--Katabatic Wind-- ずっと南の、白い大地をわたる風

応援していた第47次南極地域観測隊は、すべての活動を終了しました。
本当にお疲れさまでした。

オーロラ・星空撮影

2006-05-19 | 南極だより
雨ばかり続いて運動会の練習ができません。
そろそろ晴れてほしいんだけどな。
それでは渡井さんからの南極だよりです。
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2006年5月18日(木) 曇りのち晴れ オーロラ・星空撮影

これから太陽の出ない冬を迎えるにあたり、オーロラや星空をみることは大きな楽しみだ。
3月は良くオーロラが見えたのだが、それ以降ほとんど見えない状態であった。
しかし今日はいつになく早い時間からオーロラが揺らめきだした。

今はデジタルカメラの普及によって手軽に撮影し、すぐ画像を楽しむことができるのだが、オーロラの撮影方法はフィルムでの撮り方が伝えられていることも多く、そのままではデジカメに適用できない。
感度がフィルムに比べて格段に良いので、短い露出時間で済むことが一番の違いであろうか。
デジカメに使われているCCDの特性を山本さん@宙空に教えていただいた。

1) カメラを冷やす
なによりも撮影前にカメラを外気温になじませておくことが必要だ。
これはカメラ内部の温度を外気温と合わせることで空気の対流や温度差による、光の屈折を理想の状態に近づけることができるからだ。
またデジタルカメラの眼となるCCDは低温でその性能を引き出すことができる。
光学観測用のCCDはマイナス50°から60℃程度まで冷やすらしいのだ。
室内から野外に、野外から室内に持ち込むときも要注意だ。
急激な温度変化はカメラ本体や内部に水滴を付かせることとなる。
最近の電子機器を搭載したカメラでは即故障にも繋がりかねない。

2) ピントを合わせておく
夜空を撮影する際にはピントはマニュアルで合わせる必要がある。
オートフォーカスだと、被写体のコントラストがはっきりしないため、カメラがピントを合わせる際に迷ってしまうのだ。
星やオーロラを撮影する際は無限遠にピントを合わせる必要がある。
ところが最近のオートフォーカスカメラは一番端が無限遠というわけではない。
無限遠よりさらに先まで回るようになっている。
これはオートフォーカスを行う際に勢いで回る分を考慮した設計だろう。
レンズには無限遠の印が付いてはいるのだが、これは微妙なずれがあるという。
そこで無限遠の印から両側に1mm、0.5mm程度ずらせて撮影し、それを拡大してみることでレンズ固有の真の無限遠のポイントをあらかじめ探しておくのだ。

現在夜空撮影用に用いているレンズは、SIGMA 20mm F1.8 EX DG Aspherical RF
広角と明るさを求め価格面で選んだレンズだ。
無限遠の時のピントリングの位置はマークから1mm近距離よりにあった。

3) 絞りは開放から2段くらい絞って
絞りとシャッタースピードはフルオートでもオーロラは撮影できるが、やっぱりマニュアルで行うのが良いようだ。
レンズは絞った方がシャープな写真が撮れる。
しかし絞りすぎると暗くなってしまい長時間の露光が必要となる。
それでは動きのあるオーロラの撮影には不向きだ。
また一般的に絞り開放では収差があるので、そこから若干絞った方が綺麗な絵になるとのこと。
最もこれはレンズによって癖があるので、厳密にはそれぞれのレンズの性質を把握する必要があるのだという。
以上の2つのことを主に考えて、開放から2段くらい絞って撮影するのが良いようだ。
レンズの明るさはもちろん明るいほど有利になる。

4) ISO感度は高く
銀塩カメラでは一般にISO感度は上げるほど画像が荒くなってしまうので、なるべく低いISOで撮影するのが理想とされてきた。
ISO感度を上げるには感光する粒子を大きくする必要があったので、そうなると粗い画像ができてしまうのだ。
ところがデジタルカメラでISO感度を上げるということは、シグナルのゲインを上げることだ。
露出とシャッタースピードで決まる露出量が同じであれば、ISO感度を上げた場合、信号の大きさは増幅されるがS/N比は同じはずだ。
ところが十分な光量があるところでは、高感度撮影時には低感度撮影時より入ってくる露出量を減らす必要がある。
露出量の減少は画質低下に繋がる。
最近のデジカメでISO400くらいが適正と言われているのは、このあたりが境目になっているからなのだろう。
もっとも最近は手振れ対策でISO800が「使える」ようになりはじめているようだ。

ところが星空の撮影では如何せん光の量が絶対的に足りないので、CCDに入ってくる光の量を多くしたい。
そんな訳で高感度がお勧めということだ。
露出量は低感度時と同じでもゲインを上げてやることにより必要なシグナルを得るためだ。
S/N比は変わらないから画質には関係ない。
ところがISO感度を高くして実際に星空を撮影すると全体的に白くなってしまうのだ。

ノイズが多くなることが原因で「かぶり」という現象らしい。
これは画像ソフトでバックグラウンド値を補正するしかないようだ。

以上はCCDの性質から判断される撮影のポイントとのこと。
カメラやレンズの特性にもよるので、それぞれの性質を理解してベストな方法を見つけるのも一つの楽しみかもしれない。


