先ほどテレビで「デイ・アフター・トゥモロー」を見ました。
「温暖化で異常気象になってしまう映画」ということで、見てみたいなとは思っていたのですが、いつの間にかロードショーも終わってしまい、そのままになっていました。
この映画を見て一番印象に残ったのは内容云々ではなくて、意外にも「NOAA(米国の海洋大気庁)」でした。
映画の冒頭で南極での観測中に巨大な棚氷が海に流れ出すという場面で、観測隊員の胸に見覚えのあるNOAAのマークがあったのです。
思わず「おお!NOAAだー」と声を出してしまったほどでした。
映画はNOAAの研究者がニューヨークに出かけた息子を助けに行くというもので、私の中ではすっかり「NOAAの映画」という印象になってしまいました。
1年前ならNOAAって何?というくらい知りませんでしたが、マークを見ただけで反応するようになっていたことに驚きました。
英語も読めないのに、調べ物をするために何度もwebサイトに通った成果でしょうか?
それでは渡井さんからの南極だよりです。
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2006年11月18日(土) 快晴 D靴
越冬隊員には靴が4足支給される。
安全長靴1足、普通の長靴2足、D靴1足だ。
安全長靴は主に夏作業用。
爪先に金具が入っているので建築・土木作業に最適だ。
が、寒い時は金属が入っていることで爪先が冷えてしまい役にたたない。
D靴は最も防寒性が優れている。
厚底である上に生地がふかふかしていて暖かい。
が、弱点もある。
一つは厚底であるが故にいまいち足首がグラグラし不安定であることだ。
長年モデルチェンジしていないのであろう、ちゃちい金具にベルトを折り返してとめる方式は手間がかかることも要改善箇所だ。
もうひとつは生地に防水性がないことである。
雪解けが始まったこの時期はそろそろD靴の出番もおしまいだ。
雪解け水が滲みてきてかえって悲惨になってしまうであろう。
もちろん湿った雪の多い日本の冬では使えない。
が、これは防寒性に特化しているのでいたし方ないことか。
防水性が必要になるほど気温が上がったら長靴にすればよいのである。
個人的には靴下を2足履いた上で、-10℃がD靴と長靴の境界線かな、と思っている。
体を動かしてしている時はよいが、ペンギンセンサスなど止まっている時は長靴だと-10℃では少々厳しいのだ。
しかし個人差もある。
森さん@FAは-30℃でも長靴で過ごしていたっけ。
根本的な鍛え方が違うのかもしれない。
-----11月18日本日の作業など-----
・O3論文読み
・HVS真空引き&充填準備
・O3変動解析
・HVS Air分析
最初に水を入れるとよくないのか…
・CO2, CH4, CO, O3濃度分析システムチェック
<日の出日の入>
日の出 1:20
日の入 23:03
<気象情報>
平均気温-7.3℃
最高気温-5.0℃(1059) 最低気温-10.9℃(2347)
平均風速4.8m/s
最大平均風速11.1m/s風向ENE(0030) 最大瞬間風速13.5m/s風向ENE(0024)
日照時間 20.7時間
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赤い上下の防寒服に黄色い大きな靴。
観測隊といえばこの格好というのが観測隊を見始めた頃のイメージでした(さすがに今は違いますが)。
その靴の名前がD靴というのはいつ知ったのかは思い出せませんが、1年くらい前には既に知っていました。
なぜD靴というか?という疑問はしばらく持ち続けていましたが、そのうち忘れてしまい日が経ってある本をきっかけにそれが一気に解明されたのでした。
それが「ニッポン南極観測隊~人間ドラマ50年」でした。
観測隊OBの方々が執筆していて、その中の第3章「南極育ちの衣・食・住―初期の開発秘話あれこれ 執筆:小野延雄」に書いてありました。
今日実は、小野さんにお会いしたのですが、この南極だよりをもらう前だったので、D靴について詳しく尋ね損ねてしまい残念な思いをしました。
D靴はオニツカ株式会社(現在のアシックス)が作っていたようです。
写真のD靴にもアシックスの文字が見えますね。
昔はマクラック型の防寒靴で、防水性の外側とフェルトや合成繊維の綿の内靴を組み合わせたものと書いてあります。
マクラックというのは調べてみるとオットセイの皮とありました。
そういえば今日、アザラシは脂肪で防寒するけれど、オットセイ(アシカ類)は密集した細かい毛皮で防寒すると教えてもらったばかりでした。
D靴は「テイジンのコアスパン(テトロンの長い繊維を綿で被覆した紡績糸)の帆布を表甲生地に使い、その裏に薄い耐寒性ゴム層を入れてに水分や外気を遮断した。テビロンのフェルトで形を整え、内側はナイロンとテトロンの混合綿布でテビロン面を包んでキルティングしている。
靴底はテビロンフェルトで中敷き、中底、大底を作り、耐寒耐油ゴムのビブラム底を貼り付けた。」と本の中に書かれています。
なんだか分かるような分からないような感じ(繊維の説明を最後に付しておきました)ですが、当時、北大低温科学研究所の-50℃の低温室でじっとしたり足踏みをして性能試験が行われてできあがったものだそうです。
(北大山岳部の学生さんがテストに参加されたのだそうです。47次の隊員さんにもOBの方がいらっしゃいますね!)
