入間カイのアントロポゾフィー研究所

シュタイナーの基本的な考え方を伝えたいという思いから、日々の翻訳・研究作業の中で感じたことを書いていきます。

アントロポゾフィー指導原理 (42)

2008-10-20 14:42:59 | 霊学って?
42.
そのようにして運命のなかの法則の作用に気づくとき、運命というものは、一つの肉体をもって地上を生きるだけでは実現されえないことが明らかになる。同じ肉体のなかに生きている限り、人間は自分の意志の「道徳性」の内容を、この物質界で自分の物質としての肉体が許容する範囲でしか、現実のものにすることができないのである。人間が死の門をくぐり抜け、霊性の領域に入ったとき、初めて、意志の霊性は完全な現実として現われることができる。そのとき、まずは善きものと悪しきものが、それぞれに応じた結果のなかで、霊的に現実化されるのである。(訳・入間カイ)

42. In einem solchen Erfassen der Gesetzmäßigkeit im Schicksal offenbart sich auch, daß sich dieses durch den Gang des einzelnen physischen Erdenlebens nicht zum Dasein bringen kann. Solange der Mensch in dem selben physischen Leibe lebt, kann er den moralischen Inhalt seines Willens nur so zur Wirklichkeit werden lassen, wie es dieser physische Leib innerhalb der physischen Welt gestattet. Erst, wenn der Mensch durch die Todespforte in die Geistessphäre eingezogen ist, kann die Geistwesenheit des Willens zur vollen Wirklichkeit gelangen. Da wird das Gute in seinen ihm entsprechenden Ergebnissen, das Schlechte in den seinigen, zunächst zur geistigen Verwirklichung kommen. (Rudolf Steiner)


この42項では、
物質としての肉体と、
霊性としての意志の、相互のかかわりに触れています。

人間のからだのなかの、
食べ物を食べたり、消化したり、
自分のからだの新しい素材に作り替えたり、
分解してエネルギーにしたりしていく代謝活動。

あるいは全身で起こっているさまざまな化学反応。
そして、手を動かしたり、足で歩いたり、
身振りや手振りや、踊りの所作といった「四肢」の動き。

そういった「四肢・代謝系」のなかに
「運命の法則」が働いているというわけです。

そして、身体の中に働くこの「運命の法則」を通して
物質ではない、霊的な意志が地上に現われていくという考え方です。

そのように考えていくと、
私たちの「意志」は、
一回だけの人生では完全に現れることはできないだろう、というのです。

なぜなら、
私たちの意志を実現する「運命の法則」が
身体の代謝系や四肢の活動のなかに働いているのであれば、
私たちの個々の体質や特性によって、
その法則の働き方も違ってくるからです。

念のためにつけ加えれば、
ここでは「運命の法則」は
身体のなかにしか働かないと言っているわけではありません。
四肢や代謝系においては、物質の状態が
運命の法則が働きやすいあり方をしているということだと思います。
つまり、運命が「画家」であれば、
その画家が使える絵の具やカンバスが、
四肢や代謝系であるということです。

もうひとつ、この項で重要なのは、
シュタイナーのいう「道徳性」という言葉が、
ただ単に「善なるもの」を表わすものではないということです。
そこには「善と悪」の相互関係が含まれています。
それが死後、霊界において「現実化」するというわけです。

次項では、
この「現実化」から考察が続きます。

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