自衛隊のイラク反戦運動監視に抗議し、情報収集活動の即時停止を求める声明
2007年6月13日 市民の意見30の会・東京
自衛隊がイラク反戦運動を敵視し、情報保全隊による監視と情報収集を続けてきた恐るべき事態の一端が、6月6日、日本共産党の発表によって明らかにされました。
私たち「市民の意見30の会・東京」は、この自衛隊の行為に強く抗議するものです。
今回、明らかになった資料は「情報資料について」と題する陸上自衛隊・東北方面隊情報保全隊が作成した文書と「イラク自衛隊派遣に対する国内勢力の反対動向」と題する情報保全隊本部(東京・市ヶ谷)が作成した文書です。前者は2004年1月から2月まで、後者は2003年11月から2004年2月までのものとされています。しかし情報保全隊は2003年3月、米英によるイラク侵略が始まる時期にそれまでの調査隊を改編して設立されています。同隊による監視・情報収集がいつ始まったかは明らかになっていませんが、上記の資料がこれまでに作成された資料のごく一部にすぎないことは容易に推察できます。しかも防衛庁長官(当時)直轄の諜報部隊として設立された情報保全隊は、陸海空3自衛隊に設置されているのですから、今回明らかになった事態はまったく氷山の一角と断ぜざるを得ません。私たちは防衛省・自衛隊に対し情報保全隊本部が収集したすべての資料を公開することを要求します。
今回の暴露は、自衛隊がイラク反戦運動をいかに恐れているかを明らかにしました。陸上自衛隊はイラクから撤退しましたが、航空自衛隊はクウェートを拠点に米軍支援の輸送作戦をイラクで拡げています。また海上自衛隊はアフガン侵略を続ける米艦隊への洋上給油兵站(へいたん)作戦を続けています。そのような戦争荷担を止めさせる努力は日本国憲法の前文と非武装・不戦を平和立国の原理と規定した第9条に基づくものであり、私たちは自衛隊が反戦運動を敵視して憲法違反の情報収集を続けることを即時停止することを要求します。
明らかにされた資料は、自衛隊がイラク派兵反対運動を「反自衛隊」と決めつけて監視・情報収集を続けてきたことを示しています。監視の対象は「反自衛隊」とみなされる300を超える団体と個人に及び、私たち「市民の意見30の会・東京」の防衛庁(当時)に対する申し入れ行動も記述されています。さらにマスメディアの取材や地方議会によるイラク派兵反対決議までも敵視されています。このような自衛隊の姿勢は戦前の特高警察を彷彿とさせ、日本国憲法が保障する思想・表現の自由、集会・結社の自由、報道の自由などの基本的人権を侵害するものといわざるを得ません。
沖縄の新基地建設反対運動を威嚇・恫喝するために艦砲を備えた掃海母艦「ぶんご」が派遣されたとき、久間防衛大臣は法的根拠を説明できませんでした。今回明らかになった人権侵害についても「法に触れることではない」と強弁し諜報活動の継続を示唆しています。
「ぶんご」の沖縄派遣について、私たちは本年5月19日の抗議声明で「ことの本質において治安出動の性格を帯びている」と指摘しました。今回氷山の一角が露呈したこの事態も単なる監視を目的とするものではなく、情報収集は治安出動の際に使われる資料作成のためではないかと疑わざるを得ません。機密文書の暴露で周章狼狽した久間防衛大臣が、問題の資料が陸上自衛隊のものであることを認めないまま、収集した情報は「3週間で破棄していることになっている」とのべたことは、むしろ私たちの疑惑を深めるものです。
安倍首相がどこまでも9条明文改憲を呼号しつつ、他方で解釈改憲による「集団的自衛権の行使」を追求する姿勢を私たちは深く憂慮します。「戦争ができる国」作りは国内での反戦世論の抑圧を重要な要件とします。今回暴露された事態は、イラク派兵が強行されるなかで、そのような戦争国家化が秘密裏に進行していたことを私たちの眼前にさらしました。私たちは、自衛隊の人権侵害を止めさせるため、志を同じくする反戦市民運動の仲間たちと共に活動を続けます。軍事力によらない平和を築くため一層力を尽くします。