入間カイのアントロポゾフィー研究所

シュタイナーの基本的な考え方を伝えたいという思いから、日々の翻訳・研究作業の中で感じたことを書いていきます。

アントロポゾフィー指導原理 (50)

2008-10-29 14:13:30 | 霊学って?
50.
特に重要なのは、「人類の歴史的生命」の考察に関して次の点を指摘することである。すなわち、歴史において、一つの時代からまた別の時代へとさまざまな出来事を運び込むのは、人間自身の心である。そのことを明らかにすることで、「歴史考察」は生きてくるのである。繰り返される地上の「生」のなかで、人々の心は、時代から時代へと旅を続ける。(訳・入間カイ)

50. Es ist von ganz besonderer Wichtigkeit, darauf hinzuweisen, wie die Betrachtung des geschichtlichen Lebens der Menschheit dadurch belebt wird, daß man zeigt, es sind die Menschenseelen selbst, welche die Ergebnisse der einen Geschichtsepoche in die andere hinübertragen, indem sie in ihren wiederholten Erdenleben von Epoche zu Epoche wandeln. (Rudolf Steiner)


この50項で、
「個人の生」から「人類の生」へと視野が広がります。

この「人類」という視点は、
シュタイナーの思想にとっても、
アントロポゾフィー霊学にとっても、
きわめて重要な意味をもっています。

私たちが個人として生きているように、
人類も「生きている」。
歴史というものは、
ただの出来事の連なりではなく、
「人類の生」の軌跡である、という見方です。

これまでの指導原理では、
私たち一人ひとりの「生」が
地上の生と、死後の生を通して、
「内と外」の転換を繰り返し、
そこでは私たちの意志が
地上の生における「運命」のなかに働いている。
そういうところを見てきました。

ここでは、
そういう私たち一人ひとりは、
ある時代、ある地域を
他の人々とともに生きていることを指摘しています。
そこで私たちが何を感じ、何を考えて、
どんな生き方を目指すのか。
その意志は、死後の生においても
私たち自身を形成する力として働き、
私たちはふたたび地上に生まれます。

そのとき、新しい地上の生において
私たちがどの時代、どの地域に生まれるかは、
私たち自身の意志によって決まるわけです。

そして、私たちが時代から時代へ、
ある地域から別の地域へと「生まれ変わり」を続けるなかで、
私たちは個人の輪廻転生だけではなく、
人類としての歴史を紡いでいくことになります。

つまり、私たちは、
人類の歴史という「生」を担うものでもあるのです。
そして、
個人の「生」のなかに、
私たちの意志が「運命」の作用として働くとすれば、
人類の歴史という「生」のなかにも、
私たち自身の意志が働いていることになります。
(ただし、繰り返しになりますが、
運命のなかに私たちの意志が働いているというとき、
「不幸な目に合うのは、おまえ自身の行いが悪かったからだ」というような、
単純な因果応報の考え方ではないということは何度でも強調したいと思います。)

このことを意識のなかにとどめて、
さらに指導原理を読んでいきたいと思います。

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