そういえば私が夏に訪れたときも低温室の前にD靴があったのを思い出しました(履いてみればよかった)。
テストした少しずつ形状の違う防寒靴はA・B・C・D・E型と呼ばれていて、当時のパンフレットにはC・D・E型が載ったと書いてあるので、その3つは少なくとも実用化されたものなのでしょう。
D型は第9次で南極点旅行の時に使われ、そのまま今も観測隊で使われているもののようです。
C型はゴムキャップ式で、防寒靴にゴムキャップをはめて使うため、海水がフェルトにしみにくいのだそうです。
E型は「過去に履いたどの靴よりも暖かく、履きやすく脱ぎやすく履き心地も良好」と南極点旅行をしたチャールズ・ベントレイ隊長の報告がされているとのこと。
靴を重ね履きする従来の靴と違って、履きやすく脱ぎやすいことも多くの国の隊で使用されている(正式採用しているところもある!)所以なのかもしれません。
渡井さんの南極だよりでは使いにくい部分も書かれています。
今の技術なら改良できるところもあるでしょうから、ぜひ使いやすさと暖かさを兼ね備えた新しいD靴の開発もしてもらいたいですね。
上のD靴の写真を撮ったとき、渡井さんは裸足にサンダルだったそう。
ずいぶん暖かくなったのですねー。
※ テトロン
1958年に帝人と東レがICI 社から技術導入し、共同で開発したポリエステル繊維の商標
※ テビロン
1956年に帝人が独自の技術で開発した合成繊維(ポリ塩化ビニル繊維)
本文中に「保温力、強さ、弾力、速乾性などを生かした」と書いてありました
※ ビブラム底
グリップ力、耐久力には抜群の定評がある、イタリアのビブラム社製のラバーソール
「温暖化で異常気象になってしまう映画」ということで、見てみたいなとは思っていたのですが、いつの間にかロードショーも終わってしまい、そのままになっていました。
この映画を見て一番印象に残ったのは内容云々ではなくて、意外にも「NOAA(米国の海洋大気庁)」でした。
映画の冒頭で南極での観測中に巨大な棚氷が海に流れ出すという場面で、観測隊員の胸に見覚えのあるNOAAのマークがあったのです。
思わず「おお!NOAAだー」と声を出してしまったほどでした。
映画はNOAAの研究者がニューヨークに出かけた息子を助けに行くというもので、私の中ではすっかり「NOAAの映画」という印象になってしまいました。
1年前ならNOAAって何?というくらい知りませんでしたが、マークを見ただけで反応するようになっていたことに驚きました。
英語も読めないのに、調べ物をするために何度もwebサイトに通った成果でしょうか?
