今月発売の日経サイエンス12月号では「エネルギーの未来」と題した特集が組まれています。これからの人類のエネルギー利用の問題と解決策を技術、経済など多面的な視点で考察されていて非常に興味深い内容です。
元世界銀行チーフエコノミストのニコラス・スターン卿という世界的に影響力のある経済学者が、今後温暖化に対する策を何も講じなかった場合、自然災害や海岸地帯における居住地の消失などで世界経済は最大で西暦2100年までに20%縮小するだろうという試算を発表するそうです。また「策を講じる」という選択をした場合にかかるコストはGDPを1%犠牲にするだけでよいということです。
環境学者や技術者からでなく、影響力のある経済学者がこのような見解を発表することは非常に意義深いことのようです。何故ならば地球温暖化に対して策を講じるということ、つまり温室効果ガスの排出を規制することで産業界に一定のコストを課すということは、長期的な経済発展にとって実は“合理的”であるということが示されるからです。彼の試算が正しければ、今だ根強く残っている「経済発展を犠牲にしてまで…」という議論が無意味であることを意味します。
Michael Meacherという元英環境相の「京都議定書に参加しない米政府の論拠をノックアウトできるだろう」という談話が引用されていましたが、短期的な利潤が政策決定に影響力を持っている以上はそう簡単にはいかないだろうなという印象を持ちました。有権者がこの試算の意味を十分に理解し、長期的な観点から票を投じることができればというと理想論になってしまうかもしれませんが。いずれにしても、科学者が温暖化した地球の絶望郷的イメージを示して市民の情緒に訴えるよりも、経済学者が合理性という観点から温暖化対策を促す方がよほど効果があるような気はする、とおそらく科学者側にいる自分としては新しい実感でした。
<参考>
Global warming 'threat to growth'(BBC)
Spend, spend, spend plan to tackle warming(Guardian)
元世界銀行チーフエコノミストのニコラス・スターン卿という世界的に影響力のある経済学者が、今後温暖化に対する策を何も講じなかった場合、自然災害や海岸地帯における居住地の消失などで世界経済は最大で西暦2100年までに20%縮小するだろうという試算を発表するそうです。また「策を講じる」という選択をした場合にかかるコストはGDPを1%犠牲にするだけでよいということです。
環境学者や技術者からでなく、影響力のある経済学者がこのような見解を発表することは非常に意義深いことのようです。何故ならば地球温暖化に対して策を講じるということ、つまり温室効果ガスの排出を規制することで産業界に一定のコストを課すということは、長期的な経済発展にとって実は“合理的”であるということが示されるからです。彼の試算が正しければ、今だ根強く残っている「経済発展を犠牲にしてまで…」という議論が無意味であることを意味します。
Michael Meacherという元英環境相の「京都議定書に参加しない米政府の論拠をノックアウトできるだろう」という談話が引用されていましたが、短期的な利潤が政策決定に影響力を持っている以上はそう簡単にはいかないだろうなという印象を持ちました。有権者がこの試算の意味を十分に理解し、長期的な観点から票を投じることができればというと理想論になってしまうかもしれませんが。いずれにしても、科学者が温暖化した地球の絶望郷的イメージを示して市民の情緒に訴えるよりも、経済学者が合理性という観点から温暖化対策を促す方がよほど効果があるような気はする、とおそらく科学者側にいる自分としては新しい実感でした。
<参考>
Global warming 'threat to growth'(BBC)
Spend, spend, spend plan to tackle warming(Guardian)