※※『ガラスの仮面』文庫版読み返してます。あらすじと感想まとめてます。※※
※※内容ネタバレ、感想主観です。※※
仮面年表は こちら
紫のバラ心情移り変わりは こちら
49巻以降の話、想像してみた(FICTION)*INDEX*はこちら
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『ガラスの仮面』文庫版第21巻 ※第12章(途中から)(途中まで)
第12章 紅天女
「火」のエチュード
亜弓は燃え盛る炎を両手に持った細長い布のリボンで巧みに表現した。
高い身体能力をいかんなく生かした、燃え盛る炎。
音楽に合わせて、時に激しく、時にメラメラとした亜弓の火の演技は
見る物を飽きさせない美しさと華やかさがあった。
表現力の高い亜弓の演技は、風になろうとしたマヤと比較しても、
舞台性の高い演技として評価される。
一方マヤ、打掛をざっくりと羽織り、うつろな目をしながら
火の見やぐらを昇るパントマイム、そして
「火付けは死罪・・・・もし見つかれば殺される・・・」
マヤが始めた「八百屋お七」の演技に、千草は驚愕する。
これはかつて、同じエチュードを一蓮の前で行った時、千草が火の演目でやったものだ。
何故マヤがこれを・・・。
「熱いよ吉さん、燃える・・・なにもかも燃えていくよ・・・・」
全身を炎に巻かれ燃やし尽くされるようなマヤの演技は切なくなるほど苦しく、
まさに心の火を表現していた。
「本物の恋をしなさい、マヤ。その後またあなたの演技が見たいわ」
千草はマヤの目にはまだ、本当の恋の狂気がないことを指摘し、そう感想を述べた。
次は「水」のエチュード・・・
亜弓を追って梅の里にまでやってきたカメラマン、ピーター・ハミルは
この風火水土のエチュードを行う意味を千草に尋ねた。
千草は、このエチュードは過程にこそ意味があると語った。
何を演じたか、どう演じたかではなく、何を演じるか、どう演じるかを悩み、導き出す
この過程を通して、二人は紅天女をつかむことができるのだと。
亜弓は水の中でしか生きられない存在に着目した。
水、生命をつなぐもの
水がなければ人も植物も動物も虫も生きられない。
そしてその中で生きるもの・・・。
水から決して離れて生きていけないもの・・・。
マヤも自分の中の水の演技をどういう風にすればいいか悩みながら
さまよっていた。
雨、そののちの虹、そうだ、これもすべて水のもう一つの姿。
あの雲も、霧も、変化した水・・・。
ダムを訪ねたマヤは、水力発電で水の流れおちる力で電気を起こしていることを聞く。
雲となり、雨となり、時には虹を見せ、時には落下する力で電気をも起こす
水の力・・・。
マヤが千草の前で八百屋お七を演じたことを
部下から聞いた速水英介は、してやったりと大笑いをした。
千草はさぞかし驚いたことだろう。
そして、滞在していた湯治場からいよいよ梅の里に向かう事を決める。
しかしその途中が崖崩れで行き止まりになった山道で立ち往生、
運転手が助けを呼ぶため一人取り残された英介の車は、
雨でスリップしそのまま崖下に転落し、英介は行方不明となった。
東京でその一報を受けた真澄は、急ぎ救助隊を派遣するよう指示を出し、
自らも紅天女の故郷に向かう。
崖下からは、ぐちゃぐちゃになった車が発見されたが、車内に英介の姿はない。
周辺を捜索するが、英介の物すら見つからない。
こんな形で、英介と決着が着くのはいやだ。何としても探し出す。
捜索は夜にまで及んだが、英介を見つけ出す事は出来なかった。
やるせなさを抱えながら宿に戻る真澄、その途中ふと星空に気付き
途中下車した真澄は、
そこに寝転がるマヤの存在に気付いた。
マヤは水のエチュードに悩みながら、一人草地に寝ころび星空を眺めていた。
あの日、プラネタリウムで見た時以上の満天の星空。
真澄にも見せてあげたいな・・・などと思っている時、流れ星がきらめいた。
願い事すればよかった・・・・と独り言を言っていると、
「何を願うつもりだったんだ?」
という声、
振り返るとそこに、真澄が立っていた。
まさかこんなところで会うとは思ってもいなかったマヤは、言葉がつながらない。
マヤの隣に腰かけた真澄は、今義父が行方不明になっている事、
その捜索でここまで来た事を淡々と語った。
いずれ君の耳にも入るだろうから言ったまでだ、心配してもらわなくて結構。
そう語る真澄の顔はどこまでも冷静で、感情が読み取れない。
二人で寝ころび空を見上げる。
いつか、紅天女の故郷で、一緒に星が見てみたいと話した。
まさかこんな形で実現することになるとは。
お互いに告げられない思いを抱えながら、夜空をずっと眺めていた。
「わたし、もし紅天女を演れるようになったら、紫のバラの人にまっさきに観ていただきたい・・」
いつか、私の前に現れて名乗り上げてくださるのを待っている・・・
切実な気持ちを真澄に告げるが、真澄は
「幸せなファンだね、そのひとも」
としか言ってはくれなかった。
その時、一筋の流れ星がきらめいた。
また願い事ができなかったと言うマヤ。真澄にあなたはできたかと聞くと
「おれの願い事は、きっと一生かなわない・・・」
とつぶやくように答えた。
夜も更けてそれぞれの地に戻る為、その場を後にした二人。
真澄の差し出した手を静かに握り歩く二人。
この星空が、どこまでもつづけばいいのに・・・。
真澄の手のぬくもりを感じながら、マヤはそう思うのだった。
マヤは、村人から龍神伝説を聞く。
龍神さんは水の神
川も池も滝もみんな龍神さんが治めている
変化する水、それを司るもの・・・
亜弓は、水の中でしか生きられないもののように、
人間にとってそれがなければ生きられないものはなんなのかを考えていた。
水も確かに必要だが、人は水の中では生きられない。
空気?いやそれよりも・・・・
赤ん坊は母親の愛がなければ生きていけない、男も女も愛がなければ・・・・
愛がなければ・・・
愛もまた水・・・・!