それでは渡井さんからの南極だよりです。
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2006年11月18日(土) 快晴 D靴
越冬隊員には靴が4足支給される。
安全長靴1足、普通の長靴2足、D靴1足だ。
安全長靴は主に夏作業用。
爪先に金具が入っているので建築・土木作業に最適だ。
が、寒い時は金属が入っていることで爪先が冷えてしまい役にたたない。
D靴は最も防寒性が優れている。
厚底である上に生地がふかふかしていて暖かい。
が、弱点もある。
一つは厚底であるが故にいまいち足首がグラグラし不安定であることだ。
長年モデルチェンジしていないのであろう、ちゃちい金具にベルトを折り返してとめる方式は手間がかかることも要改善箇所だ。
もうひとつは生地に防水性がないことである。
雪解けが始まったこの時期はそろそろD靴の出番もおしまいだ。
雪解け水が滲みてきてかえって悲惨になってしまうであろう。
もちろん湿った雪の多い日本の冬では使えない。
が、これは防寒性に特化しているのでいたし方ないことか。
防水性が必要になるほど気温が上がったら長靴にすればよいのである。
個人的には靴下を2足履いた上で、-10℃がD靴と長靴の境界線かな、と思っている。
体を動かしてしている時はよいが、ペンギンセンサスなど止まっている時は長靴だと-10℃では少々厳しいのだ。
しかし個人差もある。
森さん@FAは-30℃でも長靴で過ごしていたっけ。
根本的な鍛え方が違うのかもしれない。
-----11月18日本日の作業など-----
・O3論文読み
・HVS真空引き&充填準備
・O3変動解析
・HVS Air分析
最初に水を入れるとよくないのか…
・CO2, CH4, CO, O3濃度分析システムチェック
<日の出日の入>
日の出 1:20
日の入 23:03
<気象情報>
平均気温-7.3℃
最高気温-5.0℃(1059) 最低気温-10.9℃(2347)
平均風速4.8m/s
最大平均風速11.1m/s風向ENE(0030) 最大瞬間風速13.5m/s風向ENE(0024)
日照時間 20.7時間
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赤い上下の防寒服に黄色い大きな靴。
観測隊といえばこの格好というのが観測隊を見始めた頃のイメージでした(さすがに今は違いますが)。
その靴の名前がD靴というのはいつ知ったのかは思い出せませんが、1年くらい前には既に知っていました。
なぜD靴というか?という疑問はしばらく持ち続けていましたが、そのうち忘れてしまい日が経ってある本をきっかけにそれが一気に解明されたのでした。
それが「ニッポン南極観測隊~人間ドラマ50年」でした。
観測隊OBの方々が執筆していて、その中の第3章「南極育ちの衣・食・住―初期の開発秘話あれこれ 執筆:小野延雄」に書いてありました。
今日実は、小野さんにお会いしたのですが、この南極だよりをもらう前だったので、D靴について詳しく尋ね損ねてしまい残念な思いをしました。
D靴はオニツカ株式会社(現在のアシックス)が作っていたようです。
写真のD靴にもアシックスの文字が見えますね。
昔はマクラック型の防寒靴で、防水性の外側とフェルトや合成繊維の綿の内靴を組み合わせたものと書いてあります。
マクラックというのは調べてみるとオットセイの皮とありました。
そういえば今日、アザラシは脂肪で防寒するけれど、オットセイ(アシカ類)は密集した細かい毛皮で防寒すると教えてもらったばかりでした。
D靴は「テイジンのコアスパン(テトロンの長い繊維を綿で被覆した紡績糸)の帆布を表甲生地に使い、その裏に薄い耐寒性ゴム層を入れてに水分や外気を遮断した。テビロンのフェルトで形を整え、内側はナイロンとテトロンの混合綿布でテビロン面を包んでキルティングしている。
靴底はテビロンフェルトで中敷き、中底、大底を作り、耐寒耐油ゴムのビブラム底を貼り付けた。」と本の中に書かれています。
なんだか分かるような分からないような感じ(繊維の説明を最後に付しておきました)ですが、当時、北大低温科学研究所の-50℃の低温室でじっとしたり足踏みをして性能試験が行われてできあがったものだそうです。
(北大山岳部の学生さんがテストに参加されたのだそうです。47次の隊員さんにもOBの方がいらっしゃいますね!)
そういえば私が夏に訪れたときも低温室の前にD靴があったのを思い出しました(履いてみればよかった)。
テストした少しずつ形状の違う防寒靴はA・B・C・D・E型と呼ばれていて、当時のパンフレットにはC・D・E型が載ったと書いてあるので、その3つは少なくとも実用化されたものなのでしょう。
D型は第9次で南極点旅行の時に使われ、そのまま今も観測隊で使われているもののようです。
C型はゴムキャップ式で、防寒靴にゴムキャップをはめて使うため、海水がフェルトにしみにくいのだそうです。
E型は「過去に履いたどの靴よりも暖かく、履きやすく脱ぎやすく履き心地も良好」と南極点旅行をしたチャールズ・ベントレイ隊長の報告がされているとのこと。
靴を重ね履きする従来の靴と違って、履きやすく脱ぎやすいことも多くの国の隊で使用されている(正式採用しているところもある!)所以なのかもしれません。
渡井さんの南極だよりでは使いにくい部分も書かれています。
今の技術なら改良できるところもあるでしょうから、ぜひ使いやすさと暖かさを兼ね備えた新しいD靴の開発もしてもらいたいですね。
上のD靴の写真を撮ったとき、渡井さんは裸足にサンダルだったそう。
ずいぶん暖かくなったのですねー。
※ テトロン
1958年に帝人と東レがICI 社から技術導入し、共同で開発したポリエステル繊維の商標
※ テビロン
1956年に帝人が独自の技術で開発した合成繊維(ポリ塩化ビニル繊維)
本文中に「保温力、強さ、弾力、速乾性などを生かした」と書いてありました
※ ビブラム底
グリップ力、耐久力には抜群の定評がある、イタリアのビブラム社製のラバーソール