入間カイのアントロポゾフィー研究所

シュタイナーの基本的な考え方を伝えたいという思いから、日々の翻訳・研究作業の中で感じたことを書いていきます。

アントロポゾフィー指導原理 (47)

2008-10-26 21:01:36 | 霊学って?
47.
人間の運命を全体としてつくりあげているもの。人間の通常の意識は、その微小な部分しか捉えることはできない。運命の働きの大部分は、無意識のなかに潜んでいる。しかし、まさに運命の中に働くものを解き明していくことが、「無意識的なものは意識化されうる」ということを示している。時々、まるで無意識というものは「知りえない」ものであり、そこに「認識の限界」があるかのように語る人々がいるが、それらはまったく間違っている。人間の運命のなかで、一つひとつの事柄が解き明されていくにつれて、以前は無意識であったものが意識の領域へと運び上げられていくのである。(訳・入間カイ)

47. Was in der Schicksalgestaltung des Menschen liegt, das tritt nur zum allerkleinsten Teile in das gewöhnliche Bewußtsein ein, sondern es waltet zumeist im Unbewußten. Aber gerade durch die Enthüllung des Schicksalgemäßen wird ersichtlich, wie Unbewußtes zum Bewußtsein gebracht werden kann. Es haben eben diejenigen durchaus Unrecht, die von dem zeitweilig Unbewußten so sprechen, als ob es absolut im Gebiete des Unbekannten bleiben müßte und so eine Erkenntnisgrenze darstellte. Mit jedem Stück, das sich von seinem Schicksale dem Menschen enthüllt, hebt er ein vorher Unbewußtes in das Gebiet des Bewußtseins herauf. (Rudolf Steiner)


この47項は、
人間の「意識」や「知ること」の大切さを述べています。
運命に対しても、
その「意味」を知ろうとすることは無駄なことではなく、
とても重要なことなのです。

運命に対して、
私たちは「なぜ?」な思いを抱きながらも、
「どうせわからない」という気持にもとらわれます。
けれども、霊学は
通常は「人間には知りえない」とされていることに対して
その意味を問うことから始まるのです。

運命はどのようにつくられるのか、
なぜ自分の人生はこのように展開していくのか。
その理由は、はじめ、私たちにはほとんど分かりません。

しかし、前項で触れられているように、
人生のなかで遭遇する一つひとつの出来事の意味を、
「人生全体」との関連のなかで探っていくとき、
「この出来事があったから、今の自分がある...」というように、
一つの事柄の意味が、全体との関連のなかで少しずつ見えてくることがあります。
もちろん、それだけで「運命」そのものが理解できたわけではありません。

しかし、ほんのわずかな「理解」でも、
それによって、
「運命」をつくりあげる膨大な無意識の働きは、
少しずつ「意識化」されていきます。
そして、
その「意識化」によって、私たちは少しずつ
自分の運命に対して、
自分の人生に対して「主体性」を獲得していくのです。

霊学は、
一人ひとりの人間を何らかの「教え」に依存させるものではなく、
一人ひとりがそれぞれ異なる「運命」に対して
主体的にかかわっていくための支えになろうとするものです。

シュタイナーは「運命」というテーマに即して、
そのような霊学の特徴を明らかにしようとしています。
あるいは、別の言い方をすれば、
霊学の本質は、
人間の運命への取り組みを支えることにあるからこそ、
この指導原理の導入部分で、
まず運命の問題を取り上げているともいえます。

そして、霊学の大きな役割のひとつが、
「以前は無意識であったもの」を「意識化」していくことにあるのです。

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