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散日拾遺

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単振動の美しさ

2016-01-17 10:34:51 | 日記

2015年1月5日(水)・・・書きかけほったらかしの続き

 ただいま高2の三男、数学に次いで物理の無茶振りをしてくるようになった。人にものを頼むのがうまいんだよ、この子は。正月3日の晩、キントン色に染まった頭の中をそろっと覗き込むように、「単振動って、覚えてるよね?」いやまあ、確かに聞いたような覚えはあるんですが・・・。

 数学と物理の能力は高校レベルではきれいに並行する。どちらも大してできはしなかったが、好きではあった。殊に数学と物理の関連といったものには妙に惹かれた覚えがある。といっても古典物理学までの話だけれど、本棚には確かにその痕跡があって、物理の参考書が4種類ほども並んでいたりする。僕は医学部の入試では化学・生物を選択したから、物理での受験は東大文系の一次しか経験していない。なのにこの投資は勿体ないようだけれど、そもそも入試のために買い込んだわけではなかった。4つそれぞれスタイルや論じ方が違っていて、いずれも捨てがたいのである。当時はそう思っていなかったが、これ既にシュミの領域でしたね。

 

 単振動という現象のユニークさは、当該物体に働く力/加速度が、その物体の位置に依存する ~ 原点からの距離に比例して強まる ~ という点にある。逆に言えば、そのような特性をもつ現象を単振動と呼ぶのだ。さらに、この系を解析する場合にあたって架空の円運動を想定し、その射影として単振動を記述するというやり方が面白い。そんなこと勉強したかなと記憶にかすりもしないのだが、えらく感動したらしい行間の書き込みは紛れもない、わが悪筆である。そんな時代もあったのね・・・

 この画面では数式が書きにくいが、何とかやってみよう。

 単位円上を等速円運動する黒子(くろこ)点の角速度をωとすれば、単振動する物体の位置 x は sin ωt で表される。(座標系の設定如何で、cos ωt と言っても同じことだ。)

 ついで、単振動物体の速度・加速度を考えるにあたり、高校物理の教科書・参考書は結構な苦労をしている。微分を使えば一瞬なんだが、なぜか教育指導要領は高校物理に微積分をもちこむことを禁じているのだ。これについて、1973年当時僕らが教わった物理の先生 ~ 石毛先生 ~ は大いに嘆いておられたものだが、事情は現在も変わらず物理の先生が同じように嘆いていると三男情報。何でだろう?

 微分の便利を知ってしまうと、もう以前には戻れないこと、方程式なんぞと同じである。ここで三角関数の玄妙な特性が大いに発揮される。

 x = sin ωt を t に関して一回微分して、

この物体の速度は

 v = ω cos ωt 

もう一回微分して、この物体の加速度は

 a = ー ω^2 sin ωt

ところが x = sin ωt だから、何のことはない

 a = ー ω^2 * x

  ω^2 は定数である。結局この物体の加速度 a は位置 x に比例する大きさであり、運動方向とは逆向きに働くことになる。いやさ、このように記述される運動を「単振動」と呼ぶのだね。バネや単振り子(=ブランコ!)がこれに相当するわけで、単振動の実例は身の回りにかなり多い。

 単振り子の場合、ω^2 にあたる定数は g/l (g は重力加速度、lは振り子の長さ)になる。振り子の運動はヒモの長さによって決定され、おもりの質量や振幅に依存しないという例の法則 ~ 振り子の等時性(ガリレオ・ガリレイ)が、きれいに数式に現れている。

 

 この美しさが物理学の魅力なのだろう。個々の物質の異なる性質を愛でる化学の博物性も好もしいが、個別性を徹底的に捨象して単純な法則を磨き出す物理学の原理性は、また格別である。そしてこの美しさは、どこか碁に通じているんだな。

 ついでながら博物学的蛇足を述べておくと、ガリレオ・ガリレイという反復律動的な名前は、長男の名として父親の姓を単数形にしたものを当てるという、トスカナ地方の当時の習慣に依るものらしい(トスカナ出身!ダンテとガリレオ、この二人だけで既に凄すぎる・・・)。フィレンツェ生まれの音楽家にして呉服商、ヴィンチェンツォ・ガリレイの第一子がガリレオ・ガリレイというわけなのだ。

 


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