散日拾遺

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ナチュラリスト便り ~ 北関東編

2019-11-12 19:15:30 | 日記
2019年11月10日(日)
 このところO君は自然との交わりに余念がない。北関東で開催される定例観察会に出かけ、さっそくその様子を知らせてくれた。今年最後の例会とのこと。

 「全国有数のブナの森は紅葉シーズンを終え、ブナ、ホオノキ、トチノキなどはほとんどが落葉していた。木の実、冬芽などを見て、楽しむ。冬を前にシカの食害からミズバショウを守る防御ネットが撤去された。」

 とあるのに続いて、リーダー格メンバーによる解説の詳しい聞き書きを送ってくれた。これが非常に興味深いのだが、僕と違って公開情報には正確を期するO君に敬意を表し、原文の転載は控えておく。
 間違いないと思われる部分から抜き書き:

・ ブナの幹が地衣類とコケの仲間に覆われていて、当地ではブナ本来の樹皮を見ることができない。地衣類は菌類と藻類の共生体で、菌類から地上に進出する力を、藻類から光合成する力を受け継いだ。地衣類は大気がきれいで湿潤な地域に生息するので、環境の指標になっている。当地のブナの森の現状は環境の良さを物語る。
・ さまざまな地衣類がいて、さまざまな樹木に見られるが、ブナノモツレサネゴケは黒色でブナにしか生息しない。このため、黒い模様があることがブナの特徴になっている。
・ 当地のブナの森の土壌の保水力を知るため、ビールを飲むプラスチック容器に土壌を入れてみたところ、約100㏄の水を蓄えることができた。当地には1mもの腐葉土の土壌が堆積されていることから、その保水力は「緑のダム」と呼ばれるにふさわしいことが示唆された。
・ 落葉は樹木の「意志」で行われる。枯れた枝に着いた葉はそのまま枯れ、落葉しない。寒くなって来たから落葉させようという意志が働いて、離層ができるのである。
等々
 
 落葉は樹木によって意志的に行われるという部分は、以前から思っていたところである。詩文などでは冷たい北風が容赦なく枯れ葉をもぎ取っていくというイメージで描かれがちだが、O君のメモにある通り落葉にあたっては葉の基部に「離層」と呼ばれる組織が形成され、これによって枝が葉を切り離すのである。切り離された葉は腐葉土の素材となり、その養分が元の木を養うという具合で、見事なものである。
 それを「意志(意思)」と呼ぶことの当否はさておき、寒さに圧倒されて葉を奪われるどころか、合理的でしたたかな冬の備えを樹木が主体的に行っていることは間違いない。
 文字情報はこのぐらいにして、息を呑むような見事な風景を送ってもらった写真でたどってみよう。









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