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Dr. Jason's blog

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がんと食事

2009-05-09 | Medicine
 「がん」と食品の関係,がんと生活習慣の関係について興味のある方には,以下の文献,資料に目を通されることを強くおすすめする.



[乳がんと牛乳の関係について]

自身が乳がん患者であった地質学/地球化学専攻の科学者の視点
乳がんと牛乳──がん細胞はなぜ消えたのか

ジェイン・プラント

径書房

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農業,食品ジャーナリストの視点
乳がんと前立腺がんの死亡者はなぜ増えるのか (扶桑社新書 36)

横田 哲治

扶桑社

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[がんと食事の関係について]

米国対がん協会(American Cancer Society)のガイド(2001年度版の翻訳)
「がん」になってからの食事療法―米国対がん協会の最新ガイド

米国対がん協会

法研

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米国対がん協会は,権威ある米国最大の「ガン」に関する非営利民間団体だが,米国国立がん研究所(National Cancer Institute),ガン関連製薬会社,ガン関連検査機器会社等との利害関係や団体の体質に疑問を呈する人々も少なくない.
また,本書の基となっている論文やデータが,概ね1999年ごろまでのもので,乳がんがんと乳製品との関連に関する2000年以降の研究成果は反映されていない.しかし,ホルモンの影響を受けるがんとして知られている,前立腺がんについては,カルシウム摂取の視点から乳製品を避けるべきという記述がある.しかし,基になっている論文は1996年に発表された,食事と前立腺がんに関する,疫学調査なので「本当にカルシウムが問題だったのか」どうかは怪しい.カルシウムではなく,乳がんの場合と同じメカニズムで,「牛乳,乳製品」そのものが問題である可能性もある.


生物工学専攻の女性がん予防研究者の視点(2008年前半までの約300万人の女性の調査結果に基づくレポート)
乳がんからあなたを守る食事とライフスタイル (mag2libro)

大藪 友利子

パレード

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がんの疫学研究者の視点
食べ物とがん予防―健康情報をどう読むか (文春新書)

坪野 吉孝

文藝春秋

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[がんと生活習慣の関係について]

遺伝子研究と臨床現場の両方を知る医師の視点
ガンは「生活習慣」が「遺伝」の10倍 (講談社プラスアルファ新書)

飯塚 啓介

講談社

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[科学的根拠に基づくがん予防法]

疫学専門研究者の視点
がんになる人ならない人 (ブルーバックス)
津金 昌一郎
講談社

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喫煙による発がんリスクについて,広島の原爆での被爆量との比較の説明の部分だけでも,一読の価値あり.


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乳がんと牛乳 その2

2009-05-09 | Medicine
 しばらく前から,google.co.jp で,「牛乳 乳癌」と検索すると,私の blog の記事「乳癌と牛乳の関係」 2009-01-17 が1番最初に検索結果として表示されるようになった.
 この記事を書いた当初は一番だったが,最近また,このページにリンクを張っているblog等(特に乳がん患者の方のblog等)が増えてきているようだ.
# キーワドを逆にして,「乳癌 牛乳」とすると,3番目に表示される.


 この記事で紹介した本:
乳がんと牛乳──がん細胞はなぜ消えたのか

ジェイン・プラント

径書房

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 は,インターネット上ではあちこちで色々と話題になっているが,国内の新聞やテレビ等の大手マスコミではほとんど,取り上げられていない.しかし,乳製品のメーカーは大手の広告主であることを考慮すれば,マスコミでは取り上げられないのは当然かもしれない.


 この本を読んだあとで,訳者の山梨医科大学名誉教授 佐藤章夫 先生と直接やりとりして,関連する論文などをいくつかご紹介いただいた.また,自分でも関連する分野について,専門の論文,様々な書籍,インターネット上の情報など,色々と勉強してみた.


 そのなかで,TIME誌の「Global Breast Cancer」という特集のWebページはとても勉強になった.
 特に,Breast Cancer Around the Worldのページには,人口10万人当りの乳がんの発生率を国毎に(世界地図にマップして)表したとても見やすい図がある.

 この地図に示される,国別の乳がんの発生率(単位:人,人口10万人当り.年齢補正済み.2002年統計.)をいくつかピックアップしてみよう.

 日本 32.7
 米国 101.1
 カナダ 84.3
 イギリス 87.2
 フランス 91.9
 ドイツ 79.8
 イタリア 74.4
 イスラエル 90.8
 ニュージーランド 91.9
 オーストラリア 83.2
 パキスタン 50.1
 インド 19.1
 アルゼンチン 73.9
 ブラジル 46
 トルコ 22
 韓国 20.4
 タイ 16.6


 ここで,上記の国について,文末に示した統計資料の本の「1人1日あたりの食品供給量」(世界国勢図会〈2005/06〉pp.478-480) から「牛乳・乳製品」のデータ(単位:g/日,1人1日当り,国別,2002年)を拾ってみる.

