自己満足的電脳空間

完全自己満足主義。テーマはない。自分の趣味・関心事を偏った嗜好と思考でダラダラと書き綴る自分のための忘備録。

クライマックスシリーズ制度考察

2017-09-26 00:05:00 | 野球、その他スポーツの話
今年のペナントレースは9月中旬に早々と福岡ソフトバンク、広島のリーグ優勝が決定した。


優勝決定後と言えば、以前は残り試合を黙々と消化するだけだったが、現在はクライマックスシリーズ(以下CS)制度が導入された結果、ペナントレースは優勝決定後も活況を呈している。

ただ、このCS、毎度のことではあるが、その存在意義を問う声が上がっているのも事実である。

今年は優勝した両チームは2位以下に10ゲーム以上の大差をつけている(9月26日現在)。しかし、CSファイナルステージではリーグ優勝チームに1勝のアドバンテージが与えられるのみ。これほどの大差をつけ圧倒的な強さを見せた各リーグの優勝チームではあるが、CSの結果次第では優勝チームが参加できない日本シリーズが開催される可能性もある。もうしそうなった場合、年間チャンピオンを決める頂上決戦としては大いに違和感が湧くのは自然であろう。しかし、興行的なメリットを考えると現在は有益なコンテンツと化しているのも事実である。CSは必要なのか?不要なのか?CS制度のメリット、デメリットを考えてみた。

【CSのない場合】
◆メリット:リーグ優勝したチームはそのまま日本シリーズへ進出できる。
◆デメリット:消化試合が多くなる。消化試合はメディアが取り上げない。
今シーズンは前述通り両リーグとも9月中旬にリーグ優勝が決定。それ以降、CS報道にメディアの注目が移った。これがCSなしならペナントの4分の1ほどが消化試合になってもおかしくない。また、Bクラスがほぼ決まってしまえば、本音の部分で、選手はチームが勝つために試合をしない。進塁打など打率が下がる打撃はしない。自分の成績を上げるためにプレーをする。そんな目を覆いたくなる出来事が過去にあった。
●1984年:本塁打王争いをしていた中日・宇野内野手と阪神・掛布内野手が最終2試合で対戦したが、お互いに10連続敬遠でタイトルを分け合った。最終戦を前に、セ・リーグ会長から敬遠をしないよう警告文が出ていたにもかかわらず無視され、リーグは2人を表彰した。会長の警告、無視かよ!
●1982年:首位中日と横浜大洋の最終戦では、横浜大洋・長崎外野手と首位打者を争っていた中日・田尾外野手は5打席全て敬遠された。この試合は、中日が勝つか引き分ければ優勝、もし横浜大洋が勝てば2位巨人が逆転優勝という大一番だった。田尾外野手を無意味に出塁させた横浜大洋は当然のように0対8で完敗し、中日が優勝した。巨人からは抗議もなかったが、これはもはや野球協約で禁じる敗退行為、すなわち八百長だと断ずる声もある。
●1998年:千葉ロッテ・小坂内野手と西武・松井稼内野手が盗塁王を争った最中の消化試合。小坂内野手はわざわざスタメンを外れて代走で出場。西武投手は牽制を悪送球した。この悪送球も故意の可能性が高いが、小坂内野手は進塁しない。すると投手は故意にボークを犯して、小坂内野手を2塁に進ませる。ベース上にはショート松井内野手が張り付いたまま。小坂内野手は無理に3盗を試み、アウトになった。
●2001年:大阪近鉄・ローズ外野手が王貞治・福岡ダイエー監督(記録更新時は巨人の選手として)の持つシーズン55本塁打の更新に挑戦し、その王監督の率いる福岡ダイエーから四球攻めにあった。王監督が指示したわけではなかったとされるが、シーズン後に実際に敬遠を指示した若菜バッテリーコーチが辞任した。
●2002年:逆に西武・カブレラ内野手は、本塁打王争いを有利に運ぶ意図もあり少しでも多く打席に立つために1番で出場した。


【CSのある場合】
◆メリット:消化試合が少なくなる。メディアの露出が増える。今季のセ・リーグで言えば、横浜と巨人の3位争いは現状で最も注目されている動向だ。プレーオフ制度はともかくCSのシステムには否定的な私でも逐一チェックしているほどだ。
◆デメリット:リーグ優勝したチームが日本シリーズに出場できないケースがある。

消化試合の弊害は、メディアの露出が減るなど球団にとってはいいことはない。スポンサー収入が下がる→放映権料が下がる→球場に足を運ぶファンも減る→チケット収入、グッズ収入もダウン、といったデフレスパイラルに陥る。昨年の横浜は好例だった。CS3位争いでカウントダウン企画Tシャツを発売、その後、2位争いから三浦大輔投手の引退グッズまで。最後の最後まで商魂もたくましかった。こういった取り組みは、オーナー企業としても球団保有のメリットが出てくるのではないかと思う。CSがなければ、消化試合の経費がかさむばかりだった。消化試合が増えて球団経営に悪影響が出ると2004年に起きた球界再編の呼び水ともなりうる。


現行のCS制度にて最も批判が多いのは、「レギュラーシーズンの勝率が5割以下のチームでも3位までに入れば日本一になる可能性がある。」ことだろう。ただ、「球団数が圧倒的に多いメジャーリーグのプレーオフ制度はいいんだけど日本のCSはねぇ~」と通ぶって、MLBはなんでも正しいと心酔ている奴の会話を耳にすると異様にイラつく(苦笑)。MLBのプレーオフだって、所詮プレーオフ。日本のCS同様、問題点はある。


