Club jannmu

future meet past 
I recommend that you read back

マイケル・ハドソン: 西側の支配から逃れるためのロードマップ

2022-10-13 13:30:49 | 翻訳記事 Translation

 

マイケル・ハドソン: 西側の支配から逃れるためのロードマップ

Michael Hudson: A roadmap to escape the west’s stranglehold

新自由主義的な秩序から脱却するための地政学的な道筋は危険を伴うが、代替システムの確立は緊急であり、恩恵が期待できる。

by Pepe Escobar

多極化する世界の「産みの苦しみ」に内在する地政学的な激動は、『文明の運命』(The Destiny of Civilization)(2022年)の著者であるミズーリ大学マイケル・ハドソン教授の洞察なしには追跡できない。

ハドソン教授は、最新の論文{2}の中で、ドイツの自殺的な経済・金融政策について深く掘り下げている。そして、ユーラシアと「グローバルサウス」全体を高速に統合し、覇権国の支配を打破するためのいくつかの可能性を示唆している。

ハドソンのこうした発言がきっかけで、特に人民元の将来的な役割について何度もメールのやりとりがあり、ハドソンはこう記した。

私が何年も話してきた中国人はドルが弱くなることは予想していなかった。彼らはドル高を泣いているわけではないが、(10月16日から始まる)党大会の後、上海の自由市場主義を唱える人々への弾圧があると思うので中国からの資本逃避を懸念している。来るべき変革への圧力が長い間蓄積されてきた。「自由市場」を抑制する改革の精神は10年以上前から学生の間に広がっており、彼らは党のハイアラーキーに上がってきている。

ロシアがエネルギー代金をルーブルで受け取るという重要な問題について、ハドソンはロシア国外ではほとんど分析されていない点に触れた。

    彼らは本当はルーブルだけで支払われることを望んでいない。まずロシアはルーブルを印刷すればよいのだからルーブルは必要ない。ルーブルが必要なのは、為替レートを安定させるための国際収支のバランスだけであり、為替レートを押し上げるためではない。

そこで人民元での決済を考えることになる。

    人民元で支払いを受けるということは、金(ゴールド)で支払いを受けるようなもので、売れば価値のある不換通貨として、どの国も欲しがる国際資産である(今のドルは単に没収されるか、最終的には放置されるかもしれない)。ロシアが本当に必要としているのはコンピュータチップのような重要な産業資材である。ロシアが提供する人民元でこれらを輸入するよう中国に求めることもできる。

ケインズが帰ってきた

メールのやりとりのあと、ハドソン教授が、ユーラシア大陸で起こっている極めて複雑な地政学的プロセスについて、いくつかの質問に丁寧に答えてくれることになった。さあ、始めよう。

The Cradle: BRICS(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ)は、BRICS全員と、さらに拡大したBRICS+を含む共通通貨の導入を検討している。それはどのように実現されるのだろうか?ブラジルの中央銀行がロシアや中国人民銀行と協調することは考えにくい。BRICSの開発銀行を通じた投資だけだろうか?商品+金をベースにするのだろうか? 人民元はどうなるのだろうか? BRICSのアプローチは、セルゲイ・グラジエフが主導する中国との現在のユーラシア経済連合(EAEU)の議論に基づいているのだろうか?{3} サマルカンド・サミットは、BRICSと上海協力機構(SCO)の相互接続を実質的に前進させたのだろうか?

ハドソン:共通通貨の構想は、既存の加盟国間の通貨スワップの取り決めから始めなければならない。ほとんどの貿易は自国通貨で行われるだろう。しかし、避けられない不均衡(国際収支の黒字と赤字)を解消するために、新しい中央銀行によって人工通貨が作られるだろう。

これは表面的には、国際通貨基金(IMF)が創設した特別引出権(SDR)のように見えるかもしれないが、それは主に米国の軍事収支の赤字と、グローバルサウスの債務者が米国の貸し手に対して負っている債務返済の増加に充てるためのものである。しかし、この取り決めは、1944年にジョン・メイナード・ケインズが提案した「バンコール」(ジョン・メイナード・ケインズとエルンスト・フリードリッヒ・シューマッハーが提案した超国家的な通貨。第二次世界大戦後に世界経済を安定させるため、英国がブレトン・ウッズ会議でバンコールの導入を公式提案したが、米国の合意をとりつけることができず、実現には至らなかった)にかなり近いものになるだろう。赤字国は、特定の割り当てられたバンコールを引き出すことができ、その評価は共通の価格と為替レートの選択によって設定される。バンコールは(そして自国の通貨は)黒字国への支払いに使われる。