 日本 184
 米国 717
 カナダ 570
 イギリス 633
 フランス 755
 ドイツ 724
 イタリア 701
 イスラエル 618
 ニュージーランド 521
 オーストラリア 723
 パキスタン 420
 インド 172
 アルゼンチン 444
 ブラジル 325
 トルコ 268
 韓国 81
 タイ 52


 米国では日本の3倍以上の乳製品を摂取して乳がんの発生率も約3倍,タイでは,日本の1/3以下の乳製品を摂取して乳がんの発生率は約半分である.


 これらをグラフにプロットすると以下のようになる.

[国別の乳癌発生率と乳製品の摂取量 (2002年)]

Dr. Jason Suzuki 作成
参考文献
http://www.time.com/time/2007/breast_cancer/
世界国勢図会〈2005/06〉矢野恒太記念会



 特に統計の専門知識がなくても,上記のグラフをみただけで,国別の乳癌発生率と乳製品の摂取量の間にはとても高い「正の相関関係」があることがわかる.
 ここで,乳癌発生数と乳製品の摂取量の相関係数は 0.929 である.

# ニュージーランドが,オーストラリアよりも乳がんの発生が多いことについては,以下の仮説を持っている.オーストラリアでは食肉牛の牛肉が相対的に安いため食肉牛の牛肉が多く消費されている,それに対してニュージーランドでは,乳牛を含む牛肉がひき肉の形で消費される比率が高い.乳牛の肉は,食肉牛よりも「乳がんと牛乳」の中で指摘されているとおり,IGF-1(インスリン様成長因子1)もホルモンも濃度が高い.


 このように,ほんの少し統計データをみただけでも,乳製品の摂取が多い国では,明らかに乳がんの発生数が多いことが,非常に直感的に理解できるだろう.

 いずれにしても,おおざっぱに言えば,
「乳癌(あるいは前立腺がん)のリスクが高い人,乳癌(あるいは前立腺がん)の患者は,牛乳と乳製品の摂取はすぐにやめるた方がよさそうだ.」
 というのが,工学者としての私の理解である.

 この事に気がついてから,私自身は,牛乳,チーズ,ヨーグルトは極力摂取しないようにしているし(豆乳や豆乳ベースのヨーグルトに切り替えた),家族や友人にもこのことを説明している.




 佐藤先生らが2005年に発表した論文,"The possible role of female sex hormones in milk from pregnant cows in the development of breast, ovarian and corpus uteri cancers"(Medical Hypotheses (2005) 65, 1028–1037)によると,世界40カ国の牛乳,乳製品の1人1日あたりの消費量(g/日)と,乳がんの発生数(人/人口10万人当り)には,相関係数 0.817 という高い相関があると報告されている.ここでは,IGF-1よりも,牛乳の中に含まれているホルモンが問題とされている.
 この論文で計算の基となっているデータは,乳がんの発生に関しては1993-97年,乳製品の消費については1961–97年である.(日本で,普通の家庭の食卓にいつごろから牛乳が出てくるようになったか?小学校,中学校の給食で毎日牛乳を飲むようになったのはいつからか?も思い出してみてほしい.小学校の給食で,毎日牛乳を飲むようになった世代の女性は,その前の世代の女性よりも乳がんの発生数が多く,初発年齢も相対的に低いという研究もある.)


 もちろん,乳がんへの影響が疑われる食品として,乳製品だけを取り上げるわけではないが,これまでよく言われてきた動物性のタンパク質や脂肪にだけとらわれて,乳製品の摂取について十分に吟味しないのは非常に危険であると言えよう.




[乳がんと牛乳の関係について]

自身が乳がん患者であった地質学/地球化学専攻の科学者の視点
乳がんと牛乳──がん細胞はなぜ消えたのか

ジェイン・プラント

径書房

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農業,食品ジャーナリストの視点
乳がんと前立腺がんの死亡者はなぜ増えるのか (扶桑社新書 36)

横田 哲治

扶桑社

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[世界の地域別の乳癌発生数] (TIME誌のWeb, 2002年度のデータによるもの)
Breast Cancer Around the World (TIME)

[入手しやすい世界の統計データの参考書] (2002年のデータが収録されている版)
世界国勢図会〈2005/06〉―世界がわかるデータブック

矢野恒太記念会

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コメント (1)
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