**
山寺に居る千草の元を尋ねた真澄は、英介の行方を知らないか尋ねた。
千草からも有力な情報が得られなかった真澄は、一旦自分は東京に戻ることを告げ、
山寺を後にした。
義父の姿を見つけるまで僕はあきらめないつもりです、と語る真澄に千草は尋ねた。
「あなた、お義父さまを愛しているの?」
千草の問いに、まっすぐな目線で答えた真澄。
「いいえ!」
山寺を訪ねた際、源造からマヤが梅の谷へ入っていくところを見たと聞いていた真澄。
いつの間にか降り出した雨はどんどんと激しさを増していく。
まさか・・・・マヤ・・・・。
何となく胸騒ぎがした真澄は、梅の谷へと続く吊り橋を渡っていく。
その先で真澄が見たものは・・・・
全面が紅色に染まった梅の群生。これが、紅天女の故郷・・・。
雨までもが紅く染まる。
初めて見る景色に圧倒される真澄だったが、その梅の木の中に、
マヤを見つける。
マヤは梅の木に腰掛け、雨に打たれている事に気づいているのかどうかも
分からないような表情で、宙を見ていた。
「マヤ・・・!」
真澄の呼び声に我を取り戻したマヤは、思わず木から落ちそうになる。
マヤを受け止める真澄。
「このバカ娘!」
全身ずぶ濡れ、キンキンに冷えきったマヤの手を抱きしめると、
自らのコートをかぶせ、雨をしのぐため近くにあった神社の軒先に腰掛けた。
随分と長いこと雨に打たれていたであろうマヤの体は冷え切っていて、
真澄は少しでも熱を伝えようとしっかりとマヤを包み込んでいた。
マヤは真澄の胸に抱かれながら、いつもこうして優しく自分を守ってくれていた
真澄の本当の優しさに気付く。
しばらく経っても雨はやみそうもない。
真澄は神社のそばの社務所を見つけ、そこに二人で入った。
社務所の中には一応薪ストーブもあり、真澄は湿気た木材に何とか火をつけ、
暖を取る。
濡れていた衣服を脱いで、直に真澄のコートを身にまとったマヤ。
こんな雨の中、自分が濡れる事も厭わずマヤのためにここまでしてくれる真澄。
今頃になってマヤは、真澄の仮面の奥の優しさを感じ、
どうして今まで気づかなかったのだろうと悔やんだ。
自分に投げかけられた言葉も振る舞いも、みんな自分のためのものだったのに。
みんな、真澄の優しさだったことに。
そしてマヤはようやく気付いた。
“あなたが好きです。速水さん・・・”
気を紛らわせるように、マヤを挑発するような言葉をかける真澄。
しかしマヤにはもう分かっていた。そうして真澄は自分の本心を隠してきたのだと。
そして、そうさせてきたのは他ならぬマヤ自身なのだと。
二人は社務所の中で、神社の由緒を見つける。
谷の奥に咲く紅梅は大地から発する神の“気”が“樹”となったとされ、
長い間神木とされてきた
不思議なことに季節を過ぎてもまだ花をつける紅梅はこの谷から持ち出すと
神の霊気を受けられなくなり枯れるという
南北朝のころ、世の乱れを鎮めるため一人の仏師が谷の神木を切り、
天女像を彫ってこの地に祀り平和を祈願したのが神社のはじまりとされる
尾崎一蓮はこの話をもとに『紅天女』を書いたに違いない。
「きみの紅天女を見たいものだな」
真澄の言葉にマヤは
「あたし、速水さんに喜んでもらえるような紅天女を演じたい」
と答え、真澄は動揺する。
「おれを憎んでいたのではないのか?」
「わたし、ずっとあなたに嫌われていると思っていました、だから・・・」
マヤが自分の事を憎くは思っていないということを知った真澄は優しく、
「君のことを嫌いだと思ったことは、一度もない」
と言った。
「舞台の上のきみを観るのは好きだ」
そう語ると真澄は、『若草物語』のベスから、『忘れられた荒野』の狼少女ジェーンまで、
マヤの演じてきた様々な舞台について感想を述べた。
それはまさに、紫のバラの人と同じ目線で。
「君の紅天女を見られれば、どんなに・・・・」
二人の距離が急速に近づく。
しかし落雷の音が真澄に現実を知らしめる。
そして真澄の口から「紫織」という名が出た時、
マヤは自分と真澄間の越えられない壁を感じた。
真澄が好きなのは、舞台の上の自分、女優としての自分・・・・
チビでなんの取柄もない私を、本気で相手にするはずなどない・・。
置いてあった薪も底をつき、ストーブが消えかかる。
ストーブの燃料を調達するためと外に出ようとする真澄。
しかし未だ雨降りしきる中、真澄の体を案じたマヤは、大丈夫だからと引き留める。
自分が金の卵だからと大事にしてくれるというのなら、私を一人にしないで。
速水さんが外に出るなら、私も行く!
