入間カイのアントロポゾフィー研究所

シュタイナーの基本的な考え方を伝えたいという思いから、日々の翻訳・研究作業の中で感じたことを書いていきます。

アントロポゾフィー指導原理 (44)

2008-10-22 15:27:37 | 霊学って?
44.
運命に対する問いは、「霊学」による考察へと移行しなければならない。そのためには、具体的な個々の人間の体験例に即して、そこに運命の作用が一貫して働いていることに気づく必要がある。そして、その運命の作用が、人生全体にとって持つ意味を見出していくのである。たとえば、ある青年期の体験を見るとしよう。その体験は、必ずしも精神的に自立した、本当の意味で「自由」な人格によって引き起こされたものではないだろう。ところが、その体験が、その後の人生全体の形成に、大きな役割を果たすことがある。(訳・入間カイ)

44. Ein Übergang zu der geisteswissenschaftlichen Betrachtung der Schicksalsfrage sollte dadurch herbeigeführt werden, daß man an Beispielen aus dem Erleben einzelner Menschen den Gang des Schicksalmäßigen in seiner Bedeutung für den Lebenslauf erörtert; zum Beispiel wie ein Jugenderlebnis, das ganz sicher nicht in voller Freiheit durch eine Persönlichkeit herbeigeführt ist, das ganze späten Leben zu einem großen Teile gestalten kann. (Rudolf Steiner)


この44項から、
「霊学」とはどうものなのか、が示されます。

たとえば、
「運命」という問いに対して、
私たちは漠然と、
「なぜこういうことが起こるのだろう?」
「不思議なめぐり合わせだ」
といった感想を抱きます。
でも、それは「感想」にすぎません。

霊学は、
通常はそのような「不思議な思い」や
「信仰」の対象でしかないことを
「考察」の対象にしようとするのです。

そのとき、
「運命」という「あるかないかわからないもの」に対しても、
まずその「作用」に気づくところから、始めるわけです。
その際、シュタイナーは、
霊学が運命を考察する場合は、
「運命とは、こういうものだ」という一般論ではなく、
具体的な誰かが体験した具体例に即して考えることが重要だと
言っているわけです。

そして、
「ああ、ここには運命的な何かがある」と感じられる体験があったとき、
その体験だけをみるのではなく、
その体験が、その人の人生全体にとってどういう意味を持っているか、
というところに目を向けることが大切なのです。

つまり、一つの体験という「個別」なものを
その人の「人生」という「全体」に関連づけて見るということです。

たとえば、若いころには、
血気盛んであったり、まだ「分別」が十分になかったりして、
後から見れば「おとなげない」行為をしてしまうかもしれません。

その行為だけを取り上げれば、
「若気のいたり」と言えるかもしれないことが、
実はそれによって、
その人のその後の生き方が決まってしまうこともあるわけです。

その時点では、
その若者は、その行為によって
自分の人生を決定するつもりはないでしょう。
ところが、それによって、
実際にその人の人生全体が大きく方向づけられるとしたら、
そこには「運命的」なものが働いているといえます。
その若いころの行為は
人生全体にとって大きな「意味」をもっているわけです。

では、その「意味」とはどういうものなのか、
その行為によって、人生はどのような影響を受けたのか、

そこに目を向けるところから、
「霊学の考察」が始まるのです。

最新の画像もっと見る