遺伝屋ブログ

酒とカメラとアウトドアの好きな大学研究者です。遺伝学で飯食ってます(最近ちょっと生化学教えてます)。

命を左右すること

2008-11-27 23:32:19 | BIONEWS
万能細胞からの精子・卵子作製認める 文科省学術審部会(朝日新聞) - goo ニュース
万能細胞であるからには精子や卵子も作成できる。このニュースは、その作成自体は文科省学術審部会が認めるとしたこと。不妊症や先天性難病の原因解明に役立つとして合意したそうだ。もちろん、いろいろ複雑な手続きが必要にはなるので簡単にできるってわけではないし、技術的にも簡単ではない。だとしても、そこで問題なのは出来た精子と卵子を受精させて人間を誕生させていいかというとそれはNO!まあ、常識的にそりゃそうなんだが、万能細胞から作られた精子と卵子で受精が行われても、それは有性生殖なのでクローンではないということは一般の人にちゃんと知らしめる努力はした方がいいと思う。マスコミに任せると文系の不勉強な自称有識者達が騒ぐだけ騒いでお終いってなことになりそうだ(有識者でもないミノさんやフルタチさんはもっと騒ぐだろうね)。彼らは言葉の意味を分からずに言葉を振り回す。意味よりもその言葉の響きやイメージを利用して感情的な刺激を振りまこうとするのだ。それが商売ってんだから、すんごくたちが悪い。
クローンというのは有性生殖を経ずに無性的にできた生物の遺伝的コピーのこと。精子と卵子が接合するなら有性生殖。これはちゃんとした交雑だ。人以外の生物に対してなら絶滅を防ぐために将来試みられるかもしれません。不妊治療に利用される可能性については医者じゃないので僕は分かりません。リスクがどれだけのものになるか誰にも分かりませんよね。だって、実験できないでしょ。日本人が絶滅しかけたら試されるかって? 朱鷺(ニッポニア・ニッポン)ほど日本人は貴重ですかね??

まじめな話、これは生命に対する倫理の問題。殺人が社会的に重い罪なのは、人口が一人減ったからではなくて、人の生命を第三者が勝手に左右したことに対する罪だから。勝手に人の命を奪ってはいけないのである。じゃ、『勝手に生命を与えてもいけない』という法も成り立つ。ところが、なんらかの技術で人為的に生命が誕生したとして、その子供にちゃんとした保護者がいて家庭が出来て、幸せな人生をおくったとしたら・・・倫理的には許されないことしても、その『親子』をどう裁くのか? 彼らはいったい誰に不利益を与えたというのか。いや、社会的には利益『人口増』を得ていることになる。ほんとにこれは『罪』なのか? そんなことを考えると思考がグルグル空回りするんだな。もちろん、技術的にリスクフリーにはならないだろうから禁止しておくにこしたことはないんだろうけど。
とにかくだ、『クローン』は怖いから、汚らわしいからいけないなんていう程度の低い論調に躍らされないで欲しい。クローンという言葉の意味は何で、そのどういうことが倫理的に問題なのかちゃんと思いを巡らして欲しいのですよ。そうすれば、(クローンではなくても)iPS細胞やES細胞からできた精子と卵子を受精させて人間を誕生させてはいけないってことにちゃんとたどり着くと思うのです。

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