散日拾遺

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落語のこと

2016-11-12 08:42:57 | 日記

2016年11月12日(土)

 保樹美さま、コメントありがとうございます。

 我孫子では御来聴のうえ、示唆に富んだ御質問をありがとうございました。(確か前回も御質問くださいましたか?)「笑いヨガ」のこと、そうしたものに関心をおもちであることが興味深く、「ウソくさい感じがして」と率直なところをお伝えくださったのも嬉しいこと、さらに「良い笑い/悪い笑い」を突っ込んでくださったのがタイムリーでした。何かと御明敏なと印象に残りましたが、日頃から「落語」をボランティアベースで実践していらしたのですね、諸事一挙に腑に落ちる感じです。

 私も落語は大好きで、講談社文庫から出ている『古典落語』シリーズは高校時代の最・愛読書でした。紺サージに銀ボタンの学生服で、右のポケットにニーチェ、左のポケットに落語というような毎日、そのことを嬉しそうに話したら、高橋祥友先生(筑波大学教授・自殺予防と災害精神医学の大家)には「落語は読むものではなくて聞くものです」とバッサリ斬られました。御自身は映画と落語が大好きで、移動中にもイヤホンで落語を聞いている本格的な通なのです。そんなことしてたら私なんか、あっという間にホームから転落しちゃいますよ。それとも、雑踏の中でいきなりゲラゲラ笑い出して病院に送られちゃうかも。「違います、精神科医なんです」「ウソだろ」なんてね。

 「読むものではなく聞くもの」は正論ではありますが、読んで楽しむのが邪道とも言えないと思うのですよ。保樹美さん同様、悪友に勧められて落語本にハマって以来、世の中の見え方が確かに変わりましたから。

 それに我孫子のパワポで一瞬垣間見えたように、たとえば『饅頭こわい』は洋の東西を問わず多く見られる限局性恐怖症 specific phobia を題材にしたもので、これに限らず落語の世界には精神疾患やこれに近い現象に取材したものがかなりあるのです。精神医学の授業をする際には格好の資料なんですが、そもそも「人の心」「病」「笑い」といった深くて面白い世界をいわばかすめ取って糧にしているのが落語なんですよね。たいへんな文化だと思いますよ。

 かてて加えて落語家の話芸の見事なこと!落語・講談・浪花節、これら豊かな伝統をもつ日本人なのに、大方の政治家・学者の話は何でああもつまらないのでしょう?大きな声では言えないけれど、牧師先生方もその例に漏れないのが残念。ただ例外はあります。これは実名を挙げてしまいましょう。

 日本基督教団梅ヶ丘教会、広田叔弘(ひろた・よしひろ)牧師のお説教は、きわめて正統的で生き生きとした聖書講解で貫かれていますが、その語り口・間の取り方がまた実に見事なのです。そして私には同先生の話法が、落語を中心とする日本の伝統話芸をしっかり踏まえたもののように聞こえるのですね。ぜひお聞きになってみてください。

 ・・・と申しましたが、インターネット上の音源がすぐに見つからないので近日中に探してお伝えします。今日はこの後ブログを離れ、48時間ほど戻ってこられない事情があるのでした。どうぞ良い週末をお過ごしください。

 

Ω


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