燃料も尽き、ストーブの火が消えると、社務所の中に一気に冷気が漂う。
かじかむ手に息を吹きかけても、熱はすぐに消えてしまう。
そんなマヤに真澄は、二人で寄り添うだけでも少しは暖かくなるぞと、マヤに声をかけた。
もちろんイヤというにきまっている。しかしマヤは、
「温めて下さい、速水さん。手も足も冷えて、背中がゾクゾクします。だから」
私を温めて、雨の中のときのように・・・
その言葉に真澄は戸惑いながらもしっかりとマヤを抱きしめた。
「俺も男だからな。責任がもてなくなるかもしれんぞ」
真澄の胸に抱かれるマヤ。
朝になれば、覚める夢、それならこのひと時を私に下さい。
朝まで私に夢を見させてください。たとえ商品と思われていようとも・・・。
元より最愛の少女マヤを胸に抱き、理性を保っていることが精いっぱいの真澄は、
抑えきれない想いを必死に押さえつけると、
おれの気が変にならないうちに眠れとマヤに告げ、長く辛い夜に思いをはせた。
夜明け。
真澄の胸の中で安心したように無防備に眠るマヤ。
そのマヤの寝顔を見ながら、改めて自分のマヤへの愛情と、いつか大きく広い世界に飛び立っていく
マヤの未来を思い、真澄は静かにその唇にキスをした。
“夢はもう終わりだ・・・”
昨夜とはうって変わったように日差しが降り注ぐさわやかな朝。
二人で梅の谷を歩いて戻る。
どちらからともなく、手を繋いで歩く二人は、
このまま夢が続けばいいのに、と心の中で思っていた。
全てこの谷だけの幻。里に戻れば消える夢。
梅の谷を出る直前、マヤは1本の梅の枝を折ると、
伝えられない思いを梅の木に託して真澄に手渡した。
私の気持ちです・・・・
マヤと離れ、車に乗り込んだ真澄は、自身のコートに残ったマヤの匂いに包まれて、
今更ながらマヤを思う気持ちが高まっていく。
そして、マヤに渡された梅の木の枝に咲く花が、里に戻る途端全て枯れ散ってしまう様子に、
梅の谷の幻を感じた。
“今になってこんなに、あの子がいとおしいなんて・・・”
枯れた梅の枝、マヤの残した言葉
“私の気持ちです・・・・”
まさか、紅天女の恋・・・!?
**
「水」のエチュード
滝に着いたマヤ達、いつの間にか村人達や、紅天女を取材したい記者達が多く集まり、
ちょっとした騒ぎになっていた。
そんな喧噪も全く気にならないと言わんばかりに、亜弓は上着を大胆に脱ぐと、
上半身裸になって、川に飛び込んだ。
亜弓の演じる人魚姫・・・
その美しさは大人子供を問わず見ている者を惹きつけ、恋させた。
水の中でしか生きられない人魚姫が、王子様に恋をした。
そして彼に会うため、魔女の薬で両足を手に入れようとする。
激しい痛みが体を襲う。息苦しい。
その痛みも、思い悩んだ王子への恋心と比べれば大したものではない。
水の中でしか生きられない人魚姫は、王子の愛の中で生きる人間に
生まれ変わった。
亜弓は水に生き、恋に生きる人魚姫を華麗に演じた。
マヤの「水」
川をじっとみていたマヤは、おもむろに滝の裏側に入り込むと、
地響きのような唸り声を響かせながら、水の向こうから出てきた。
その目は、すべての人間を下に見るような、威厳と畏怖の塊。
先ほどまでのマヤとは全く異なる別人格のような表情に、見ている者達は驚く。
マヤの演じる龍神は、自然をないがしろにし、水を当たり前に享受する
愚かな人間達を痛烈に非難する。
私の力で、全員押し流してしまおうか。
再び滝の向こう側へと姿を消していく龍神・・・。
エチュードが終わってからもしばらく皆、口がきけないほどだった。
**
「土」のエチュード
亜弓は、古代から人間の生活に深く密着する土に着目し、
縄を使用して、土器をつくり、運び、調理し、祭殿に舞い、
そしてまた土器が土に戻っていく流れを、描き出した。
それは力強く躍動的な、大地のエネルギーそのもの。
マヤは、土の中で育ち芽吹く植物の種を表現し、
母なる大地に守られ、育まれ、そして未来に向かって日の当たる方向へと
豊かに伸びゆく生物の息吹を演じた。
すべての生命を生み育てる土
土からすべての物は生まれ出る・・・・
