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律宗

2023年03月12日 | 仏教各宗(一)(南都六宗)

第一章 仏  教  各  宗   からの転載

   一、 南都六宗 

     律 宗(現在の宗派)

[宗祖]鑑真(六八八〜七六三)

[高祖]道宣(五九六〜六六七)

[本尊]梵網経の教主、盧舎那仏

[経論]四分律・梵網経・法華経・道宣の著述

[総本山]唐招提寺 奈良市五条町一三の四六

[寺院教会数]二八

[教師数]一六

[信徒数]二三、八〇〇

 

【沿革】

 日本に伝来した律宗は南山律宗であり、梵網経の盧舎那仏を本尊とし、『四分律』、梵網経、法華経と、道宣の著述を所依とする。戒律を持つことによって悟りを得られるとする宗旨である。

 中国の唐代に道宣が南山律宗を立てたことに始まり、道宣の孫弟子である鑑(がん)真(じん)によって日本に伝えられた。

 天平勝宝六(七五四)年、六度目の渡航でようやく来朝を果たした鑑真は、聖武上皇の勅請を受けて東大寺に戒壇院を設け、上皇をはじめとする多くの人に戒を授けた。日本には戒律を授ける正式な戒壇がなかったが、以後、この戒壇院において公式の授戒が行われるようになった。

 天平宝字三(七五九) 年、鑑真は朝廷から新田部親王の旧宅を賜り、そこに東大寺を建立して止住した。以後、唐招提寺は朝廷から篤く外護され、戒律の根本道場として栄えた。

 また同五年には、筑紫(福岡県)観世音寺、下野(栃木県)薬師寺にも戒壇が設けられた。東大寺を含むこれらの戒壇は「日本三戒壇」と称され、以後、僧尼の受戒(授戒)はすべて、この三ヵ所で行われるようになった。

 平安時代になると、伝教大師最澄が天台宗を弘め、法華一乗の教えに基づいた大乗戒を主張して、それまでの戒を小乗の戒律として退けた。そして最澄滅後、比叡山に円頓戒壇が建立され、また弘法大師空海の真言宗が興隆したことも加わって、律宗の勢力は次第に衰えていった。平安末期には実範、鎌倉時代には覚盛や西大寺の叡尊らが出て律宗の復興が計られた。

 これら東大寺戒壇院、唐招提寺、西大寺を中心とする奈良地方の律宗を南京律(南都律)と呼ぶのに対し、鎌倉時代の俊芿が中国宋代の南山律宗を学んで京都に創建した泉涌寺を中心とした律宗を北京律と呼ぶ。

 以後、唐招提寺・東大寺戒壇院・泉湧寺・西大寺が律宗の四本山となったが、このうち西大寺は、空海を高祖、叡尊を宗祖として戒密双修を唱え、のちに真言律宗を立てた。

 また、江戸時代には、天台宗や浄土宗のなかから『四分律』を取り入れた安楽律、浄土律、正法律などが興ったが、時代とともに衰退した。

 明治になると、政府は律宗の独立を認めず、真言宗に組み入れたが、のちに律宗として独立し、現在に至っている。

 

【教義の概要】

 律宗は『四分律』に説かれている二百五十戒、三百四十八戒等の戒律を持つことにより修行を進め、悟りが得られるとする宗派である。 

 

<化教・制教の二教判>

 道宣は、一大仏教を化教と制教に分ける教判を立てた。 化教とは教理を説く経論を言い、制教とは仏弟子の守るべき戒行を明らかにする戒律を言うとする。道宣は、この制教を宗の本分として律宗を創始した。

 化教には性空教・相空教・唯識円教の三種があるとする。性空教とは人法の性空を説く小乗の教えで阿含経や『摩訶僧祇律』『四分律』『倶舎論』『成実論』に説かれるもの、相空教とは「般若皆空」を説く大乗の浅教で般若経等に説かれる教え、唯識円教とは性相円融を説く大乗の深教で法華経や涅槃経等に説かれる教えであるとする。

 

<分通大乗説>

 律宗の所依の教典である『四分律』は本来、小乗の教典であり、その内容は性空教に当たる。しかし、道宣は一切諸行を戒行と見て、定慧も戒に含まれるとし、『四分律』はその一分が大乗の深教である唯識円教に通ずるものであるとした。これを「分通大乗説」と言う。

 これらの道宣の教えを基に、律宗では『四分律』で説く小乗の戒律を、大乗戒である『瑜伽師地論』の摂律儀戒(戒を守り、非行・悪行を防止する)・摂善法戒(進んで善を行う)・摂衆生戒(衆生を利益する利他行)の三聚浄戒に配当している。

 律宗は、この大乗の精神に立って身口意(行動・発言・精神)の三業にわたり、戒を持(たも)ち、止悪、修善、回向衆生(衆生の幸せのために積極的な導きをすること)を行じていくことを教旨としている。

 

【律宗の戒律】

 律宗では、戒律は身口意のすべてに及び、以下の戒律を守り実践することが、悟りを得る道であるとしている。

一、五戒・・・不殺生戒・不偸盗戒・不邪婬戒・不妄語戒・不飲酒戒で、在家信徒が守るべきものとされる。

二、八斎戒・・・五戒に、不香油塗身戒(化粧したり装身具を身につけてはいけない)・不歌舞観聴戒(歌を歌ったり聞いたり、芝居をしたり見たりしてはいけない)・不高広大床戒(身体に心地よい、高く広く大きな寝床で寝てはいけない)を加えたものであり、さらに斎法としての不非時食戒(正午を過ぎてから食事をしてはいけない)を加える。これらは信徒が寺院において一日一夜だけ持つ戒であり、 修行日は毎月八、十四、十五、二十三、二十九、三十日(六斎日)に特定している。

三、十戒・・・八斎戒に不蓄金銀宝戒(財産を蓄えてはいけない)という戒を加えたもの。沙弥、沙弥尼(見習いの僧尼)が守るべき戒。

四、具足戒・・・比丘は二百五十戒、比丘尼は三百四十八戒という、 日常生活の細部まで規定した戒。