入間カイのアントロポゾフィー研究所

シュタイナーの基本的な考え方を伝えたいという思いから、日々の翻訳・研究作業の中で感じたことを書いていきます。

アントロポゾフィー指導原理 (43)

2008-10-21 15:43:41 | 霊学って?
43.
この霊的な現実化とは、人間が、死と新たな誕生の間で、自分自身をつくりあげることを意味する。人間は地上を生きるなかで、さまざまな「行為」を行った。今、死と新たな誕生の間で、人間はみずからの「本性」を自分自身の地上での行為の「写し絵」として作り上げるのである。そして、ふたたび地上に降り立ったとき、人間はこの「本性」にもとづいて、物質界を生きる自分の人生をつくりあげていく。運命のなかに働く霊性は、物質界のなかに現実化されていく。しかし、この現実化の前に、運命の原因となるものが、あらかじめ霊性の領域に引き戻されている必要がある。なぜなら、運命の作用は、地上における物質性の現れの結果としてではなく、霊性のなかから、つくりあげられていくからである。(訳・入間カイ)

43. In dieser geistigen Verwirklichung gestaltet sich der Mensch selber zwischen dem Tode und einer neuen Geburt; er wird wesenhaft ein Abbild dessen, was er im Erdenleben getan hat. Aus diesem seinem Wesenhaften heraus gestaltet er dann beim Wieder-Betreten der Erde sein physisches Leben. Das Geistige, das im Schicksal waltet, kann im Physischen nur seine Verwirklichung finden, wenn seine entsprechende Verursachung vor dieser Verwirklichung sich in das geistige Gebiet zurückgezogen hat. Denn aus dem Geistigen heraus, nicht in der Folge der physischen Erscheinungen gestaltet sich, was sich als schicksalgemäß auslebt. (Rudolf Steiner)


この43項では、
ふたつの「現実化」について語っています。
死後、ふたたび地上に生まれる前の、霊界での現実化と、
ふたたび地上に生まれてからの、物質界での現実化です。

ここで重要に思うのは、
人間の地上での行為が、霊界での「自分自身」になるということです。
「写し絵」というのは、
霊界で、その人に会ったとき、
その人の姿をみれば、その人が地上で何をやってきたかが見えるということです。
しかも、それがその人の「本性」になるのです。

それほどまでに
人間の「行為」は、
人間自身とつながっている、ということです。

ここでも、前に述べた
「内」と「外」の転換が前提になっています。
つまり、物質界における「内面」は
霊界における「外観」や「外界」になるということです。

そして、この地上で
一見、そとから自分に向ってくるもの、
あるいは、周囲の環境、
そして、そのなかで行為していく自分、
つまりすべてをひっくるめた自分の「人生」が、
生まれる前に、霊界でつくりあげた「自分自身」なのです。

だから、ひとりの人間の人生は、
霊界からみると、その人の本性そのものです。
そして、その人がどのように生きたかによって、
死後、その人がつくりあげる「本性」が変わってきます。
そして、その本性にもとづいて、
次の人生における運命のあり方が変わってくるということです。

そして、ここでシュタイナーが強調しているのは、
運命というのは、決して
物質界における「原因と結果」の関係ではない、ということです。

たとえば人生のなかでつらい目にあった人は、
前世で悪いことをしたから、その罰があたったのだというような、
そういう考え方ではない、ということです。

物質と霊性の関係、
内と外の絶えざる転換という見方からすれば、
この世で「現実化」するもの、
つまり、物質界の現実として
「外」から私たちに向かってくるものは、
いったん霊的な「現実」として、
霊界で、私たち自身がつくりあげた「本性」にもとづくものです。
その「本性」にもとづいて
つくりあげられていくのが、この世の現実なのです。
そういう意味で、シュタイナーは
「運命のなかに働く霊性」という言い方をしているわけです。

この霊性のなかには、さまざまな叡知が込められています。
自分自身の人生をふりかえるだけでも、
不思議なめぐり合わせや、簡単には理解できない出来事がたくさんあります。
そのような複雑な人生をつくりだしていくだけの知性というか、
叡知にみちたものが「霊性」なのです。

単純に、前世はこうだったから、今生はこうなる、
というのは、実のところ、物質の次元しか見ていない発想です。

一回の地上生と、その次の地上生との間には
「霊界での生」があり、
そこで「霊的な現実化」が行われている。

そして、そこで現実化された霊性が
地上の運命のなかに働いているのだから、
本当に運命を理解しようとすれば、
「かつての物質的な現実の結果としての運命」ではなく、
霊性のなかから生み出される運命、という考え方が必要になる。

この43項はそのように言っているのだと思います。

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1 コメント

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Unknown (shouko)
2008-10-24 09:32:46
この項でいう、「叡智」が、人智を超えた大きな何かの働きと捉えると、最近「ハワイ」の言の葉の意味を知る機会があり、
ある一つの言の葉との一致が、私の中で起こってしまいました。
この生きとし生けるもの総てに働く「叡智」、もしくはエナジーを、KA.I( カイ)とハワイでは呼ぶそうです。
なぜかコメントしたく・・意味も、意図も動機もありません、
顕在意識上では。
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