ハーバード・ケネディスクールからのメッセージ

2006年9月より、米国のハーバード大学ケネディスクールに留学中の筆者が、日々の思いや経験を綴っていきます。

Reunion

2007年01月30日 | ニューオリンズ復興ボランティア

 

  様々なものを見聞きし、考え感じることの多かった冬休み。その最後の日曜日となった一昨日(1月28日)、ニューオリンズ復興ボランティアでともに汗を流した仲間たちとリーダーのエレンの家で再会しました。

 このReunion(再会の集い)の目的は3つ。一つはニューオリンズでのボランティアをオーガナイズしてくれたNPO、Hands on New Orleans(HONO)に向けた、僕たちの経験を踏まえたSuggestion Paperをまとめること。そして、彼らが今後も継続して復興活動に取り組む助けになるよう、ハーバードでFund-Raising(寄付金集め)活動をするための計画を練ること。3つ目はHBO(Home Box Office:アメリカのケーブルテレビ)が昨年夏に4回シリーズで放映したドキュメンタリー「When the Levees Broke(堤防が壊れた時)」を見るということです。

 エレンの手料理を皆で楽しみながら、既に半月ほど前となったニューオリンズでの経験について振り返ります。皆の話を聞いていて改めて感じたのが、Hands on New Orleans(HONO)のボランティアオーガナイズのスキルの高さ、とくに安全面への行き届いた配慮についてです。8回シリーズで綴ったボランティア体験記でも詳細に記したとおり、今回僕たちが取り組んだ修復作業は極めて危険性の高いものでした。思わぬ落下物に頭をぶつけたり、錆びた釘を踏み抜いたり、うっかり腰を痛めたり(苦笑)、そして何より、すさまじい量の粉塵が飛び交う作業現場。こうした状況下でボランティアの中でけが人や、ましてや死人が出たら・・・縁起でもありませんが、十分な備えと緊張感がなければそうした最悪の事態が容易に発生しかねない状況でした。

 その点HONOは、企業とうまく連携をとって多数のボランティアに確実にいきわたる量の作業スーツやマスク、ゴーグル、ヘルメットを用意していたほか、ボランティアへの事前の配布資料の中や、毎日のミーティングの場のおいて、“耳にたこ”ができるほど安全面の注意がなされていました。災害復興に限らずボランティア活動が継続して行われるためには無事故であることは必須条件である、この点をHONOは確実に認識し実践していたように思います。一方、仲間の話では、近くで活動していた他のボランティア団体が粉塵専用の呼吸器ではなく、風邪をひいた時につけるただのマスクだけをつけて同じような作業をしていたそうです。安全面への万全な備えをするだけの予算的余裕がないのならば、規模を縮小することを考えるべきだ、というのが皆の一致した意見でした。

     

 一方Suggestionとして、僕のほうからボランティアの士気を高めるためにHONOスタッフ側が取り組めるのではないかと思われる事項をまとめたペーパーを皆に提示しました。

 Suggestionのポイントは一言で言えばボランティアとHONOスタッフ間のより一層の情報共有です。例えば、「これまでHONOは幾つの家の修復に取り組み、そのうち幾つが家の住民がニューオリンズに戻ってきて生活を始めているのか?」といった全体的な進捗状況に関する情報や、修復作業の対象となる家を選択する際の基準等、スタッフ側が持っているであろう情報にボランティアもアクセスできる状況を作っておけば、「キツイ・キタナイ・クサイ」仕事をするボランティアの士気もより一層上がるのではないでしょうか。また僕自身の経験では、自分が作業をしている家の住民の方と、直接的であれ間接的であれ結びつきを実感できると、より一層やる気が出たものでした。ですから、例えばHONOが被災者から家の修復の依頼を受ける際、彼らからボランティアへのメッセージをもらったりしてくれれば、被災者とボランティアとのつながりもより深まるように思います。

 さらに話題はFund-Raisingの話へ。2月後半にニューオリンズで開催される一大カーニバルMardi Gras(マルディグラ)に併せ大学周辺で今回のボランティアの報告会をかねてパーティを開き、その際の“上がり”をHONOに寄付する方向で役割分担を決めます。何だか大学時代の学園祭を思い出させるノリです。

 一通り話が終わると、ようやく今日の本題。ハリケーンカトリーナ被災直前から去年の夏までのニューオリンズの様子を、現地の被災者の声と、ニューオリンズ市、ルイジアナ州、そして連邦政府の責任者の言動とをコントラストで描きながら綴るドキュメンタリー「When the Levees Broke(堤防が壊れた時)」。次々と画面に現れる見覚えのある風景たち。何よりショッキングなのは、ハリケーン直後の映像ではなく、それから2週間ほどがたった時のニューオリンズ市街の様子。町を支配する黒ずんだ水に死体が浮かび上がったまま流れていく・・・あるいは市街の中心部の大通りの真ん中に放置された死体が5日経ってもそのままになっている・・・

 頭を殴られるような映像の数々が続くこのドキュメンタリーを4時間!ぶっ続けで見通したため、終わった後はみんな一様にグッタリと沈黙。。。。しかし、一人、またひとりと感想を述べていくと、結局「一体何故、アメリカでこのような“人災”が起き、そしてその被害が放置されたままになっているのか」という、皆の頭にこびりついて離れないテーマについての議論が沸騰することになります。

 結局お昼過ぎから始まったReunionが解散したのは夜の9:00。忘れられない経験を共有した大切な仲間たちと過ごした冬休み最後の日曜日でした。そして、いよいよケネディスクールでの春学期が始まろうとしています。


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2 コメント

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Unknown (hbs08)
2007-02-06 00:44:51
先週の金曜日のksg-hbs交流会はお疲れ様でした。政策立案プロセスとコンサルティングの仕事のプロセスについていろいろと話ができて楽しかったです。ブログを同級生から教えてもらい拝見しています。私も書いていますのでお時間があるときに見てみてください。ではお互い頑張りましょう。
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>hbs08さん (ikeike)
2007-02-17 08:27:01
 コメント有難うございます。あと先日はこちらこそ有難うございました。何だかHBSの皆さんからパワーをもらった気がします。
 ブログも「お気に入り」に早速登録し読ませてもらっています。非常に濃い内容で、特に「ブログを書く意味」の記事は非常に共感しました。
 今後ともよろしくお願いします。
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