室内楽の愉しみ

ピアニストで作曲・編曲家の中山育美の音楽活動&ジャンルを超えた音楽フォーラム

ベートヴェンブラームス

2009-11-04 21:39:29 | Weblog
バイオリンの小笠原伸子さんの『サロンでバイオリン協奏曲を聴くシリーズ』の伴奏役をずっとご指名いただいております。

今日は、小笠原さんが「永年の夢だった」という《ベートヴェンブラームス》の日でした。
つまり、ベートヴェンのバイオリン協奏曲を演奏して、15分の休憩の後、ブラームスのバイオリン協奏曲を続けて演奏したのです。

「ふーん、それがどーした?」と思われるなら(誰も思わない…)どんなもんか、一度やってみんさい!(…ってケンカ売るなー

ベートヴェンのピアノ編曲版スコアが35ページ(ペータース版)。ブラームスは51ページ(シャーマー版)です。

「ふーん、それがどーした?」と思われるなら・・・、いや、まあ、ピアノの方はまだ、さほど大したことはありません。

それより、ソリストは暗譜で、この大曲2曲を弾き切るのですから、これはもう、大変なことです。

しかも、どのカデンツァも即興で弾いていました! これもなかなか出来ない、大変なことです。リハーサルの時も毎回変わるので、カデンツァが終わって戻ったのがわからなかったり、「帰って来たか?』と思ったたら通り過ぎて行かれた時もありましたが、本番までには帰還状況が分かるようになりました。

コンチェルト(協奏曲)の伴奏は、試験やコンクール、オーディションなどでは、曲全体を弾くことはまずありません。序奏、間奏、後奏、どれも大幅カット。ソロ楽器が演奏し始める殆ど直前から弾いて、間奏は飛ばし、おしまいもソロ楽器が終わったらチャン、チャン、はい終わり…というのが普通ですが、この『サロンで聴くシリーズ』では、端から端まで、オーケストラ部分をカットすることなく、全部弾きます。

でもね、これが愉しいんです。ティンパニになったり、弦楽器群のピチカートになりすましたり、オーボエのソロを弾きつつオケの様々なパートを拾って弾いたり、フル・オーケストラのテュッティになったり、ファゴット2本のつもりになったり、ホルンの合いの手を入れたり・・。

やればやるほど、「いい曲だー!」 二人で、何度そう言い合ったことか。

小笠原さんは高校生の頃に、アイザック・スターンやシェリング(たぶん)が、オーケストラ伴奏でベートヴェン&ブラームスを続けて演奏したのを見て、「いつかやりたい!」と思ったのだそうです。

天に向かって神々しいほどの《真理》を謳うベートヴェン。地底までえぐるような大きなウェーブで《情念》を詠うブラームス。スタイルの時代が当然違うのに、ブラームスがベートヴェンのバイオリン協奏曲を踏まえて作曲したのは明らかで、ちょうど「ブラームス交響曲第1番はベートヴェンの第10番だ」と言われる関係に似ています。コンチェルトというより、シンフォニーを弾いているような気分でした。 ホント、名曲だ!

小笠原さん、お疲れさまでした。
そして、合わせて80分も聞かされたお客様たちも、お疲れさまでしたー!