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「物語」をつくった共犯者

2024-06-02 12:30:00 | tweet

 

2 『女帝 小池百合子』は真の東京アラート…「マニキュア、塗り終わったから帰ってくれます?」                  文春オンライン / 2020年6月10日 6時0分

 脱力してしまう記事があった。

「東京アラート」を都が発動した日、お台場では夜になって前日より人が増えていた。その理由として、「赤いライトアップ見物か」(産経新聞6月4日)

 本末転倒ではないか。

 お台場と芝浦を結ぶレインボーブリッジが赤くライトアップされ「見物客の姿もあった」という。いかにも見栄えを重視する小池百合子都知事の「対策」っぽい。

本当の意味での東京アラート『女帝 小池百合子』

 しかし都民にとって本当の意味での東京アラートはこの本だ。

 石井妙子『 女帝 小池百合子 』(文藝春秋)である。帯は「救世主か? “怪物”か? 彼女の真の姿。」 

《小池氏には、1992年に日本新党から政界に打って出て以来、幾度となく疑惑の目を向けられる「学歴詐称」疑惑がある。これについて、ノンフィクション作家の石井妙子氏が、小池氏とカイロで共に暮らし、小池氏のカイロ大学生活を誰よりもよく知る元同居人女性の早川玲子さん(仮名)から詳細な証言と当時の手帳や写真などの資料提供を得て取材をし、「小池さんはカイロ大学を卒業していない」との詳細な証言を得た。》(「週刊文春」6月4日号「 『カイロ大学卒業は嘘』小池百合子東京都知事の学歴詐称疑惑 元同居人が詳細証言 」)

 読みすすめていくと、著者が一貫して使っている表現に気づく。それは「物語」だ。カギカッコ付きの。

 小池氏はこれまで私的な「物語」をマスコミを通じて売りにしてきた。その「物語」があればこそ現在の地位も築けたようにみえる。石井氏の入念な取材により学歴詐称疑惑はあくまで象徴の一つにすぎないことがわかる。

特異な環境で養われた「強さ」

《ウソにウソを重ねて物語を作っていると思いました。》

 石井氏は直近のインタビューでこう語っている(日刊ゲンダイ6月5日付)。

 本書によると、小池氏は小学5年生の時には校内の弁論大会で優勝、題は「ウソも方便」だったという。

 豊洲移転問題で知事は「盛土」について騒いでいたが、何のことはない、いちばん盛っていたのは小池百合子だったのである。

 なぜそうなってしまったのか。

《彼女は10代の頃まで非常に苦労が多かった。家が経済的に安定していないとか、親が多額の借金をつくって借金取りが取り立てにくるという状況で生きてきたわけです。生まれつき顔にアザがあったこともあり、物心ついた時から「普通の人生は送れない」と言われることもあった。幼い頃から気を張っていなければならない環境で生き、心が休まることもなかったのかもしれません。》(日刊ゲンダイ・同)

 だから上り詰めて自分を強く見せないといけなかった、と。

 しかしその特異な環境で養われた「強さ」は、ウソを平気でついたり、人として何かが欠落しているおぞましさがある。本書のあちこちで見かける。

「もうマニキュア、塗り終わったから帰ってくれます?」

 テレビカメラの前ではアスベスト(石綿)被害者に「崖から飛び降りますよ」と決意を口にし、笑みを浮かべて対応した小池環境相(当時)だったが、後日国会で「その言葉は使っておりません」と平気で言う。被害者は傍聴席から「嘘つき!」と叫んだ。

 地元・芦屋の女性たちが阪神淡路大震災の陳情に行くと小池氏は指にマニキュアを塗りながら一度も顔を上げずに応じ、

「もうマニキュア、塗り終わったから帰ってくれます? 私、選挙区変わったし」。

 築地中央卸売市場の豊洲移転に反対した、仲卸業の女性は小池氏の演説に感動し「ジャンヌ・ダルクになってくださいね」と訴えた。しかし小池氏はテレビカメラも報道陣もいない場所になると「ジャンヌ・ダルクはね、火あぶりになるからイヤ」と笑顔で言った。女性たちは何を言われたのかわからなかった。

