さいえんす徒然草

つれづれなるまゝに、日ぐらしキーボードに向かひて

DNA折り紙を利用した新しいRNAハイブリダイゼーションアッセイ

2008-01-12 22:11:04 | 材料・技術
 相補的な一本鎖DNA(ssDNA)同士は溶液中で自然会合する性質がありますが、その性質を利用して長いssDNAと多数の短いssDNAを混ぜることでワンステップで複雑な形状の複合体を自己組織化させることができるようです。この技術はDNA折り紙(DNA-origami)と呼ばれているようですが、実際は折り紙よりもむしろ編み物の方に近そうです。カルフォルニア工科大学のRothemundはこのDNA折り紙を駆使して、星や円といった図形に編み込んだり、編みこまれたDNA平面の上に文字や絵を描くことに成功しています(1)。

 アリゾナ州立大学のHao YanらのグループはこのDNA折り紙を利用した標識化のいらないRNA検出技術を開発しました(2)。この方法では、足場(Scaffold)となるM13ウィルス由来の長いssDNAと、留め金(Helper)となる人工的に合成した200種類以上のオリゴヌクレオチドを混ぜ合わせて2次元の長方形(Tile)にDNAを編みこんだものを作っていますが、留め金DNAの内に部分的に足場と相補的ではない配列を含んだものが混ざっていて、自己組織化した後でその部分がタイルの外側に出るようになっています。この外側に突き出る配列は検出するためのRNA(Target)と相補的な配列、つまりプローブの役割を持っていて、ターゲットと会合した場合DNA-RNA2本鎖を形成します。分子間力顕微鏡(AFM)により“タイルの外に突き出た2本鎖”がいくつ形成されいているかを観察することにより、ターゲットを検出・定量することができるようです。各DNAタイルにはRothemund(1)がDNA折り紙上に絵を描いた用いた手法と同じ原理で、どの配列のプローブが付いているタイルであるかを示す目印(Index)もつけることができるため、一度に複数のターゲットを調べることも可能です。
 この方法では既存の技術と違い、標識化などといった手間を必要としません。また1分子レベルで検出しているため、原理的には非常に大幅なスケールダウンができると著者らは主張しています。

 網羅的解析という意味では今のところ既存のマイクロアレイ法に太刀打ちできるものではなさそうですが、いろいろと応用が期待できそうな気がしました。

参考:
1. Rothemund, P. W. K. , 2005, Folding DNA to create nanoscale shapes and patterns, Nature 440, 297-302
2.Ke,Y. et al., 2007, Self-Assembled Water-Soluble Nucleic Acid Probe Tiles for Label-Free RNA Hybridization Assays, Science 319, 180 - 183