「風火水土」全てのエチュードを終えた2人、
次はいよいよ「紅天女」を演じる
**
崖から転落する寸前車から逃げ出し、九死に一生を得た速水英介は、
村に住む、耳が聞こえず、言葉の話せない男性に助けられる。
彼の家で介抱を受けていた英介だったが、いかんせん自らの力では動けず、
ましてや耳も言葉も不自由な男性に、外への連絡を頼めるはずもない。
絶体絶命の英介は、唯一自分自身が身にしていた高価な懐中時計を
その男性の腰元にくくりつけ、町で誰かに発見されることをわずかな望みとして
託した。
その合図に気付いたのは源造、そして千草だった。
因縁の二人の再会は、意外な形で訪れた。
**
「紅天女」第2次審査を通過した桜小路優は、仏師一真の役をつかむため、
仏像を見て回っていた。そしてその中に自らの思い描く仏像を見つける。
仏師海慶作・・・
桜小路はその作者に会いにゆく。
仏師海慶、本名は山本清二
普段は市役所に勤務する普通の公務員、優しい妻と元気な子供達2人に囲まれた、
普通の幸せな家庭に暮らしている。
桜小路は頼み込んでしばらくの間居候させてもらう事になった。
仕事の依頼はたくさんあれど、一向に仏像を彫る気配のない山本。
話を聞くと、まだ木の中にいる仏の姿が見えてこないのだという。
時が来れば、自然とそのまま彫りだせばいい・・・・木の内面から湧き出す形のままに・・・
その時が来た
普段見せる柔和なよきパパの顔はそこにはなく、一人の仏師が存在していた。
一心不乱にノミをふるう仏師海慶。
その近寄りがたい雰囲気を目の当たりにした桜小路は
仏師としての一真の心をつかんでいく。
己の中の仏・・・・仏師一真も己の中の仏を見つめ続けたのだろうか
自分の中の紅天女を・・・。
**
最後の課題は「紅天女」
梅の谷を舞台に、セリフの一部を演じる
誰じゃ わたしを呼びさますものは 誰じゃ
森のこだまか 夜の静寂か
いや これは血の匂い
二つの渦がぶつかりあうのがみえる
赤い渦と白い渦と 天地を荒す二つの独楽
まわる まわる ぶつかりながらはじけながら
あらゆるものを破壊してふくれあがり
ますます激しく回転してゆく二つの独楽
神の気は乱れ 戦の火がうまれゆく
二つの独楽を中心に憎しみと悲しみが広がってゆく
つぎつぎと命の玉が消えてゆく
わからぬ 人はなぜ争いあうのか
血を流し 滅ぼしあうのか
天の声がきこえぬか
地の声がきこえぬか
天と地を結び 命の玉を育てゆく 神の歌がきこえぬか
なぜ気づかぬ
この世に”魔”を呼びよせるのは人間のみ
悪しき想いが”魔”へと通じ 彼らの道をつくってしまうのがなぜわからぬ
愚かなことよ
その身を動かすものこそ 己が真の姿であることに気づかぬとは
己が命を育てゆく
天と地の神の心も気づかぬとは
“樹”は“気”じゃ
大地の神の“気”が育って地上に現れしもの
ここは神の棲まう場所 聖なる地
この梅の木は我が姿
我が力は螺旋となりて 天へ昇り 地のものを育てゆく
水のものを育てゆく
根をはるもの 地を這うもの 飛ぶもの 歩くもの 泳ぐもの
育てよ 育てよ すくすくと すくすくと
増えよ 満ちよ 幸いあれよ
まこと紅 千年の命の花を咲かそうぞ
いよいよマヤと亜弓が、紅天女に挑むというその時、
千草の心臓が悲鳴を上げたーーーー
第22巻へは・・・こちらから
*****感想**************************************
紅天女の章は、観念的でまとめにくい。
風火水土好き(一番は亜弓の土)、だけど文章にしようがないし、
無理にすると冗長になってつまらない。
だから今までよりちょっと簡略的にまとめる事にしました。
ミニエピソードいろいろあるんだけど、もー、端折っちゃう!
今回の巻で一番の衝撃は、なんといっても社務所事件なのですが、
それ以上に、私がちょっと驚いたのは、前巻でマヤと真澄二人紅天女の里で
星を見るシーン、
あんなにロマンティックなのに、真澄の最後の独白は“おやじ・・・”
なんだよね・・・・。
そっちかい、真澄さん!!
