ハーバード・ケネディスクールからのメッセージ

2006年9月より、米国のハーバード大学ケネディスクールに留学中の筆者が、日々の思いや経験を綴っていきます。

ニューオリンズ(初日)

2007年01月07日 | ニューオリンズ復興ボランティア

 

 明け方4:30に起き、6:45発の飛行機で飛ぶこと7時間。乱気流の影響で予定より1時間半遅れて到着したニューオリンズは、厚い雲で覆われとにかく蒸し暑い。

 日本語の案内表示も目立つニューオリンズ国際空港では、今回の機会をケネディスクールの学生に紹介し、申し込んだ学生とその家族・友人の計9名をオーガナイズしてくれたエレンと合流し、ボランティアチームの拠点にタクシーで向かいます。

 曇天の中を突き進み、高速道路越しに見えてきたのは、当時市民の避難所としてカトリーナのニュースでは何度も取り上げられた、アメリカンフットボールの競技場「スーパードーム」。いよいよやって来たな、という気持ちが高まります。

 ちなみにニューオリンズ国際空港は、ハリケーン被災後しばらくの間、負傷者・病人を収容し応急手当を施す病院となっていました。当時は、物資や医薬品が絶望的に不足する中、次第に状況が悪化する負傷者や患者の方々がベンチや手荷物受取り用のレーンに敷き詰められ、正に阿鼻叫喚の野戦病院の様相を呈していたと、当事緊急支援チームに所属していた日本人医師の方から聞きいていましたが、今はすっかりリニューされて落ち着きを取り戻しています。

  

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 今回、ハーバードの学生とその友人や家族9名をボランティアとして受け入れるのはHans on Networkというアトランタに本部を持つNPO。全米にネットワークを持ち、災害復興や教育を中心に、米国内及び中国・アフリカ等の諸外国で年間に約5万ものプロジェクトを展開し、50万人以上のボランティアを組織化する巨大なNPOです。このNPOが、ハリケーン被害にあったニューオリンズの復興を重点的に進めるべく、Hands on New Orleansという支部をニューオリンズ市内に構えている訳です。

 事前に知らされていた拠点の住所を頼りにタクシーでたどり着いた先は古びた教会。

   

 いったいどこが入り口なのだろうとグルグル回っていると、裏口付近にどうやらそれらしきものを発見しました。    

   

 入り口が施錠されてて入れない・・・っと二人の女の子が談笑しながら出てきたところを入れてもらいました。3人で中に入ると、ボランティアコーディネーターのアミリアが「待ってたわ!来てくれてありがとう!」の言葉で歓迎してくれました。

 彼女の話では、現在、全米各地から集まった約100名のボランティアがこの教会を拠点として活動し生活を共にしているとのこと。早速僕らも、これから5日間暮らすための“部屋”を確保します。

  

 ご覧の通り、体育館のようなスペースに二段ベットが敷き詰められただけの、正にプライバシーゼロの空間で寝食を共にする生活。学生時代の合宿を思い出します(って今も学生か・・・)。このBunkと呼ばれる二段ベットの一つ一つが個人のスペースとなります。できれば寝袋を持参するように言われていたため、てっきり板の間に“雑魚寝”かと思っていた僕らにとっては、一応マットが敷かれているベットは予想を上回る好条件。

 ここで、ハーバードの他のメンバーと合流しました。僕達夫婦二人に加え、グループ・リーダーでパブリックヘルススクールの博士課程で学ぶエレン、ケネディスクールのクラスメートでアメリカ陸軍出身のトニー、パブリックヘルススクールの修士課程で学ぶヘイジー、ケネディスクールのOGで今はニューヨークの都市計画局で働くケイト、ボストンでバンド活動をしているアニュージ、カナダ人の外科医エディ、携帯電話会社に勤めるジョシュという、多彩で、やる気満々の9名のグループです。

 17時半から始まった全体ミーティングでは、レジュメが配布され、共同生活を円滑に進めるとともに、安全第一でボランティア作業を行うためのガイダンスがNPOスタッフの女性からありましたが、この内容が中々面白い。

 まずシャワー。100名近いボランティアがいるにも拘らず、男女共用の個室シャワーが3つしかないため、一人4分を厳守せよ!とのこと。

 さらに・・・

 「みんな知ってるかもしれないけど、いまニューオリンズはとっても危険です。特にこの付近は犯罪発生率がとても高いの。この教会はFirst Streetにあるけど、一ブロック先のSecond Streetでは、先月だけで7件の殺人があったわ。だから、扉を開けても絶対に右には行かないで。左に行くこと!お願いね。あと、夜間に外出するときにはこのシートに名前と連絡先を必ず書いて必ず3人以上で行動して下さい。」

 ・・・

 こんな刺激的なガイダンスを受けたのは初めてです。「やるな!」と言われると、ついやりたくなってしまう精神年齢の低い僕ですが、今回ばかりはとっても素直に「はい、右には行きません」と思ってしまいました。

 他に驚いたのは、犯罪多発地域での厳しい肉体労働にも拘らず、100名のボランティアのうち約半分が20代前後の女性であること。厳しい状況のニューオリンズですが、NPOスタッフのオーガナイズの巧みさもあってか、少なくともこの教会の中は、和気藹々としたポジティブな雰囲気が漂います。

 消灯は22:00で起床は7:00。8:00から現場に向かい16:00までボランティア。このスケジュールもテニス部時代の合宿を思い出させます。

 さぁ、明日からはいよいよ現場です。


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2 コメント

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ご近所さんですね (ganye8)
2007-01-12 14:08:49
Bewaadさんのトラックバックでたどりつきました。

実は私、この教会から0.3マイルのアパートにハリケーン前から住んでおります。幸運にもアパートは無傷ですが、1ブロック裏に行けばいくらでもハリケーンの”傷跡”が拝める場所です。

ご心配の治安ですが、車で移動している限りはそれほど心配しなくてもいいと思います。しかし、さすがに深夜の徒歩での移動は、バーボンストリート以外では避けた方がよろしいかと思います。アップタウンでもやはり射殺・発砲事件が増えつつありますので。

ちなみに我が家の近くでは、半年前に10代の若者5人が同時に射殺される事件がありました。時間帯は午前4時頃だったので、こういう事件に巻き込まれないようにする必要はあろうかと思います(事件の原因は麻薬取引のもつれという噂もありました)。

お恥ずかしいことながら、私のようにニューオリンズに住んでいる人間よりも、管理人様のように州外からボランティアに駆けつける学生の方が、よほど復興の礎となっているように思います。私も残り少ない留学生活で少しでも貢献してから帰りたいと思いました。

ボストンに戻られてからもぜひニューオリンズとの関わりを持っていただければ幸いです。
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>ganye8さん (ikeike)
2007-01-16 15:55:52
はじめまして。コメント有難うございます。本当に“ご近所”と言うことでびっくりですね。ganye8さんのブログも拝見させてもらいました。貴重な情報盛りだくさんなブログを読み、もっと早く存在を知っていれば、色々ニューオリンズについて“予習”が出来たのに!と思ってしまいました。
 そういえば、昨年にはお子さんもお生まれになったとのこと、おめでとうございます。
 犯罪の多発や復興の遅れなど、色々ご苦労も多いかと思いますが、御自身の研鑽とニューオリンズの一日も早い復興に向けて、頑張ってください。
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