京のおさんぽ

京の宿、石長松菊園・お宿いしちょうに働く個性豊かなスタッフが、四季おりおりに京の街を歩いて綴る徒然草。

深い祈り

2022-08-17 | 京だより

 

 8月16日。

 京都では毎年五山の送り火が行われる日です。

 お盆の入りでお迎えした先祖の霊を、再び送り出す道を照らす炎。

 終戦の日の翌日ということに、何か奇妙な縁を感じます。

 

 当たり前のように行われていた送り火が、ここ二年は縮小された形での実施でした。

 今年は3年振りに、完全な形での実施となりました。

 そこに、人それぞれ、様々な思いがあった事でしょう。

 できる事なら、この炎の瞬きが平穏の象徴となればと、願っております。

 

 さて、その3年ぶりの送り火は、波乱の幕開けとなりました。

 直前の雷と土砂降りで、本当に実施できるのかと心配になりました。

 当館では3年前まで毎年、屋上にて宿泊のお客様に送り火を鑑賞いただいておりました。

 2年間の縮小実施では中断していたのですが、今年はお客様に屋上へ上がって頂く予定にしておりました。

 ところが、という雷雨です。

 

 少しくらいの雨はともかく、雷はお客様の安全を脅かすものです。

 ですので、屋上は解放せず、会議場から窓越しに鑑賞いただく手はずを整える事にしました。

 ただ、屋上で鑑賞していただく選択も、最後まで残しました。

 そうして迎えた大文字点火の午後8時のほんの数分、いや、数十秒前、雨が上がりました。

 空を見上げ、風と雲の様子を確認し、屋上へ上がっても安全と判断しました。

 既に会議場での鑑賞を館内放送で案内しておりましたが、急きょ再び変更し、屋上へご案内しました。

 そして……。

定刻より10分程度遅れ、炎の大文字が浮かび上がりました。

通常は時差で点火される「妙法」と船形も、ほぼ同時に点火されました。

 

 雨が空気を洗ってくれたのか、いつにもまして、綺麗に浮かび上がったように見えます。

 お客様に屋上で鑑賞いただいてよかったな、と思いました。

 室内から見る送り火も悪くありませんが、外気に解放された場所で見る送り火は格別です。

 そんな雰囲気をお客様にも味わっていただけて何よりでした。

 お客様にも深い思い出として心に残していただけたら幸いでございます。

 

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