もとい、社務所事件の話。
私が初めてガラスの仮面を読んだのは中学生の時で、その頃はちょうどこの辺り、
次の次の巻くらいまでしか刊行されていなかったです。(文庫で)
しかも結構がっつり「紅天女」の内容と、千草の幼少時代が入るので、
中学生の私にとっては、社務所事件があったことで、何となく停滞気味の
マヤと真澄の関係において一つの決着が着いた気になれて
折よく途中下車できたというか。
で、長いインターバルを挟んでる間に、いつの間にか話がどどどと進んでいたという。
真澄、マヤの寝込みを襲うシリーズ第2弾
マヤは単純な人なので、好きって気づいたらじっとできないと思うのですが、
そんな時に限って、真澄の中の心の鍵MAX警戒モードになっているという切なさ。
マジ思い出してほしい、水城さんのあの言葉
「いつまでも信号は赤ではありませんわよ!!」
夜の社務所で抱き合って一夜を過ごしておいて、好きも嫌いもあるかいや。
あ、あと大都の車、壊れすぎ。
※※内容ネタバレ、感想主観です。※※
仮面年表は こちら
紫のバラ心情移り変わりは こちら
49巻以降の話、想像してみた(FICTION)*INDEX*はこちら
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『ガラスの仮面』文庫版第21巻 ※第12章(途中から)(途中まで)
第12章 紅天女
「火」のエチュード
亜弓は燃え盛る炎を両手に持った細長い布のリボンで巧みに表現した。
高い身体能力をいかんなく生かした、燃え盛る炎。
音楽に合わせて、時に激しく、時にメラメラとした亜弓の火の演技は
見る物を飽きさせない美しさと華やかさがあった。
表現力の高い亜弓の演技は、風になろうとしたマヤと比較しても、
舞台性の高い演技として評価される。
一方マヤ、打掛をざっくりと羽織り、うつろな目をしながら
火の見やぐらを昇るパントマイム、そして
「火付けは死罪・・・・もし見つかれば殺される・・・」
マヤが始めた「八百屋お七」の演技に、千草は驚愕する。
これはかつて、同じエチュードを一蓮の前で行った時、千草が火の演目でやったものだ。
何故マヤがこれを・・・。
「熱いよ吉さん、燃える・・・なにもかも燃えていくよ・・・・」
全身を炎に巻かれ燃やし尽くされるようなマヤの演技は切なくなるほど苦しく、
まさに心の火を表現していた。
「本物の恋をしなさい、マヤ。その後またあなたの演技が見たいわ」
千草はマヤの目にはまだ、本当の恋の狂気がないことを指摘し、そう感想を述べた。
次は「水」のエチュード・・・
亜弓を追って梅の里にまでやってきたカメラマン、ピーター・ハミルは
この風火水土のエチュードを行う意味を千草に尋ねた。
千草は、このエチュードは過程にこそ意味があると語った。
何を演じたか、どう演じたかではなく、何を演じるか、どう演じるかを悩み、導き出す
この過程を通して、二人は紅天女をつかむことができるのだと。
亜弓は水の中でしか生きられない存在に着目した。
水、生命をつなぐもの
水がなければ人も植物も動物も虫も生きられない。
そしてその中で生きるもの・・・。
水から決して離れて生きていけないもの・・・。
マヤも自分の中の水の演技をどういう風にすればいいか悩みながら
さまよっていた。
雨、そののちの虹、そうだ、これもすべて水のもう一つの姿。
あの雲も、霧も、変化した水・・・。
ダムを訪ねたマヤは、水力発電で水の流れおちる力で電気を起こしていることを聞く。
雲となり、雨となり、時には虹を見せ、時には落下する力で電気をも起こす
水の力・・・。
マヤが千草の前で八百屋お七を演じたことを
部下から聞いた速水英介は、してやったりと大笑いをした。
千草はさぞかし驚いたことだろう。
そして、滞在していた湯治場からいよいよ梅の里に向かう事を決める。
しかしその途中が崖崩れで行き止まりになった山道で立ち往生、
運転手が助けを呼ぶため一人取り残された英介の車は、
雨でスリップしそのまま崖下に転落し、英介は行方不明となった。
東京でその一報を受けた真澄は、急ぎ救助隊を派遣するよう指示を出し、
自らも紅天女の故郷に向かう。
崖下からは、ぐちゃぐちゃになった車が発見されたが、車内に英介の姿はない。
周辺を捜索するが、英介の物すら見つからない。
こんな形で、英介と決着が着くのはいやだ。何としても探し出す。
捜索は夜にまで及んだが、英介を見つけ出す事は出来なかった。
やるせなさを抱えながら宿に戻る真澄、その途中ふと星空に気付き
途中下車した真澄は、
そこに寝転がるマヤの存在に気付いた。
マヤは水のエチュードに悩みながら、一人草地に寝ころび星空を眺めていた。
あの日、プラネタリウムで見た時以上の満天の星空。
真澄にも見せてあげたいな・・・などと思っている時、流れ星がきらめいた。
願い事すればよかった・・・・と独り言を言っていると、
「何を願うつもりだったんだ?」
という声、
振り返るとそこに、真澄が立っていた。
まさかこんなところで会うとは思ってもいなかったマヤは、言葉がつながらない。
マヤの隣に腰かけた真澄は、今義父が行方不明になっている事、
その捜索でここまで来た事を淡々と語った。
いずれ君の耳にも入るだろうから言ったまでだ、心配してもらわなくて結構。
そう語る真澄の顔はどこまでも冷静で、感情が読み取れない。
二人で寝ころび空を見上げる。
いつか、紅天女の故郷で、一緒に星が見てみたいと話した。
まさかこんな形で実現することになるとは。
お互いに告げられない思いを抱えながら、夜空をずっと眺めていた。
「わたし、もし紅天女を演れるようになったら、紫のバラの人にまっさきに観ていただきたい・・」
いつか、私の前に現れて名乗り上げてくださるのを待っている・・・
切実な気持ちを真澄に告げるが、真澄は
「幸せなファンだね、そのひとも」
としか言ってはくれなかった。
その時、一筋の流れ星がきらめいた。
また願い事ができなかったと言うマヤ。真澄にあなたはできたかと聞くと
「おれの願い事は、きっと一生かなわない・・・」
とつぶやくように答えた。
夜も更けてそれぞれの地に戻る為、その場を後にした二人。
真澄の差し出した手を静かに握り歩く二人。
この星空が、どこまでもつづけばいいのに・・・。
真澄の手のぬくもりを感じながら、マヤはそう思うのだった。
マヤは、村人から龍神伝説を聞く。
龍神さんは水の神
川も池も滝もみんな龍神さんが治めている
変化する水、それを司るもの・・・
亜弓は、水の中でしか生きられないもののように、
人間にとってそれがなければ生きられないものはなんなのかを考えていた。
水も確かに必要だが、人は水の中では生きられない。
空気?いやそれよりも・・・・
赤ん坊は母親の愛がなければ生きていけない、男も女も愛がなければ・・・・
愛がなければ・・・
愛もまた水・・・・!