 ちなみに「崖から飛び降りる」「ジャンヌ・ダルクになる」は小池氏の選挙演説でのお得意のフレーズである。

 上昇志向が強いのは別にいい。しかしそれが酷すぎて弱者に対して異常に冷たいことがよくわかる。

 政界入りして細川護熙、小沢一郎、小泉純一郎などその時々の権力者に巧みに近づき取り入ったことは「政界渡り鳥」という異名でよく知られていたが、本書では用済みと判断すればコロッと変節し、次のステップに進む過程も細かく書かれている。必読の部分だ。

「自己責任論」をいち早く言い出した政治家

 政界パートを読んで私はあらためて思い出したことがある。

 2年前、シリアで武装勢力に拘束されていたジャーナリストの安田純平さんが解放された際、またしても自己責任論が噴出した。

 そもそも「自己責任」という言葉が流行語大賞のトップテン入りしたのは2004年だった。イラクで拘束された日本人3人に対して投げかけられた。

  あのときは政治家も率先して「自己責任」を声高に問うていた。あそこから時代が変わったんじゃないか? と思った私は当時の新聞を調べたことがある。一体、政治家で誰が最初に「自己責任」という言葉を言い出したのか?

 すると、事件勃発を伝える2004年4月9日にさっそくある政治家のコメントが載っていた。

「危険地域、自己責任も 小池環境相」(読売新聞夕刊)

《小池環境相は「(三人は)無謀ではないか。一般的に危ないと言われている所にあえて行くのは自分自身の責任の部分が多い」と指摘した。》

 この11日後の4月20日に朝日新聞は「自己責任とは」という特集記事を書いているが、ここでも時系列の表で一番最初に載っているのが小池氏の発言だった。

 新聞で確認する限り、政治家として最初に被害者の「自己責任」に火をつけたのは小池氏だった可能性が高いのだ。

 そこであらためて考えた。今回『女帝 小池百合子』を読んで、もう一つ私が指摘しておきたいのはその巧妙な判断である。

「自己責任論」をいち早く言い出すことで、当時のトップである小泉首相も言いやすいようお膳立てをしたようにも見える。

 またしてもトップに寵愛されることをわかっていたはずだ。今から16年前の自己責任論読み比べでさえ小池氏の権力者への媚態がうかがいしれる。

 では、上ばかり気にしていた小池氏には「仲間」はいたのか。小池氏はよく「さらば、しがらみ政治」と言うが、あれだけ人を利用して裏切りを重ねればむしろ「しがらみ」をつくりたくても無理だろう。そういえば一瞬だが政権交代のムードすら漂った「希望の党」設立時でさえ側近は新人同様の若狭勝であり民進党を離党したばかりの細野豪志だった。しがらみがないのではなく仲間がいないのだ。そんな生き方をしてきたから。

「女性」には厳しい小池百合子

 本書を読むと、小池百合子はオヤジに可愛がられつつ、しかし「女性」には厳しい。

 のしあがってきた経緯もマスコミや記者のおじさんたちに可愛がられたからだ。彼らはノーチェックで小池氏の「物語」を流布してしまう。一緒になって「物語」をつくった共犯者でもある。だからこそ何度もささやかれた学歴詐称疑惑も踏み込まない。

 石井氏が2年前に「文藝春秋」で小池氏の記事(2018年7月号「小池百合子『虚飾の履歴書』」)を発表した際、二つに分かれた新聞記者の反応でより多かったのは「そんなことは自分たちも前から知っている」というものだった。

 これはかつて立花隆が田中角栄の金脈問題を文藝春秋で発表した際の記者の反応と同じではないか。そうして怪物を育てていたのだ。狭いムラ社会の弊害にも思える。

 もっと言えばオヤジ社会の罪が大きい。そして小池百合子もまたオヤジであった。

『女帝 小池百合子』は真の東京アラートである。都民に警戒を呼びかけるために発動された。

 何がゾッとするって、本書を閉じたあとにテレビをつけたら“怪物”が笑顔で喋っていたことだ。

◆ ◆ ◆

※追記

 昨夜になり「小池都知事は『1976年に卒業』 カイロ大学が声明」(ANN NEWS)と報じられた。この展開は『女帝 小池百合子』を読めばむしろ予想通りなのである……。

 

一度でもきちんと検証されたことがあっただろうか

 

【特集】「小池劇場」はいつまで続くのか!? マスコミを熱狂させる小池百合子都知事の素顔に迫る!

 

2020-06-29 20:19:41

 

 

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