殆どの場合、ハンマーでティンバルを叩いて時を告げる例の時打ち人形(ジャック・マール)が姿を見せるが、北仏、特にコンピエーニュ地方では、かつて民衆を大いに楽しませた時打ち人形を保存している市塔がいくつもある。
時計師というのはきわめて奇妙な職業である。神官と魔女の、鍛冶師と武器作りの、占星術史と卜者の衣鉢を継ぎ、同時に、修道院や宮廷用の水時計をつくるすべてのものの後継者でもあった中世の時計師たちは、さらに技術者としての一面を兼ね備えていなければならなかった。
Ⅱ カーニヴァルと大市
Ⅲ ゼンマイとクロノメーター(精密時計)
統御可能なエネルギーの貯蔵庫としてのゼンマイ
第3章 ゼンマイとアンクル
Ⅰ 時間の機械
Ⅱ 機械の時
エネルギーの大量生産と貯蔵の期間
Ⅲ 時間通りに生きる
第4章 クオーツとコード
Ⅰ 危機の時
Ⅱ 生の時計、死の時計
Ⅲ 《明敏な夜警》
『伝道の書』はいっている《太陽の下に新奇なるものはなし》
しかし、聖書に関するユダヤ律法学者の注釈はこうも述べている《太陽の上には、新しいものがある》
修道院の鐘が徐々にヨーロッパという無秩序な大海の中に都市の秩序を創り出したように、また陸に上がった海洋時計が駅やタイム・カードのリズムを固定させたように、今日エレクトロニクス暦の反復的な秩序が脅威になっている。
解題
「神々の時」
日時計と水時計がかけがえのない計時具
「身体の時」
分銅と平衡輪の登場によって時刻が確定
「機械の時」
人間が機械だけでなく、時間が人間それ自体を統御するための単位となっている
「コードの時」
時間をコード化したクオーツ時計が出現
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