しかしIMFのSDRシステムとは異なり、この新しい代替的な中央銀行の目的は、単に経済の二極化と債務を助成することではない。ケインズは、ある国(当時は米国を想定していた)が慢性的な黒字を抱えている場合、それはその国が保護主義か、あるいは相互に強い経済を支援することを拒否している証拠であり、その国の債権は、経済的に国際収支を均衡させ、通貨を支えることができない国のバンコール債務とともに消滅し始めるという原則を提唱した。

今日提案されている取り決めは、確かに加盟銀行間の融資を支援するものだが、その目的は資本逃避を支援するものではない(「左派」政権が選出される可能性が高い場合はそれがIMFの融資の主な用途である)。またIMFと世界銀行に代わる関連機関は、債務者に緊縮財政や反労働政策を押し付けることはないだろう。経済ドクトリンは、食料と基本的必需品の自給を促進し、金融化ではなく、実体農業と産業資本形成を促進するだろう。

また金もこれらの国々による国際通貨準備の一要素になるだろう。なぜなら金は数百年にわたる世界のコモディティで、許容可能で政治的に中立であるとみなされているからである。しかし金は決済手段であり、国内通貨を定義するものではない。この残高はもちろん、この銀行に加盟していない西側諸国との貿易や投資にも及ぶだろう。金はユーラシアを中心とした新しい銀行に対する西側諸国の債務残高を決済するための手段として受け入れられるだろう。1945年以来危険なやり方をしてきたニューヨークやロンドンではなく、新しい銀行のメンバーの手元に金を保管する限り西側諸国が簡単に否認できない支払いの手段となるのである。

このような銀行を設立するための会議で、中国は1944年のブレトン・ウッズで米国が享受したのと同様の支配的な立場に立つことになるだろう。しかしその運営理念は全く異なる。その目的は、IMFや世銀の政策の特徴であった依存関係や民営化買収を避けるために、銀行加盟国の経済にとって最も適切と思われる長期計画や貿易パターンを発展させることである。

これらの発展目標には、土地改革、産業および金融の再編、税制改革、国内の銀行および信用改革が含まれるだろう。SCO会議での議論は、この線に沿った改革を生み出すための一般的な利害の調和を確立するための基盤を整えたようである。

ユーラシアか、破綻か

The Credle: 中期的には、ドイツの実業家たちがドイツが荒廃し自分たちが滅亡することを考えて、ロシアへの貿易・金融制裁に対して一斉に反乱を起こし、ベルリンにノルド・ストリーム 2の開通を迫るということはありうるのだろうか?ガスプロム社はパイプラインの修復を保証している。そのためにSCOに参加する必要はない....

ハドソン:ユーロ圏の政治を米国とNATOが支配していること、過去75年間、米国の役人が政治に介入してきたことを考えると、ドイツの実業家たちが自国の産業空洞化を防ぐために行動することはまずないだろう。ドイツ企業のトップは、ドイツがバルト三国型の経済的残骸と化した後でも、自分と企業の富をできるだけ損なわずに生き残ろうとするだろう。

すでに生産と、さらには経営を米国に移す話も出ている。つまりドイツは米国の利益とその同盟国に支配されていないサプライヤーから、エネルギー、金属、その他の必須材料を手に入れることができなくなるだろう。

最大の疑問は ドイツ企業が、産業成長と繁栄が米国をはるかに凌ぐと思われるユーラシアの新経済圏に移転するかどうかである。

もちろん、ノルド・ストリーム・パイプラインは復旧可能である。だからこそブリンケン国務長官は、ドイツ、イタリアをはじめとする欧州諸国に対してロシア、イラン、中国など、米国が成長を阻害しようとしている国々との貿易や投資から自国経済を分離することを倍加させるよう執拗に政治的圧力をかけているのである。

「選択肢はない」からの脱出方法

The Credle:グローバルサウスの主要国(100カ国以上)がついに行動を起こし、米国が人工的な新自由主義世界経済を永久に昏睡状態に保つのを阻止することを決定する時点に到達したのだろうか?つまり、あなたが説明したように、唯一の可能な選択肢は、米ドルを迂回する並行世界通貨を設定することであり、一方で、いつもの容疑者たちはせいぜいブレトン・ウッズ3世という概念を持ち出している。FIRE(金融、保険、不動産)の金融カジノは、可能な限りの競争相手を粉砕するほど全能なのだろうか?BRICS、EAEU、SCOが議論しているものとは別に、何か現実的なメカニズムを想定しているのだろうか?

