白石勇一の囲碁日記

囲碁棋士白石勇一です。
ブログ移転しました→https://note.com/shiraishi_igo

DeepZenGo、引退

2018年04月07日 23時59分59秒 | 日本棋院情報会員のススメ
皆様こんばんは。
本日は電王戦FINAL第3局が行われました。
DeepZenGoの最後の対局相手は、趙治勲名誉名人です。



1図(テーマ図)
DeepZenGoの黒番です。
白△の挟みに対し、黒Aのコスミなら石の形としては自然に見えます。
すると、白はBから左右を連絡するでしょう。
その進行の実戦例もありますが、黒が不満とみる棋士が多いです。
そこで、黒Bと渡りを止めるのかと思いきや・・・。





2図(実戦)
黒1のコスミツケ!
これも渡りを止める目的ですが、形が良くないので普通の棋士の発想には無い打ち方です。
これには驚きましたね。





3図(参考図)
例えば、黒1、3のような手は推奨されますが、これも黒の形が悪いことには変わりません。
しかし、白の根拠を奪うことの価値が高いので許されます。

では、実戦のコスミツケにどんなメリットがあるかと言えば、それはスピードです。
形が悪いマイナスよりも、攻めのスピードが上がるプラスの方が大きいということでしょう。
気分的には、あまり真似したくない手ですが・・・。





4図(実戦)
形が悪い打ち方も、DeepZenGoの腕力があれば有効ということでしょうか。
黒△まで進んだ局面では黒が打ちやすそうです。
しかし、まだ大差ではないはずです。

ところが、実戦はここからいっぺんに形勢が傾き、白が投了に追い込まれてしまいました。
棋譜だけ見れば、趙名誉名人が短気を起こしてしまった、ということになるのでしょう。
ただ、その理由を考えると、相手がDeepZenGoだったということも無視できません。
相手の強さがよく分かっているだけに、少しでも頑張らなければ、という気持ちが強くなってしまったのではないでしょうか。


本局をもって、DeepZenGoは引退しました。
一般的な言い方では、プロジェクト終了ということになりますね。
ただ、DeepZenGoはZenが名前を変えたものであり、Zenそのものが消えてなくなるわけではありません。
今後はユーザーインターフェイスの改良に取り組まれるようです。
状況によっては、また棋力向上を目指すこともあるのかもしれませんね。

いずれにしても、2年間お疲れ様でした。
この2年間で、囲碁界はもちろん、他の世界にも大きな影響を与えたと思います。