●借金チームがプレーオフに進出する事態はMLBでも起こりうる
現行CS制度は、MLBのプレーオフを参考に導入されたものである(システムはステップラダートーナメント方式なのでKBOスタイル)。MLBでは1リーグを3地区に分け、それぞれの地区優勝チームとワイルドカード1チーム(2011年までは各地区の2位チームのうちもっとも勝率の高いチーム。2012年からは地区優勝チーム3チームを除いた各リーグ12チームの中で勝利数の上位2チームが1試合限りのワイルドカードゲームを行い、その勝者がディビジョンシリーズに進出)がプレーオフに進出する。CSに反対する意見の代表的なものは、「メジャーのプレーオフ進出チームはあくまで地区優勝チーム。ワイルドカードは、他地区の優勝チームより勝率に勝る場合がある。だからプレーオフに進出する権利がある。CSの3位チームは、プレーオフ進出にふさわしい成績とは言えない」というものだ。
だが、これは1つ見落としている。MLBの各地区は、1リーグを3つに分けただけだ。したがって、いずれかの地区に強いチームあるいは弱いチームが固まってしまった場合、制度上借金チームが地区優勝してしまうことがあり得る。また。極端に少ない勝利数で地区優勝したチームがあった場合、リーグ上位4位でもプレーオフには進出できない。2000年以降両リーグの上位4チームだけでプレーオフを行ったのは、2002年、2004年、2010年及び2014年の4回のみ。これって、日本のCSよりひどくない?

甚だしいのは2008年ナ・リーグ西地区優勝のドジャースで、「ワイルドカードより下」どころかリーグ全体の8位の成績に過ぎない。

「東」=東地区優勝 「中」=中地区優勝 「西」=西地区優勝 「W」=ワイルドカード ◎=ワールドチャンピオン

さすがにまだ借金チームが地区優勝したことは現実にはないが、2005年のナショナルリーグ西地区優勝のパドレスの成績は、82勝80敗、勝率.504に過ぎなかった。リーグでは7位。ちなみにこの年、東地区ナショナルズは、81勝81敗の5割でも最下位だった。

「東」=東地区優勝 「中」=中地区優勝 「西」=西地区優勝 「W」=ワイルドカード ◎=ワールドチャンピオン

(さらに1994年には、テキサス・レンジャースが52勝62敗で首位に立っていたことがある。この年はストライキでシーズンが中断したため、公式には地区優勝はなしとなっている。)

現実問題として、これらのチームがポストシーズンを勝ち上がりワールドシリーズに駒を進めるのは、困難なのではないだろうか。上記のドジャースもパドレスも、地区シリーズであっさりとスイープされて早々に姿を消している。「借金チームが日本一なんて」と、まだ起きてもいないことをあまり心配する必要はないと思う。




●ペナントレースでの最高勝率チームを優勝とするのは単なる制度に過ぎない
そもそも、ペナントレースで最高勝率を上げたチームを優勝とするのは、「ルールでそう定めているから」に過ぎない。2001年のセ・リーグでは、勝率でなく勝ち星が一番多いチームを優勝とする方式が採用された。引き分け数の関係で、勝率と勝ち星が逆転してしまい、最多勝利を挙げたチームが優勝できない事態が生じたからである。試合消化の差から「隠れ首位」という現象が起き、わかりにくいと不評で1年で改められてしまったのは記憶に新しい。パ・リーグ3位の千葉ロッテが「下克上」にて日本一に輝いた2010年、よくよく考えてみるとパ・リーグで勝ち星が一番多かったのは1位の福岡ソフトバンクではなく、リーグ2位の埼玉西武ライオンズ。先の2001年セ・リーグ方式がこの年のパ・リーグに採用されていれば、優勝は埼玉西武だった。結局NPBのリーグ優勝はその年の制度によっていくらでも変わってしまうものなのである。
【2010年パ・リーグ順位表】


もちろん、長いペナントレースで最高の勝率を記録したチームがもっとも強いから優勝にふさわしいという意見には、高い蓋然性がある。だがそれなら、日本シリーズはどうだろう。長いペナントレースでリーグ優勝チームを決めたのに、たった7試合で日本一を決定するこの制度に、蓋然性はあるだろうか?現実には、日本シリーズを制したチームを日本一とすることは広く受け入れられている。これまた、そういう制度になっているからだ。




純粋に年間の優劣を付けるのであればプレーオフなんて制度は邪道かもしれない。しかし、興業的な要素を考慮すればプレーオフは必要悪なのかもしれない。2004年のセ・リーグのように、オールスター前にマジックがつくようなペナントは興業的にはよろしくない。特に昨年からセ・リーグは、1強3弱2問題外という勢力図が定着してしまい、優勝争いの興を削ぐこと甚だしい。優勝の可能性がなくなってモチベーションを欠いたプレーを見ても、誰も興奮しやしない。これを解消するには、各チームの戦力均衡を図る必要があるのだが、そう容易ではない。完全ウェーバー性やぜいたく税を導入して経済格差の是正に努めているMLBでさえ、現実には各リーグにお荷物チームが存在する。球団の戦力造成とはかくも難しいのだ。そこでその有力な解決策になるのが、CSなのかもしれない。3位にまで入れば、日本一の可能性がある。そんな違った見方をすれば、その存在意義も変わってくるのかもしれない。