**
山寺に居る千草の元を尋ねた真澄は、英介の行方を知らないか尋ねた。
千草からも有力な情報が得られなかった真澄は、一旦自分は東京に戻ることを告げ、
山寺を後にした。
義父の姿を見つけるまで僕はあきらめないつもりです、と語る真澄に千草は尋ねた。
「あなた、お義父さまを愛しているの?」
千草の問いに、まっすぐな目線で答えた真澄。
「いいえ!」
山寺を訪ねた際、源造からマヤが梅の谷へ入っていくところを見たと聞いていた真澄。
いつの間にか降り出した雨はどんどんと激しさを増していく。
まさか・・・・マヤ・・・・。
何となく胸騒ぎがした真澄は、梅の谷へと続く吊り橋を渡っていく。
その先で真澄が見たものは・・・・
全面が紅色に染まった梅の群生。これが、紅天女の故郷・・・。
雨までもが紅く染まる。
初めて見る景色に圧倒される真澄だったが、その梅の木の中に、
マヤを見つける。
マヤは梅の木に腰掛け、雨に打たれている事に気づいているのかどうかも
分からないような表情で、宙を見ていた。
「マヤ・・・!」
真澄の呼び声に我を取り戻したマヤは、思わず木から落ちそうになる。
マヤを受け止める真澄。
「このバカ娘!」
全身ずぶ濡れ、キンキンに冷えきったマヤの手を抱きしめると、
自らのコートをかぶせ、雨をしのぐため近くにあった神社の軒先に腰掛けた。
随分と長いこと雨に打たれていたであろうマヤの体は冷え切っていて、
真澄は少しでも熱を伝えようとしっかりとマヤを包み込んでいた。
マヤは真澄の胸に抱かれながら、いつもこうして優しく自分を守ってくれていた
真澄の本当の優しさに気付く。
しばらく経っても雨はやみそうもない。
真澄は神社のそばの社務所を見つけ、そこに二人で入った。
社務所の中には一応薪ストーブもあり、真澄は湿気た木材に何とか火をつけ、
暖を取る。
濡れていた衣服を脱いで、直に真澄のコートを身にまとったマヤ。
こんな雨の中、自分が濡れる事も厭わずマヤのためにここまでしてくれる真澄。
今頃になってマヤは、真澄の仮面の奥の優しさを感じ、
どうして今まで気づかなかったのだろうと悔やんだ。
自分に投げかけられた言葉も振る舞いも、みんな自分のためのものだったのに。
みんな、真澄の優しさだったことに。
そしてマヤはようやく気付いた。
“あなたが好きです。速水さん・・・”
気を紛らわせるように、マヤを挑発するような言葉をかける真澄。
しかしマヤにはもう分かっていた。そうして真澄は自分の本心を隠してきたのだと。
そして、そうさせてきたのは他ならぬマヤ自身なのだと。
二人は社務所の中で、神社の由緒を見つける。
谷の奥に咲く紅梅は大地から発する神の“気”が“樹”となったとされ、
長い間神木とされてきた
不思議なことに季節を過ぎてもまだ花をつける紅梅はこの谷から持ち出すと
神の霊気を受けられなくなり枯れるという
南北朝のころ、世の乱れを鎮めるため一人の仏師が谷の神木を切り、
天女像を彫ってこの地に祀り平和を祈願したのが神社のはじまりとされる
尾崎一蓮はこの話をもとに『紅天女』を書いたに違いない。
「きみの紅天女を見たいものだな」
真澄の言葉にマヤは
「あたし、速水さんに喜んでもらえるような紅天女を演じたい」
と答え、真澄は動揺する。
「おれを憎んでいたのではないのか?」
「わたし、ずっとあなたに嫌われていると思っていました、だから・・・」
マヤが自分の事を憎くは思っていないということを知った真澄は優しく、
「君のことを嫌いだと思ったことは、一度もない」
と言った。
「舞台の上のきみを観るのは好きだ」
そう語ると真澄は、『若草物語』のベスから、『忘れられた荒野』の狼少女ジェーンまで、
マヤの演じてきた様々な舞台について感想を述べた。
それはまさに、紫のバラの人と同じ目線で。
「君の紅天女を見られれば、どんなに・・・・」
二人の距離が急速に近づく。
しかし落雷の音が真澄に現実を知らしめる。
そして真澄の口から「紫織」という名が出た時、
マヤは自分と真澄間の越えられない壁を感じた。
真澄が好きなのは、舞台の上の自分、女優としての自分・・・・
チビでなんの取柄もない私を、本気で相手にするはずなどない・・。
置いてあった薪も底をつき、ストーブが消えかかる。
ストーブの燃料を調達するためと外に出ようとする真澄。
しかし未だ雨降りしきる中、真澄の体を案じたマヤは、大丈夫だからと引き留める。
自分が金の卵だからと大事にしてくれるというのなら、私を一人にしないで。
速水さんが外に出るなら、私も行く!
