Dr. Jason's blog

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ナッシュ博士の論文と解説

2005-12-04 | Education
 Amazon.co.jp より,先日注文しておいた「ナッシュは何を見たか」が届く.

 本書は, 1994年にノーベル経済学賞(ノーベル記念スウェーデン銀行賞)を受賞した数学者 ,すなわち映画「ビューティフル・マインド」の主人公である, ジョン・ナッシュ (John F. Nash Jr.) 博士の経歴,自伝,主要論文8編(全訳)とそのれらの解説等をまとめたものである.
(ナッシュ博士の学位論文である,「非協力ゲーム」(NON-COOPERATIVE GAMES) は,英文原論文のフォトコピーも掲載.これは必見.)

 ナッシュ博士は,「統合失調症」を発症して1959年から約30年間病院漬けとなっていたが,現在はプリンストン大学で「Senior Research Mathematician」として,研究を続けている.

 自伝の中に「そこで私は,ゲーム理論がその数学教室では学位論文として受け入れがたいと見なされる可能性にそなえて学位修得の目的を他の結果で実現できるようにした.」(p.30)とあった.つまり,「非協力ゲーム」の論文が,学位論文として通らない場合にそなえて,後に発表された「実代数的多様体」の論文を並行して準備していたという.これには,いささか驚いた.
 また,ナッシュ博士が,「一般流体の微分方程式に対するコーシー問題」とい流体力学関連の論文を発表していたこと,1950年ごろのMITがまだ「一流の工科大学」であり今日のような米国を代表する研究大学ではなかったことを,本書で始めて知った.


 わたしは,数学を専門とするわけではないので,日本語に翻訳されていたからといって,ナッシュ博士の多くの論文をちゃんと理解できるとは限らないが,最初から原文にあたるよりは,解説付きの翻訳は理解しやすいと思う.
 
 ゲーム理論,交渉問題,ナッシュ均衡,ナッシュ交渉解,あるいはナッシュ博士自身に興味のある方に,お勧めする.


ナッシュは何を見たか -純粋数学とゲーム理論

シュプリンガー・フェアラーク東京

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