入間カイのアントロポゾフィー研究所

シュタイナーの基本的な考え方を伝えたいという思いから、日々の翻訳・研究作業の中で感じたことを書いていきます。

アントロポゾフィー指導原理 (49)

2008-10-28 23:42:39 | 霊学って?
49.
人間は運命への問いによって、それまでの地上的な体験を超えた次元に目を向けざるをえなくなる。それによって、感性(感覚的本性)と霊性(精神的本性)の関係を真に感じ取ることができるようになるだろう。人間本質のなかに運命の働きを見る者は、すでに霊性のなかに立っている。なぜなら運命のなかのさまざまな関連性は、自然的なものとはまったく関わりがないからである。(訳・入間カイ)

49. In dem Besprechen dieses Hinausweisens des menschlichen Erlebens aus sich selbst an der Schicksalsfrage wird man ein wahres Gefühl entwickeln können für das Verhältnis des Sinnlichen und des Geistigen. Wer das Schicksal im Menschenwesen waltend schaut, der steht schon im Geistigen darinnen. Denn die Schicksalszusammenhänge haben gar nichts Naturhaftes an sich. (Rudolf Steiner)


この49項では、
「人間本質のなかに運命の働きを見る」という言葉に注目したいと思います。

本質というのは、ドイツ語のWesen。
「存在」とも訳されます。
このシュタイナーの言葉は、
「人間を成り立たせているもののなかに、運命の働きがある」
という意味になります。

私たちが「人間」というとき、
その人間とは何でしょうか。
その人がその人であるためには、
遺伝子とか、これまでの個人史とか、
自分の自分に対する意識とか、
他の人々の意識のなかに存在するイメージとか、
さまざまな要素が必要です。
そのなかで、きわめて重要なものとして
「運命の働き」があるということです。

シュタイナーは、
人間を成り立たせているもの、
つまり「人間の本質」は、
運命の働きによって成り立っていると言っているのです。

これまでの指導原理で見てきたのは、
人が死んで、ふたたび生まれるまでに、
つまり死と新たな誕生の間の「生」において、
自分は次の地上の人生ではどう生きたいかという意志が、
霊的な作用として、
人間自身をつくりあげていくということでした。

その意志が、
新たに地上に誕生してから、
運命の作用として、人間に働きかけるのです。

その意味で、
「人間とは何か?」と考えるとき、
運命を抜きには答えは得られないということになります。
そして、
運命の働きは「人間の本質」を成していると見るなら、
それは霊性を捉えていることになる。
なぜなら、運命の働きは、目にはみえない「霊的」なものだからです。

そのように運命について考えていくことで、
感覚によって捉えられるもの(感性)と、
精神によって捉えられるもの(霊性)との関係が、
次第にリアルに感じられてくるはずだ、ということです。

私たちがいまこの瞬間、
「なぜ自分はここでこうしているのだろう?」と考え、
そこに運命の働きを感じるとき、
私たちは「霊性の作用」に直接、向き合っています。

そして、その運命の作用は、
「私」という「人間の本質」と不可分に結びついているのです。

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