朝鮮新報2018.04.28電子版
北南首脳が板門店で示した希望と確信―平和そして統一へ、新たな歴史の始まり
境界線を越えて
全世界が見守る中、朝鮮半島分断の象徴であった板門店が、平和の象徴となった。金正恩委員長と文在寅大統領が北南を隔てる軍事境界線を越えて対面し、戦争なき時代の開幕を宣言した。
委員長と大統領の初対面は、破格な出来事の連続であった。両首脳は軍事境界線上で握手を交わし、委員長が境界線を越えて南の地を踏んだ。大統領が「私は、いつ頃越えられるだろうか」と問い、委員長は手を差し伸べ「それでは、いま越えますか」と応えた。北南首脳は手をつなぎ、境界線を越え、北と南を往来した。すべての民族が心を一つにして前進すれば、分断を克服し、統一を実現することができるという希望と確信を両首脳はたった十数秒間の場面で示して見せた。
首脳会談場となる板門店の南側地域「平和の家」の前では、委員長を歓迎する式典が行われた。式典終了後、事前発表のスケジュールにはなかった場面がまたしても繰り広げられた。委員長と大統領が北南の随行員たちと握手し、ときおり笑顔を見せながら会話を交わした。そして大統領の提案で両首脳と随行員たちがその場で記念写真を撮ることになった。一部のメンバーは旧知の仲ということもあり、和やかな雰囲気になった。委員長と大統領は2月と3月に自らの特使を派遣、両首脳の側近たちがソウル、平壌を訪れた。特使交換を通じてすでに間接対話を十分に行った両首脳のお互いに対する信頼感が記念写真の場面にも垣間見えた。
談話する金正恩委員長と文在寅大統領(朝鮮中央通信=朝鮮通信)
南は今回の首脳会談の標語を「平和、新たな出発」とした。首脳会談場に到着した委員長は、芳名録に「新しい歴史はこれから、平和の時代、歴史の出発点にて」と記した。板門店での首脳会談は、同じ目標を掲げた北と南の以心伝心を感じさせる場面で始まった。
守勢に立つ米国
首脳会談では、北南関係を改善し、朝鮮半島の平和と繁栄、統一を実現するために取り組むべき諸問題が議論された。首脳間で虚心坦懐で真摯かつ率直な話し合いが行われ、その結果が板門店宣言としてまとめられた。
今年1月1日に委員長の新年の辞が発表されてから約4カ月の間に北南関係はダイナミックに進展した。平昌オリンピックでの北南合同入場、北南単一チーム結成の興奮が、板門店における首脳会談と平和宣言発表の感動に繋がった。
「両首脳は、朝鮮半島ではもはや戦争は起きず、新しい平和の時代が到来したことを闡明した」
北南首脳が一日の会談で戦争と平和をテーマにした重大合意を導き出せた最大の要因は、朝米対決構図の劇的変化だ。昨年、朝鮮は国家核武力を完成させ、長年の交戦国である米国に対し、核戦争威嚇と朝鮮敵視政策の放棄を迫る地位を固めた。一方、守勢に立たされた米国のトランプ政権は、年始からの北南融和と対話の流れに沿って朝米首脳会談に臨む意向を明かした。そして、北南首脳会談の直前に開かれた朝鮮労働党中央委員会総会は 核実験と大陸間弾道ロケット試射の中止、核実験場の廃止を決定。力のレベルを目標に到達させ、国家と人民の安全を担保したことに基づき、核兵器なき世界の建設に積極的に貢献していく立場を表明することで「非核化」を主張する米国との対話を前に先手を打った。
米国は朝鮮に戦争を仕掛けることができなくなり、北南の軍事的対立を煽ることが、自国の国家安全保障を脅かす状況に置かれている。分断と戦争の元凶である米国が、北南首脳による平和宣言を受け入れ、歓迎する構図は、金正恩委員長が板門店を訪れる前につくられていた。
首脳会談の冒頭発言で、文在寅大統領が「今日のような状況をつくりだした金正恩委員長の勇断にいま一度、敬意を表したい」と述べたのも、単なる社交辞令ではなかったはずだ。
手と手を握り合い
板門店は65年前、停戦協定が締結された場所だ。戦争でも平和でもない状態が長く続いてきた。境界線を挟んで北南が軍事的に対峙する構図を維持するため米国はあらゆる手段を講じてきた。
しかし、金正恩委員長と文在寅大統領は板門店で対面し、分断の象徴とされた場所から戦争の影を消していった。首脳会談以外にも平和と繁栄を祈願する記念植樹を軍事境界線上で行い、周辺を共に散策し、なごやかに談笑した。それらの場面は、すべて生中継された。
板門店宣言発表後、「平和の家」の前では歓送行事が行われた。民族和合の雰囲気が最高潮に達する中、両首脳は手と手を固く握り合っていた。分断を強いられ、同族相残の戦争を経験した民族が自らの力で平和と統一を実現する。2018年4月27日、世界は新たな歴史のスタートを目撃した。
(金志永)