燃料も尽き、ストーブの火が消えると、社務所の中に一気に冷気が漂う。
かじかむ手に息を吹きかけても、熱はすぐに消えてしまう。
そんなマヤに真澄は、二人で寄り添うだけでも少しは暖かくなるぞと、マヤに声をかけた。
もちろんイヤというにきまっている。しかしマヤは、
「温めて下さい、速水さん。手も足も冷えて、背中がゾクゾクします。だから」
私を温めて、雨の中のときのように・・・
その言葉に真澄は戸惑いながらもしっかりとマヤを抱きしめた。
「俺も男だからな。責任がもてなくなるかもしれんぞ」
真澄の胸に抱かれるマヤ。
朝になれば、覚める夢、それならこのひと時を私に下さい。
朝まで私に夢を見させてください。たとえ商品と思われていようとも・・・。
元より最愛の少女マヤを胸に抱き、理性を保っていることが精いっぱいの真澄は、
抑えきれない想いを必死に押さえつけると、
おれの気が変にならないうちに眠れとマヤに告げ、長く辛い夜に思いをはせた。
夜明け。
真澄の胸の中で安心したように無防備に眠るマヤ。
そのマヤの寝顔を見ながら、改めて自分のマヤへの愛情と、いつか大きく広い世界に飛び立っていく
マヤの未来を思い、真澄は静かにその唇にキスをした。
“夢はもう終わりだ・・・”
昨夜とはうって変わったように日差しが降り注ぐさわやかな朝。
二人で梅の谷を歩いて戻る。
どちらからともなく、手を繋いで歩く二人は、
このまま夢が続けばいいのに、と心の中で思っていた。
全てこの谷だけの幻。里に戻れば消える夢。
梅の谷を出る直前、マヤは1本の梅の枝を折ると、
伝えられない思いを梅の木に託して真澄に手渡した。
私の気持ちです・・・・
マヤと離れ、車に乗り込んだ真澄は、自身のコートに残ったマヤの匂いに包まれて、
今更ながらマヤを思う気持ちが高まっていく。
そして、マヤに渡された梅の木の枝に咲く花が、里に戻る途端全て枯れ散ってしまう様子に、
梅の谷の幻を感じた。
“今になってこんなに、あの子がいとおしいなんて・・・”
枯れた梅の枝、マヤの残した言葉
“私の気持ちです・・・・”
まさか、紅天女の恋・・・!?
**
「水」のエチュード
滝に着いたマヤ達、いつの間にか村人達や、紅天女を取材したい記者達が多く集まり、
ちょっとした騒ぎになっていた。
そんな喧噪も全く気にならないと言わんばかりに、亜弓は上着を大胆に脱ぐと、
上半身裸になって、川に飛び込んだ。
亜弓の演じる人魚姫・・・
その美しさは大人子供を問わず見ている者を惹きつけ、恋させた。
水の中でしか生きられない人魚姫が、王子様に恋をした。
そして彼に会うため、魔女の薬で両足を手に入れようとする。
激しい痛みが体を襲う。息苦しい。
その痛みも、思い悩んだ王子への恋心と比べれば大したものではない。
水の中でしか生きられない人魚姫は、王子の愛の中で生きる人間に
生まれ変わった。
亜弓は水に生き、恋に生きる人魚姫を華麗に演じた。
マヤの「水」
川をじっとみていたマヤは、おもむろに滝の裏側に入り込むと、
地響きのような唸り声を響かせながら、水の向こうから出てきた。
その目は、すべての人間を下に見るような、威厳と畏怖の塊。
先ほどまでのマヤとは全く異なる別人格のような表情に、見ている者達は驚く。
マヤの演じる龍神は、自然をないがしろにし、水を当たり前に享受する
愚かな人間達を痛烈に非難する。
私の力で、全員押し流してしまおうか。
再び滝の向こう側へと姿を消していく龍神・・・。
エチュードが終わってからもしばらく皆、口がきけないほどだった。
**
「土」のエチュード
亜弓は、古代から人間の生活に深く密着する土に着目し、
縄を使用して、土器をつくり、運び、調理し、祭殿に舞い、
そしてまた土器が土に戻っていく流れを、描き出した。
それは力強く躍動的な、大地のエネルギーそのもの。
マヤは、土の中で育ち芽吹く植物の種を表現し、
母なる大地に守られ、育まれ、そして未来に向かって日の当たる方向へと
豊かに伸びゆく生物の息吹を演じた。
すべての生命を生み育てる土
土からすべての物は生まれ出る・・・・
「風火水土」全てのエチュードを終えた2人、
次はいよいよ「紅天女」を演じる
**
崖から転落する寸前車から逃げ出し、九死に一生を得た速水英介は、
村に住む、耳が聞こえず、言葉の話せない男性に助けられる。
彼の家で介抱を受けていた英介だったが、いかんせん自らの力では動けず、
ましてや耳も言葉も不自由な男性に、外への連絡を頼めるはずもない。
絶体絶命の英介は、唯一自分自身が身にしていた高価な懐中時計を
その男性の腰元にくくりつけ、町で誰かに発見されることをわずかな望みとして
