京のおさんぽ

京の宿、石長松菊園・お宿いしちょうに働く個性豊かなスタッフが、四季おりおりに京の街を歩いて綴る徒然草。

耽美の極み

2011-07-26 | インポート

 7月30日は、谷崎潤一郎の忌日である。

 谷崎といえば、いわずと知れた大正・昭和の大文豪。

 この谷崎は、京都に縁の深い人物であることも、よく知られている。

 

 谷崎の作品の中でも、代表作といわれるのが『細雪』である。

 先年大きな話題になった某有名料亭のあった船場の旧家である蒔岡家の4人姉妹を取り巻く物語となっている。

 この『細雪』の主舞台は、大阪・神戸である。

 が、姉妹たちが旅行に訪れる先として、京都が描かれている。

 印象的なのは、平安神宮の桜を見に来た場面である。

 枝垂桜の美しさを見事に流麗な筆致で描ききっている。

 

 また、『朱雀日記』という随筆では、有名料亭、瓢亭を始めて訪れた場面を描いている。

  

      春雨のしょぼしょぼと降りしきる日の夕方、上田先生から招待されて、

    私は長田君と一緒に、南禪寺境内の瓢亭へ俥を走らせた。

    やがて俥の止まつたのは、見すぼらしい燒芋屋のやうな家の軒先である。

    大方車夫が蠟燭か草鞋でもでも買ふのだろうと思つて居ると、

    おいでやす、お上りやす、と云ふ聲が聞えて、幌が取り除けられる。

    其處が瓢亭の門口であつた。

  

 なるほど、知らずにはじめて訪れたら、そう思うだろう。

 ちなみに、ここに出てくる長田君というのは、祇園小唄の作詞者、長田幹彦である。

 

 さて、その谷崎の墓所は京都にある。

 哲学の道から山手のほうへ上っていった先にある、法然院というお寺だ。

 紅葉や椿でもよく知られたお寺である。

 その墓所の中の奥まったところにあるが、春に行けばすぐに分かる。

 枝垂桜の枝の撓って垂れた先に、墓がある。

 なんとも優雅である。

 いやでも『細雪』の中の、平安神宮の場面が思い出される。

 法然院にはその他にも河上肇など、著名人の墓も多い。

 一度たずねてみてはいかがでしょうか。

”あいらんど”