入間カイのアントロポゾフィー研究所

シュタイナーの基本的な考え方を伝えたいという思いから、日々の翻訳・研究作業の中で感じたことを書いていきます。

「感覚フォーラム」

2007-03-29 23:48:05 | 社会問題
このブログも一向に更新できないまま、時間だけが過ぎていく。

この1~2年、僕の人生も急にあわただしくなった。
先日は、ある事情で、ついに幼稚園の園長になってしまった(この話はいつか改めて書きたいと思う)。

きょうは、フォーラム・スリーの佐藤雅史さんが呼びかけている「感覚フォーラム」のことをちょっと書いておきたい。

3月31日(土)に、第1回目の「感覚フォーラム」が行われる。

現代社会で、いたるところで人間を取り巻いているBGMや騒音の問題を、タバコの受動喫煙の問題と同じように、「静寂をもつ権利」や「感覚の尊厳」といった観点から訴えていこうとする最初の試みである。

本当は、僕も参加するつもりだったのだが、急に予定が入って行けなくなってしまった。でも、一人でも多くの人に参加してもらえればと思っている。

感覚は、アントロポゾフィー(人智学)の基本である。
シュタイナーに『アントロポゾフィー断章』という本があるが、その主要部分は感覚論である。シュタイナー自身にとって、アントロポゾフィー(人智学)の核心が感覚論であることが分かる。この本が書かれた時点では、シュタイナーはまだ「10の感覚」しか考えていなかった。それが最終的に「12の感覚」になり、黄道十二宮と照応するものとして捉え直され、音楽療法をはじめ、さまざまな治療法の基盤をなすようになる。

シュタイナーにとっては、「考える」ことさえも、一つの感覚活動である。
考えるということは、自分の頭のなかで堂々巡りをすることではなく、心を開いて、さまざまな概念を「知覚」することなのだ。
人間は、宇宙に向かって12の扉を開いて立っている。

真の自律とは、自分を開くこと、他者を感じることによって可能になる。
だから、シュタイナーは、幼い子どもたちが豊かな感覚体験をもつことを非常に重視したのである。
幼児期の感覚体験こそ、自由、平等、友愛の基盤なのだ。

しかし、今、子どもたちの周囲には自然の音や静寂などではなく、ありとあらゆる人工的な騒音やイメージが満ちている。

少し前、サブリミナルという言葉がよく取り上げられていた。映画のなかに、ストーリーとは関係のない商品の映像が一コマだけ挿入されるとか、ロックの歌詞に悪魔崇拝のことばが逆さに入っているといったことが話題になった。
しかし、今はそういう話もあまり聞かなくなった。サブリミナル効果が使用されていないわけではないだろう。
人々は、ますます無防備になっているような気がする。
憲法改変の話もそうだが、あまりにも危険な社会の動きに対して、僕たちの感覚はますます鈍らされているように感じるのだ。

そんなとき、佐藤さんからこの「感覚フォーラム」の話を聞いた。
人間の精神の自由の基盤にある「感覚の尊厳」を守ろうという彼のイニシアティヴにとても共感している。
この「感覚フォーラム」に多くの人が関心を寄せてくれることを願っている。

■□■ 第1回感覚フォーラム

感覚の大切さを社会と共有するために「第1回感覚フォーラム」
Forum “Save our Senses” S.O.S.
3月31日(土)14:00~17:30
オープンフォーラム早稲田
藤井喬梓(作曲家)/竹田喜代子(音楽療法士)/
佐藤雅史(フォーラム・スリー)
参加費:500円
http://www.forum3.com/pdf/2007/20070331sos.pdf
問い合わせ先:フォーラム・スリー
tel.03-5287-4770 / fax.03-5287-4771