-----本日の作業など-----
・論文
・磁北チェック
・CO2, CH4, CO, O3濃度分析システムチェック
・オーロラ撮影
・くるくるバー

<日の出日の入>
日の出  
日の入  
<気象情報5月18日>
平均気温-10.1℃
最高気温-7.8℃(1343) 最低気温-12.6℃(0006)
平均風速8.7m/s
最大平均風速20.4m/s風向ENE(0020) 最大瞬間風速26.5m/s風向E(0156)
日照時間 0.0時間

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ここ数年、デジタルカメラの普及はめざましいものがあります。
銀塩カメラしかなかったころは、休日ともなれば暗室で現像をしていたようですが、昭和基地の暗室はいまやもやし畑となり、隊員のほとんどがデジタルカメラを持参していると聞いています。
渡井さんも長年使っていたカメラではなく、デジタルカメラを購入し持って行きました。
今回の南極だよりを読んで、まず驚いたのはCCDが低温で威力を発揮するというところでした。
11月に45次に同行した武田カメラマンの話を聞いたとき、寒さ対策については話がありました。
でもそれは電池についてで、カメラは氷の上に置き去りでも全く問題がなかったというもの。
さすがにCCDの話までは出ませんでした。
どうしてCCDは低温で性能を引き出せるのでしょうね?
上の4つの項目の中で、ピントについてはデジタルカメラだからということではないのですよね?
私は15年ほど前からカメラを使っていますが、今まだ銀塩カメラが主でデジタルカメラはコンパクトなものが一つと携帯電話についているカメラがあるくらいです。
デジタル一眼の詳しいことは実はあまり知らないのと、自分のカメラでもそれほど厳密に考えたことがなかったのです。
そもそも、私の対象物が動き回るもの(動物と子ども)なので、条件を少しずつ変えて撮影してみるという方法をとったこともなく、無限遠にする機会もなく、夜の撮影もめったにないうえに、サイズを大きくしてみることがほとんどなかったので、大きくピントがずれていれば困るけれど、そもそもピントを合わせることそのものが難しい(たぶんアデリーが寄ってくるよりももっとすごいスピードで寄ってくるものたちなので)ので、厳密に気にしている場合ではなかったのだと思われます。
デジタルカメラ特有の撮影方法については、できれば自分で確かめてみたいものの、手元にないのでどうにもなりません。
でも、デジタルカメラで撮った写真はこの間何百枚と見てきました。
送られてくる渡井さんの写真(特に夜)は、いろいろ試しているなぁと思うものが多く、オーロラの写真もISO400~3200まであり、露出も変えてあります。
南極だよりを読むと、こだわっているところはいかにも渡井さんらしく、そういう視点であれこれ試してみていたのかと思います。

私が写真で重視したいものの一つに「見たまま」というのがあります。
実際にオーロラを見たことがないので、本当はどう見えるのか知りたいのです。
もちろん空いっぱいに広がった様子は、その場にいなければ分かりようもないのですが、色だけでもなるべく近いもので見てみたい。(ワガママです)
オーロラは送られてくる写真のように緑ではなく、もっと白っぽいのだというのですが、これはデジタルカメラだから緑なのか、写真で撮るとそうなるのか、よく分かりません。
CCDは赤外線感度が高いというのは経験的に知ったことですが、それを考えるともしかして見えない光や色を拾っているのではないかなぁ?と思うのですがどうなのでしょう?

それから銀塩派としては、動物や人間の肌の質感については銀塩のほうが勝っていると密かに思っているのですが、オーロラだとどうだろう?というのは興味があります。
デジタルカメラはノイズを減らすために、どうしても柔らかい質感が出ないかわりにツルツルやピカピカのものはめっぽうきれいだと思うのです。
だから、オーロラはどうかな?星空はどうなのかな?という興味があるのです。

それから、宙空部門ではCCDを使った光学観測も行われていると書いてありましたので、その話もまた聞かせてもらいたいなぁと思います。
かなり興味津々です。

<用語>
CCD:
Charge Coupled Deviceの略で映像から電気信号に変換する部分。簡単に言えばフイルムにあたるところ
S/N比:
映像信号のレベルとノイズのレベル比。単位はdBで数値が大きいほど高画質
ゲイン:
デジタルカメラのフィルム感度にあたり、映像信号を電気的に増幅するのに使われる

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3 コメント

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Unknown (み・くり)
2006-05-21 00:51:26
緑になるのはデジカメだからではないのですね。

カメラを持っているのに、とっても疎くてお恥ずかしいです。

「見たまま」は可視光のみの情報というのは、そうですよねぇ。

ということは、カメラは人間には見えないもっと豊かな光を放っている様子を見せてくれているということなのですね。

「見たまま」と「見たままでは得られない豊かな色」の両方に目を向けていきたいと思います。
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訂正です (ソ\リトン)
2006-05-21 00:22:16
夕焼けの例えは、不適当でした。

人間の目は、紫外線も赤外線もカットしてますので、「見たまま」というのは、可視光のみの情報ということも言えますね。
返信する
緑っぽくなるのは (ソ\リトン)
2006-05-20 23:47:46
フィルムも同じようです。露光時間が長くなるために、色も濃くなるみたいです。ちょうど、夕焼けをマイナス補正して撮影すると、オレンジ色が濃くなるのと同じじゃないでしょうか。

蓮の本をつくった方によると、フィルムカメラではネガ・ポジともに蓮の花の色が正確に再現できないそうです。一方、デジタルカメラはきちんと色が出るとのこと。デジタルカメラは、可視光以外の光線をあらかじめカットしてあるからだと、その方はおっしゃってました。

ですので、デジカメだからという訳ではなさそうですよ。
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