ご存知、京都建仁寺には俵屋宗達が描いた「風神雷神図屏風」(国宝)や海北友松の襖絵など文化財が多数所蔵されている。それらの文化財や禅寺としての環境に魅せられ日々多くの観光客は訪れている。
さらに、建仁寺にはもう一つ絶大なる目玉がある。本尊である釈迦如来像が祀られている法堂の天井に描かれている、小泉淳作氏(1924~2012年)の畳108畳分の「双龍図」は圧巻である。
禅寺は、仏教芸術や美術などの文化財と深く関わり寺院の権威や認知向上を図ってきた。禅寺大本山として建仁寺も長い歴史を刻み日本の仏教文化の礎になり仏教界を支えている寺院のひとつであるのは言うまでもない。
その建仁寺の塔頭である「西来院(せいらいいん)」が、この度の春の特別公開でちょっとした注目を集めている。前回 “蘭の寺” として歴史を少し紹介したが、今回は、蘭渓道隆師の750年遠忌記念を迎えるのを機に、未来の同院の新たな歴史を創造させる未来の文化財が公開されている。
本堂には本尊である地蔵菩薩と、同寺を創建した蘭渓道隆坐像が安置され、正面には美しい枯山水庭園「峨眉乗雲(がびじょううん)」が広がる。その本堂の天井横13m、縦6mのサイズに、日本でみる龍図とは明らかに異なる白い龍が2頭描かれている。幻想的で眼光が鋭く、どことなく妖艶な表情の白龍が同寺院の守護神として歴史を刻んでいくことだろう。
また、本堂の東面には眩しいばかりの金屏風「唐獅子図屏風」が飾られていた。こちらも白龍と同じく日本画とは異なる、どこか愛嬌のある獅子図が金地に墨一色で描かれている。遠目で六曲一双の全体を観るのも、また左右の獅子を近くから一体ずつ観るとさらに迫力が増す。
白龍にしても、金地の獅子も中国の古典墨画を想像させる雰囲気を感じさせる。これらを描いたのは、写真家、画家として、またマルチアーティストとして世界を舞台に活躍する「陳漫(チェンマン)」という中国人アーティスト。陳氏は、この西来院を創建した中国人僧侶・蘭渓道隆師を想いながら日本の仏教美術の新たな歴史を刻む作品として天井画と屏風絵に取り組んだのではないだろうか。
後の西来院の、未来永劫まで通じる大きな文化財になるはずである。
天井画「白龍図」(陳曼・中国人アーティスト)
金地屏風「唐獅子」(陳曼・中国人アーティスト)
文・写真/ 渡邉雄二
#建仁寺 #建仁寺派塔頭 #西来院 #春の特別公開 #白龍 #天井画 #獅子図屏風 #中国人アーティスト #陳漫 #未来へつなげる文化財
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます