巡礼を楽しんでいる人が実に多い。とくに関西・四国・中国地域の人たちが多いようだ。仏画曼荼羅アートに通っている人の中にも巡礼進行中という人もいる。
巡礼は世界各国、各宗教ともに通常に行われている宗教行事のひとつである。ただ日本は、非日常を楽しむ旅行のひとつとして、お礼参り、祈願参りを聖地・聖域である寺院を巡り楽しんでいる。“心の旅” としてとくに四国巡礼を行う人が目立つ。その他にも、関西では西国観音巡礼(三十三箇所)や新西国巡礼(近畿4県・三十三箇所)などがある。
空海ゆかりの地である四国八十八箇所巡りは、その中でも人気の巡礼地である。関西からでは旅行会社の企画で1泊、2泊で第一番所から順次行われている。
四国巡礼は、空海の入定後に修行僧や修験者らが空海の足跡を辿って遍歴の旅を始めたことが今に続いている。時代が経つにつれ、四国全体を「修行の場」とみなすようになっていった。室町時代にこれが庶民にも広がったと云われている。
先日、西宮の神呪寺を訪ねた際に、石段を上がっている途中で読経が聞こえてきた。僧侶たちの日常のお務めかと思いつつ石段を登り切り、本堂に目を向けると一人の男性が本尊の須弥壇に安置されている如意輪観音(秘仏)に向かっての読経である。かれこれ半時間は経つが見てのとおり(写真)、背に長い袋のようなものを掛けてただただ読経が続いた。一般の参拝者のように見えるが、思いを遂げる祈願の祈りが読経から伝わってきた。
読経が終わり、その方は受付で御朱印をいただいておられた。見ると大きな掛け軸の中は各寺院の御朱印で埋め尽くされていた。真ん中に観音菩薩像が描かれその周りが、西国と新西国巡礼の証の御朱印だった。
それが終わり、その方と話す機会があった。
「関西エリアなので要所要所は電車で行きますが、できるだけ歩いて巡っています。まだまだ残っていますので、仕事の合間にできるだけ。なにせ元気なうちに廻りたいと思っています」と。
非日常を求めてではない。修行の一環だろうか。そのようにも見えないが、ただただ感謝と祈願の巡礼なのだろう。真剣に取り組まないとなせる業ではない。人と出会うたびに刺激をいただき教えていただくことばかりである。
文・写真/ 渡邉雄二
※写真に登場していただいている男性ならびに神呪寺の和尚には了解を得て掲載しています。
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