炭疽症は皮膚、消化器系、肺などから感染する致死性の感染症で、細菌学の父ロベルト・コッホによってグラム陰性棍菌の炭疽菌(Bacillus anthracis)によって引き起こされることが証明されました。この B. anthracis は生物兵器として研究されてきた歴史があり、国際法上生物兵器の使用が禁止された現在でもテロに使用される懸念があります。2001年のアメリカ同時多発テロの直後に何者かによってこの細菌の粉末(芽胞)が郵便で多数の人間に送付され、5人の死者を出した事件は記憶に新しいところです。
現在有効な治療法は抗生物質によるものですが、この方法では細菌が何らかの方法で抵抗性を獲得したり、また“悪意ある者”が遺伝子組み換え技術により人為的に抵抗性を付与するような可能性が考えられます。また吸入による感染では抗生物質による治療・予防だけでは依然75%の致死率があるそうです。
アメリカのRensselaer Polytechnic InstituteのRavi Kaneらは細菌自体やその毒素を攻撃する代わりに、炭疽菌毒素の標的となる部位(ANTXR1,2)に結合する阻害剤となるペプチドをスクリーニングしました。得られた阻害剤を抗生物質に加えてマウスに与えたところ、与えた動物全てで B. anthracis の感染が防がれました。
この毒素の標的部位に結合するタイプの治療薬は細菌側が抵抗性を獲得する可能性が低く(細菌が抵抗性を獲得するためにはターゲットそのものを変えなければならないため)、同じアプローチによってSARSやインフルエンザ、AIDSなどの感染症に対する有効な治療薬が見つかるのではないと期待されます。
参考:
Scientists find 'anthrax blocker'(BBC)
現在有効な治療法は抗生物質によるものですが、この方法では細菌が何らかの方法で抵抗性を獲得したり、また“悪意ある者”が遺伝子組み換え技術により人為的に抵抗性を付与するような可能性が考えられます。また吸入による感染では抗生物質による治療・予防だけでは依然75%の致死率があるそうです。
アメリカのRensselaer Polytechnic InstituteのRavi Kaneらは細菌自体やその毒素を攻撃する代わりに、炭疽菌毒素の標的となる部位(ANTXR1,2)に結合する阻害剤となるペプチドをスクリーニングしました。得られた阻害剤を抗生物質に加えてマウスに与えたところ、与えた動物全てで B. anthracis の感染が防がれました。
この毒素の標的部位に結合するタイプの治療薬は細菌側が抵抗性を獲得する可能性が低く(細菌が抵抗性を獲得するためにはターゲットそのものを変えなければならないため)、同じアプローチによってSARSやインフルエンザ、AIDSなどの感染症に対する有効な治療薬が見つかるのではないと期待されます。
参考:
Scientists find 'anthrax blocker'(BBC)