入間カイのアントロポゾフィー研究所

シュタイナーの基本的な考え方を伝えたいという思いから、日々の翻訳・研究作業の中で感じたことを書いていきます。

アントロポゾフィー指導原理 (46)

2008-10-25 12:51:11 | 霊学って?
46. Es sollte an Schicksalsfällen, die in das Dasein des Menschen so eintreten, daß man ihre Bedingungen im jeweilig gegenwärtigen Erdenleben nicht finden kann, gezeigt werden, wie gegenüber solchen Schicksalsfällen schon rein die verstandesgemäße Lebensansicht auf früheres Erleben hindeutet. Es muß natürlich aus der Art der Darstellung klar sein, daß mit solchen Darstellung nichts Verbindliches behauptet, sondern nur etwas gesagt werden soll, das die Gedanken nach der geisteswissenschaftlichen Betrachtung der Schicksalsfrage hin orientiert. (Rudolf Steiner)

46.
人間は生きていくなかでさまざまな運命に遭遇する。その際、地上を生きる人間にとって、自分の「現在の人生」を振り返るだけでは、そのような運命がもたらされる条件が見出せないことがある。そうした運命の事例に即して、純粋に普通の知性で考えても、「前世」に何らかの体験があったのではないかと思わざるをえない場合があることを示していくとよいだろう。もちろん、人間が何かに縛られているような印象を与えてはならない。運命の問題に対して、私たちの考え方を「霊学による考察」に向けて方向づけることが重要なのである。(訳・入間カイ)


この46項では、
「条件」という言葉に注目したいと思います。

運命という出来事には、
その出来事が起こるための「条件」があるということです。

そもそも、自分の今の生活を考えたとき、
そこには多くの「偶然」や「出会い」が重なり、
その時々の自分の思いが働いています。

あの時、あの人と出会わなければ、
もしくは、この本を手に取らなければ、
あるいは、ああいったことが起こらなければ、
そして、そのとき自分自身が一歩を踏み出さなかったら、
今、自分はこういう生活をしてはいなかった。
そのように考えられるのではないでしょうか。

つまり、そこには
「外」からもたらされる出会いやきっかけと、
「内」からもたらされる私自身の意志が働いているのです。
いくら出会いや促しがあっても、
私の気持ちが動かなければ、
運命は成立しないのです。

今の自分の生活は、
いくつもの「条件」が重なって成り立っています。
そして、そこには
「外なる条件」と「内なる条件」があります。

たとえば、
現在の「私」のあり方を成り立たせている「条件」として、
もっとも基本的なのは、
この時代に、
この地域に、このような親のもとに生まれてきた、
ということではないでしょうか。

それを「偶然」と考えることもできます。
でも、もし自分の今のあり方を大切にするのであれば、
この「私」を成り立たせている条件は、
「運命」ということになるでしょう。

運命が成り立つためには、
「外なる条件」と「内なる条件」の両方が必要です。

親となるふたりが出会い、
それによって、「私」が生まれる条件がととのったとしても、
それは「外なる条件」にすぎません。
それに加えて、「内なる条件」が、
つまり私自身が、
「この時代、この地域に、この親のもとに生まれる」
という意志をもつことが必要だったはずなのです。

すると、
私がそのような意志をもつに到った背景には、
「生まれる前」の何らかの体験があったのではないか。
そのように考えることが可能なのではないでしょうか。

シュタイナーにとって、
運命とは、
人間を受け身にしたり、縛ったりするものではなく、
一人ひとりの「意志」(主体性)を働かせるための「条件」なのです。

なぜ自分はこんな境遇に生まれてしまったのか、と問うこともできれば、
発想を転換して、
こういう境遇に生まれたからこそ、
今の自分があるということもできます。

そして、今の自分のあり方が、
自分が今後もさらに成長・発達していくとしても、
なるべくしてなった「必要なあり方」であるなら、
今の自分のあり方を願った、自分自身の意志があるはずです。

そして、
もし本当に、そのような意志があったとすれば、
こんな今の状況を目指したり、引き受けたりするまでには、
それなりの理由がなければなりません。

かつて、どのような体験をすることで、
このような人生、
このような状態を
目指したり、引き受けたりしようとするに到ったのか。

そのように問いかけることが、
霊学によって、
運命を考察することにつながるのです。

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