ハドソン: 1、2年前は、本格的な世界代替通貨、金融、信用、取引システムに本格的に代わるものを設計する作業は、非常に複雑で、詳細を考え抜くことは困難だと思われていた。しかし、米国の制裁が、そのような議論を現実的に急がせることを必要にする触媒となったのである。

ベネズエラが所有するロンドンの金準備と米国の投資が没収され、ロシアが米国と欧州に保有する外貨準備3000億ドルが没収され、さらに米国の外交政策に抵抗する中国や他の国に対しても同じことをすると脅されたことで脱ドル化が急務となっている。私は、バルダイ・クラブの論文(ラディカ・デサイとの共著)から、近著『文明の運命』、香港で準備した講義シリーズ、サステナビリティのためのグローバル大学など、多くの点でその論理を説明してきた。

ドル建ての証券を保有することはもちろん、金や欧米への投資も安全な選択肢ではなくなっている。世界は二つの全く異なるタイプの経済に分裂しつつあり、米国の外交官とその欧州の衛星国は、破壊的な危機を起こすことで世界の頂点に立つことを期待して、喜んで既存の経済秩序を引き裂こうとしているのは明らかである。

また、IMFとその緊縮財政計画に服従することは経済的自殺行為であり、世界銀行とその国際依存の新自由主義的教義に従うことは自滅的であることも明らかだ。その結果、米ドル建ての返済不能な債務が積み重なった。これらの負債は、IMFから信用を借り、米国の民営化業者や投機家に経済的に降伏する条件を受け入れなければ返済することはできない。

経済的緊縮を自らに課す唯一の選択肢は、米国が支持する「自由市場」経済(政府の保護から自由な市場、米国の石油会社や鉱山会社、それに関連する産業や食料依存による環境破壊を回復する政府の能力から自由な市場)のドルの罠と決別することである。

決別は難しく、米国外交はより強靭な経済秩序の構築を妨害するためにあらゆる手段を講じるだろう。しかし、米国の政策は文字通りそこから離脱する以外に選択肢のない世界的な依存状態を作り出している。

ドイツの離脱?

The Credle: ガスプロム社がノルド・ストリーム2のBラインがパイプライン・テロで破壊されていないことを確認したことについて、あなたはどのように分析しているのか?つまりノルド・ストリーム2は実質的に稼働可能な状態にあり、年間275億立方メートルのガスを送り出す能力があり、これは損傷を受けたノルド・ストリーム全体の能力の半分に当たる。つまり、ドイツは決して絶望的な状況にあるわけではない。解決策は、ドイツ政府の真剣な政治的決断にかかっているのである。

ハドソン:ここが肝心なところだ。ロシアはパイプラインを爆破され、再びコストを負担することはないだろう。ドイツ次第だろう。現政権は「ノー」と言うに違いない。そうなると面白いように代替政党が台頭してくるはずだ。

究極の問題は、ドイツがNATOの戦争における最大の犠牲者であることを自覚し、ロシアとの貿易を回復するにはNATOを脱退するしかないということだ。これは、イタリア、そしてギリシャ(キプロス以来、トルコから守らなかった)にも広がることでしか成功しないだろう。長い戦いになりそうだ。

おそらく特に化学のBASF、エンジニアリングのシーメンスなどドイツの産業界がロシアに移転して工業生産の近代化を図るほうが簡単なのかもしれない。もしドイツ企業がガスを得るために米国に移転すれば、米国によるドイツ産業の強奪だと気づくだろう。しかしこれも工業化後の米国の経済を考えれば成功しないだろう。

つまりドイツの産業が東進できるのは、ドイツが民族主義的な反NATO派として独自の政党をつくった時だけなのだ。連邦レベルではNATOの利益を優先させるEU憲法のためにドイツはEUからの脱退を求められる。次のシナリオは、ドイツのSCOへの加盟を議論することである。それがどれほどの時間を要するか、賭けてみよう。

 

https://kamogawakosuke.info/2022/10/13/no-1585-マイケル・ハドソン:-西側の支配から逃れるた/

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« The real root of the Ukrain... | トップ | A roadmap to escape the wes... »
最新の画像もっと見る

翻訳記事 Translation」カテゴリの最新記事