託した。
その合図に気付いたのは源造、そして千草だった。
因縁の二人の再会は、意外な形で訪れた。
**
「紅天女」第2次審査を通過した桜小路優は、仏師一真の役をつかむため、
仏像を見て回っていた。そしてその中に自らの思い描く仏像を見つける。
仏師海慶作・・・
桜小路はその作者に会いにゆく。
仏師海慶、本名は山本清二
普段は市役所に勤務する普通の公務員、優しい妻と元気な子供達2人に囲まれた、
普通の幸せな家庭に暮らしている。
桜小路は頼み込んでしばらくの間居候させてもらう事になった。
仕事の依頼はたくさんあれど、一向に仏像を彫る気配のない山本。
話を聞くと、まだ木の中にいる仏の姿が見えてこないのだという。
時が来れば、自然とそのまま彫りだせばいい・・・・木の内面から湧き出す形のままに・・・
その時が来た
普段見せる柔和なよきパパの顔はそこにはなく、一人の仏師が存在していた。
一心不乱にノミをふるう仏師海慶。
その近寄りがたい雰囲気を目の当たりにした桜小路は
仏師としての一真の心をつかんでいく。
己の中の仏・・・・仏師一真も己の中の仏を見つめ続けたのだろうか
自分の中の紅天女を・・・。
**
最後の課題は「紅天女」
梅の谷を舞台に、セリフの一部を演じる
誰じゃ わたしを呼びさますものは 誰じゃ
森のこだまか 夜の静寂か
いや これは血の匂い
二つの渦がぶつかりあうのがみえる
赤い渦と白い渦と 天地を荒す二つの独楽
まわる まわる ぶつかりながらはじけながら
あらゆるものを破壊してふくれあがり
ますます激しく回転してゆく二つの独楽
神の気は乱れ 戦の火がうまれゆく
二つの独楽を中心に憎しみと悲しみが広がってゆく
つぎつぎと命の玉が消えてゆく
わからぬ 人はなぜ争いあうのか
血を流し 滅ぼしあうのか
天の声がきこえぬか
地の声がきこえぬか
天と地を結び 命の玉を育てゆく 神の歌がきこえぬか
なぜ気づかぬ
この世に”魔”を呼びよせるのは人間のみ
悪しき想いが”魔”へと通じ 彼らの道をつくってしまうのがなぜわからぬ
愚かなことよ
その身を動かすものこそ 己が真の姿であることに気づかぬとは
己が命を育てゆく
天と地の神の心も気づかぬとは
“樹”は“気”じゃ
大地の神の“気”が育って地上に現れしもの
ここは神の棲まう場所 聖なる地
この梅の木は我が姿
我が力は螺旋となりて 天へ昇り 地のものを育てゆく
水のものを育てゆく
根をはるもの 地を這うもの 飛ぶもの 歩くもの 泳ぐもの
育てよ 育てよ すくすくと すくすくと
増えよ 満ちよ 幸いあれよ
まこと紅 千年の命の花を咲かそうぞ
いよいよマヤと亜弓が、紅天女に挑むというその時、
千草の心臓が悲鳴を上げたーーーー
第22巻へは・・・こちらから
*****感想**************************************
紅天女の章は、観念的でまとめにくい。
風火水土好き(一番は亜弓の土)、だけど文章にしようがないし、
無理にすると冗長になってつまらない。
だから今までよりちょっと簡略的にまとめる事にしました。
ミニエピソードいろいろあるんだけど、もー、端折っちゃう!
今回の巻で一番の衝撃は、なんといっても社務所事件なのですが、
それ以上に、私がちょっと驚いたのは、前巻でマヤと真澄二人紅天女の里で
星を見るシーン、
あんなにロマンティックなのに、真澄の最後の独白は“おやじ・・・”
なんだよね・・・・。
そっちかい、真澄さん!!
もとい、社務所事件の話。
私が初めてガラスの仮面を読んだのは中学生の時で、その頃はちょうどこの辺り、
次の次の巻くらいまでしか刊行されていなかったです。(文庫で)
しかも結構がっつり「紅天女」の内容と、千草の幼少時代が入るので、
中学生の私にとっては、社務所事件があったことで、何となく停滞気味の
マヤと真澄の関係において一つの決着が着いた気になれて
折よく途中下車できたというか。
で、長いインターバルを挟んでる間に、いつの間にか話がどどどと進んでいたという。
真澄、マヤの寝込みを襲うシリーズ第2弾
マヤは単純な人なので、好きって気づいたらじっとできないと思うのですが、
そんな時に限って、真澄の中の心の鍵MAX警戒モードになっているという切なさ。
マジ思い出してほしい、水城さんのあの言葉
「いつまでも信号は赤ではありませんわよ!!」
夜の社務所で抱き合って一夜を過ごしておいて、好きも嫌いもあるかいや。
あ、あと大都の車、壊れすぎ。
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