--Katabatic Wind-- ずっと南の、白い大地をわたる風

応援していた第47次南極地域観測隊は、すべての活動を終了しました。
本当にお疲れさまでした。

カイトプレーンの論文

2006-05-18 | 南極だより
昨年のウグイスが戻ってきました。
どうして分かるかというと、鳴き方が下手だからです。
どうやっても「ホーホケキョ」と鳴けず「ホーホキョ」となります。
でも昨年の初めは「ホーホョ」と自信なげに鳴いていたので、下手でも自信満々なのでいいかなぁと思います。
今日「昭和基地NOW!!」が更新されました。
「コンロ講習会」のことです。
渡井さんとはまた違う感じの記事になっています。
講習会の雰囲気が分かりますね!
それから昨日更新されたのは「イオノゾンデ」という題名だったそうです(ちゃんと修正されています)。
それでは渡井さんからの南極だよりです。
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2006年5月17日(水) 曇り カイトプレーンの論文

南極に来る前に投稿した論文が、アメリカ気象学会(American Meteorological Society)の雑誌Journal of Atmospheric and Oceanic Technologyに掲載された。

さてこの論文、日本を発つ前に1回目の書き直しを提出したのだが、その成否を待たずして日本を発つことになってしまったのだ。
生憎「しらせ」船上ではメール容量などの制約により登録したアドレス宛のemailを読むことができず、そわそわした日々を過ごしたのだが、昭和に着きwebメールが読めるようになると、2005年12月3日にはレフェリーからメールが既に届いていたことが判明した。
幸いにも若干の訂正をすれば受理してあげるよとの内容。
しかしながら書き直しの締め切りまでわずか数日。
夏作業の合間を縫ってテキストの訂正や図の書き直しを行い、FAX、email、FTPなどを使って何度かやりとりし、なんとか最終的な手続きまで行うことができた。
インテルサットがなければこんなことは不可能なわけでインテル様様である。

さて論文のタイトルは
A Lightweight Observation System for Atmospheric Carbon Dioxide
Concentration Using a Small Unmanned Aerial Vehicle.
という。
カイトプレーンという小型無人飛行機を使った二酸化炭素濃度観測の話だ。
現在僕が昭和でやっている仕事とは直接の関わりはないが、自前の有人飛行機のオペレーションがなくなってしまった昭和基地では、無人飛行機を使っての観測は、大気の分野に限らず有望なオペレーションだ。
実際、幾つかの計画も浮上しているようである。
なによりも昭和基地で仕上げ、昭和基地にいる間に掲載された論文。
南極観測に役立てば良いと思わずにはいられない。


-----本日の作業など-----
・二酸化炭素精製用大気採取
・温室効果気体濃度分析用大気採取
・二酸化炭素精製
・O2/N2分析用大気採取x2
・NOAA温室効果気体濃度分析用大気採取
・CO2, CH4, CO, O3濃度分析システムチェック
・論文

<日の出日の入>
日の出  10:18
日の入  14:17
<気象情報5月17日>
平均気温-13.6℃
最高気温-12.3℃(1654) 最低気温-15.3℃(0821)
平均風速9.6m/s
最大平均風速21.4/s風向ENE(2310) 最大瞬間風速27.5m/s風向E(2337)
日照時間 0.0時間

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日本を立つ前に、少し修正すれば論文を載せてくれるのだと聞いていました。
準備で忙しい時間を縫って、論文と高圧ガス試験の勉強もしていたなぁとずいぶん昔のことのように思い出しました。
その後のことは南極モードになってすっかり論文のことは忘れていたのですが、あの怒涛の夏作業中に論文も書き、南極だよりも送りつづけてくれていたと思うと、今さらながら毎日メールを送ってなんて無謀なことを頼んでしまったものだと反省しています。
睡眠時間が連日4時間ほどしか取れなかったのも頷けます。

論文のことですが、前文?はwebから読めますが、全文は登録が必要みたいですぐに読めそうになかったのと、読んでも理解ができなそうだったので(日本語なら難しくても読んでみようと思うけれど、英語だし・・)あきらめてしまいました。
それでも前文?は辞書をお供に、正確な理解かどうかはともかくも読んでみました。
思えば、今までどれだけ南極に行きたいかとか、どういう観測や研究をしているかについては聞いたことがありましたが、どういう論文を書いたかについては話題にしたことすらないような気がします。
今回、概要を読んで今までぼんやりと疑問に思っていたことが少し分かりかけてきました。
渡井さんの研究している大気中の二酸化炭素では、継続的に観測することで見えてきた気候変動のことが有名で、そのためにいろいろな観測をしていると思っていたのです。
ですから、でてきたデータを分析してその結果を論文にするとばかり思っていました。
今回の論文はそうではないですよね?
観測の手段そのものが論文のテーマになっているのです。
無人小型飛行機に軽量の観測装置を載せてどの高度を観測するかなど、その有効性について書かれているようでした。
こういうテーマの論文は専門家の間では一般的なのかもしれませんが、論文など特に読まない私にとっては目からうろこ。
でも、考えてみれば観測システムの開発というのは十分論文になりますよね!
どれだけ有用な観測システムを使うかで、研究結果は変わってきますものね。
今あるすべての観測装置は、誰かが考え出してきたものだということを考えると何ら不思議はないのだと思いました。

この観測は、もしかして・・?
苫小牧フラックスサイト上空域に係る集中観測の実施(2000.9.22付けの記事)でしょうか?
「航空機によるフラックスの広域観測」
「模型飛行機による二酸化炭素濃度の高度分布測定」(カイトプレーンを使った観測)
「係留気球(カイツーン)による二酸化炭素濃度の高度分布測定」
「観測塔などによるフラックス観測」
中身についてはよく分からないのですが、この4つを組み合わせて観測したことで有用性を検証したのでしょうか?
もう少し詳しく聞いてみたいものです。

日本の観測隊では真っ赤な機体のピラタス機を45次で持ち帰ってしまい、自前の観測機を持っていないのですよね。
47次と48次ではドイツと共同で航空機を使った観測をしていますが、無人の飛行機を使った観測は行われたことがあるのでしょうか?
渡井さんの文章からはなさそうですが。
昭和基地で無人飛行機を使った観測が行われるときに、渡井さんの論文が役に立つといいなぁと思います。

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