さいえんす徒然草

つれづれなるまゝに、日ぐらしキーボードに向かひて

サッカー

2006-06-21 20:02:01 | その他
 FIFAワールドカップの予選リーグもいよいよ佳境といったところですが、先週の日曜日に行われた日本-クロアチア戦では初めてスポーツバーで観戦をしました。試合は残念ながら引き分けに終わりましたが、バーの中は大盛り上がりで非常に楽しかったです。臨場感溢れる大型ビジョンや地球の反対側で行われている試合の映像をリアルタイムに高品質で伝送する衛星中継など、最新の科学技術があってこそなのでしょう。

 W杯は世界最大のスポーツイベントであり、その視聴者数はオリンピックさえも凌ぎます。2002年の日韓大会では、なんと累計で288億の人類が観戦したと推定されています。今年は野球のW杯WBCもありましたが、やはりサッカーは最も多くの人々を熱狂させているスポーツなのでしょう。今回は news@nature で見つけたそんなサッカーにまつわるちょっとした小咄をご紹介したいと思います。

1.勝敗と株の関係
 Norwegian School of Management の Oyvind Norli らはサッカーの国際試合(勝ち抜き式)において、試合直後の敗戦国の株取引が著しく不調になる傾向があることを示しました。落ち込んだ投資家が取引をする意欲を無くしてしまうようです。ちなみに、勝った国の方には逆の傾向が見られる訳では無いようです。

2.怪我の理由
 サッカーの試合でゴールを決めると、選手にもよるでしょうが、比較的派手なパフォーマンスで喜びを表現します。昨夜はドイツのクローゼ選手が前方宙返りをしていました。
 日本が前回惜敗の涙を飲まされたトルコの整形外科医 Bülent Zeren と Haluk Öztekin によると2シーズンで診察した150名の負傷者のうち、9名がゴール後の“祝福”が原因と推察されたようです。見られる症状としてはくるぶしやあばらの骨折、筋肉や靭帯の捻挫、脊髄挫傷ということです。

3.ドイツWの行方
 ノルウェーの Norwegian Computing Center のウェブサイトではコンピュータが各参加国の優勝確立をリアルタイムで計算しています。各試合の内容を専門家が評価して、コンピュータ上でシュミレーションしているようです。優勝国の本命は今現在アルゼンチンとなっています。ちなみに日本が今回決勝トーナメントに進出できる確立は0.2%。500回に一回ってことか・・・

参考:
Science in thrall to football(News@Nature)
FIFA World Cup (Wikipedia)

クジラ会議

2006-06-19 21:23:41 | 生態学・環境
 国際捕鯨委員会(IWC)の総会において商業捕鯨の再開を支持する宣言の採択に関して、賛成派(34票)が1982年の捕獲一時禁止(モラトリアム)以来初めて反対派(33票)を上回りました。この採択自体にはなんら拘束力は無く一時禁止撤回には4分の3以上の賛成が必要ですが、捕鯨擁護国からは今回の採択を「画期的」と捕らえる見方が広まっているようです。

 賛成国は主として日本、ノルウェイ、アイスランド、反対国としてはイギリス、アメリカ、ブラジルなどです。ブラジルが捕鯨よりも観光資源としてのホエールウォッチングを重要視してるという話は少し新鮮でした。

 IWCのモラトリアム自体はそもそも”資源としてのクジラ”を枯渇から保護するという目的だったようですが、商業捕鯨をめぐる対立の背景にあるのは文化や思想など様々な要素が複雑に絡み合っているようです。特に欧米系のメディアを覗いてみると、今回の採択に関して単に一賛成国に過ぎない筈の日本の「勝利」とする論調が目立つあたり、捕鯨問題をめぐる論争が国家間の政治的な駆け引きを象徴している印象が拭えません。はたまた日本がその様に海外の目に写っているということでしょうか(そもそもなぜ今日決してポピュラーとはいえない鯨肉に関して日本がここまでこだわるのか、日本人の私にも分かり難い部分があります)。

 そうした問題は、商業捕鯨が果たして自然環境保護や経済発展という観点から害なのかそうではないのかという客観的な議論を見えにくくしているように感じます。最終的にこの議論に決着を付けるのは政治でも文化でも感情でも宗教でもなく、科学でなくてはならない筈なのですが。

参考:
 Japan gains key whaling victory(BBC)
捕鯨問題(Wikipedia)

 

市場で売られていた新種のげっ歯類

2006-06-15 20:51:57 | 生態学・環境
 ラオスイワネズミ(Laonastes aenigmamus)は今から十年前にラオスの食料品の市場で発見されました。この動物は現地では "Kha-Nyou" という名前で知られていたようですが、その後学際的に新種であることが分かり2005年に記載されました。
 このラオスイワネズミは発見当初、既存のげっ歯類のグループと比較してアジアに見られるものよりもアフリカや南米のものに近いとされましたが、カーネギー自然史博物館の Mary R. Dawson らによってそれまで化石としてしか見つかっていなかった亜科 Diatomyidae の生き残りという説が提唱されました。余談ですが、こうした一度絶滅したとされていたとされていて、その後生きて発見された生物を 新約聖書のエピソードに引っ掛けて Lazarus taxon というらしいです。

 ラオスイワネズミの標本は今まで、市場で売られている死体やフクロウのペレット(彼らは食物の消化できない部分をペレットとして吐き出すらしいです)に含まれている骨などで、生きている姿が科学者によって目撃されることはなかったようです。
 元フロリダ州立大学職員の David Redfield 率いる調査チームは先月、ついにこのラオスイワネズミの生きた標本を捕らえることに成功しました。
 リンク先の写真と映像を見てもらうと分かりますが非常に愛くるしい動物です。彼らは木に上るように適応してはおらず、後ろ足をガニ股に広げながらアヒルのような歩き方をしますが、これは岩を登るときに足場を探しながら動くように適応しているのではないかということです。

参考:
'Fossil' rock rat pictured alive(BBC
New pictures of 'living fossil' (BBC)
Market fare is major rodent find (BBC)
Laotian rock rat (Wikipedia)
"Living Fossil" captured live on video (Florida State University)
 

共食いを始めたシロクマたち

2006-06-14 20:21:58 | 地球温暖化・エネルギー
 先日シロクマがIUCNのレッドリストに新たに記載されることになりましたが、現時点で地球温暖化の影響を最も直接被っているのはこうした極圏に住む動物たちなのかもしれません。

 U.S. Geological Survey Alaska Science CenterのSteven Amstrup らによると、近年アラスカでシロクマの共食が多く報告される傾向にあるようです。彼らはメスや資源をめぐる闘争などでお互いに殺しあうことはあるそうですが、お互いを食物にし合うということは今までほとんどありえ無かったそうです。浮氷の減少による餌の不足が原因ではないかということですが、地球温暖化が及ぼす動物への影響の事例としては(もちろんそう断言するにはまだ早計ではあるのでしょうが)、非常におどろおどろしいものでは無いでしょうか。

参考:
 Warming turns bears into cannibals (CNN)

盲牌ロボットも夢じゃない?

2006-06-10 19:03:26 | 材料・技術
 麻雀も達人の域に達すると”盲牌”といって指先だけで何の牌だかわかるようになるらしいですが、人間の指先の感覚というものは非常に感度のいいセンサーだといえます。このような人間の指先に匹敵するような触感センサーを開発できれば、非常にデリケートな作業をロボットなどに担わせることができます。

 ネブラスカリンカーン大学のVivek Maheshwariらは従来のものよりも50倍も高感度な新しい触感センサーの開発に成功しました。エレクトロルミネッセンス薄膜と呼ばれるこの装置は、圧力が加わると発光する仕組みになっていて、その発光パターンを画像データとして感知するようです。実験では1ペニー硬貨のリンカーン像もはっきりと認識できました。この仕組みならば複雑な形にも加工することが出来、なとえば手術用の内視鏡などに搭載することが期待されるようです。

参考:
New Sensor Feels Fine(ScienceNOW)
Robotics Sensor Images the Sense of Touch (Scientific American)

馬陸

2006-06-08 19:44:01 | 生態学・環境
 ヤスデを意味する英語は、千という意味のmilliと脚を表すpedeを繋げてmillipedeといいます。ちなみにムカデは百本の脚という意味でcentipede。実際、脚が千本もあるようなものは見つかっていませんが最もそれに近いとされているのがカリフォルニアで発見された Illacme plenipes という種で、1926年に記載されました。当時の記録によると脚の数はなんと750本。  ところがそれ以降の80年間、研究者がこのI. plenipes の再捕獲に成功することはありませんでした。

  東カルフォルニア大学の Paul Marek と彼の兄弟は今回80年振りにこの種の再捕獲に成功しました。場所の詳細は当地の生態系保護の観点から明かされていないようですが、カリフォルニア州San Benito の生物多様性のホットスポットととして知られていたオーク林のようです。

  今回捕獲されたのは4匹のオスと3匹のメス、それと5匹の未成熟個体です。メスの個体の方がオスよりも大きく約33mmの体長に170-171個の体節が存在していました。Marek らが苦心の末に脚の数を数え上げたところ、662から666本と記録されていた750本には届かなかったようです(倍脚類であるヤスデは一節に脚が2対4本)。しかしながら、この I. plenipes が属している siphonorhinid という仲間は性成熟後も脱皮を繰り返す事が知られており、まだ体節の数が増える可能性はあるということです。

 参考:
Leggy creepy crawlies resurface in California (CNN)
Biodiversity hotspots: Rediscovery of the world's leggiest animal (Nature)

ダウン症の原因遺伝子?

2006-06-05 21:31:51 | 医療・衛生
 ダウン症の原因遺伝子と思われる二つに遺伝子が同定されました。

 ダウン症は、主にヒト21番染色体のトリソミー化(通常は二本のはずが三本と一本多い状態)が原因で生じますが、いったい21番染色体中のどの遺伝子のコピー数の異常増幅(1.5倍)がそのような症状を引き起こすのかに関しては不明でした。今回同定されたDRYK1ADSCR1 という遺伝子は協力的にNFATc (nuclear factor of activated T cells) と呼ばれる調節因子の働きを阻害し、ともにヒト21番染色体のDown's Syndrome Critical Reagion (DSCR) と呼ばれる領域に存在しています。マウスにおいてこれらの遺伝子の過剰発現やNFATcの機能損失は、ダウン症を思わせる頭蓋骨の形体異常や行動を示しているそうです。

 参考: Down's syndrome: Critical genes in a critical region (Nature)