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Chick Corea Akoustic Band / Alive! + 雑感

2019-06-08 12:57:48 | ジャズ




これが自分のjazzの入り口。
書くとおそらくものすごく長くなる(長い期間聴いてきたので話があっちこっちに飛びそう)ので今まで敬遠してましたが、最近の「Live」を聴いて感慨にふけってしまい、書いてみることにしました。


浪人時代、誰かに借りた浜田省吾を聴いていて、間奏にピアノソロがある曲を聴いて何故かピアノ主体の、クラシックでは無い音楽を聴きたいと思ったのがきっかけです。
調べているうちにジャズのピアノが邪魔な音がなさそうで今の求めるものにぴったりなんじゃないか、と思いその気付きに嬉しくなったのを覚えてます。
中学時代にフュージョンファンかつオーディオファンの同級生がいて、そのころフュージョン(The Squareとカシオペアでした)ばかり聴いてましたが、この時の流れとは別のきっかけですね。


レンタル屋に行き、ジャズコーナーのKeithのstandards vol.1とkenny drewの日本企画版と一緒に借りた。
イチオシのポップがあったのだと思う。

Kenny Drewは初めて聞いた瞬間からよく馴染んだのですが、この時は1、2回聴いてそれっきりに。
Keithはうなり声を含め、なにやら肉感的なドロドロしたものを感じ、これは聴いたらヤバいやつだなどと思ってしばらく放置したのでした。


Chick Corea Akoustic Bandについては、、、
スタンダードも何も知らない時だし、この音楽はどこを聴くのかさっぱりわからなかった。
ピアノの響きは独特で、時折かなり耳についた。
ドラムソロで曲が始まるなんてどういうこと?
謎だらけの音楽です。
しかし求めてた質感というか、音の塊であることは確かだった。


そしてバラバラな様でキメが合っているのが不思議だったし、
それ以上に観客の歓声や拍手が不思議だった。
その歓声を頼りに、この音楽には何かあると信じて聴き続けた。


はじめに消化出来たのはMorning Sprite。
おお、これはピアノのロックじゃん?のような感覚で熱狂しました。


次に同じノリのOn Green Dolphin Street。
ちなみに数年後に原曲を他のミュージシャンで知ってから戻ってきたときまた違った味わいがありました。


How Deep Is the Ocean?ではソロで上から下に下りていく長いパッセージが2回ほど出てくるのですが、
これがきっと「深い海」を表してるんだろうな、などとわからないなりに考えていたのですが、全く関係のない深読みでした(笑)。
しかし冒頭の美しいソロとPatitucciが入ってからのデュオ、エンディングに至るまで抑えの効いた本当に素晴らしい演奏。
好きになったのは後の方ですが、最終的にこのアルバムで一番好きなテイクになりました。
この曲はchick史上、再演数一番なんじゃないでしょうかね。色々表現しやすいんでしょうか。
Youtubeで更に素晴らしいテイクがあったのですが(まだあるかな)、
そのうち「How Deep Is the Ocean? Box」出してくれたら買います(出るわけないですが)。


ドラムソロで始まるため、何度かこの音楽を聴くのをやめようと思わされたHumpty Dumptyですが、やはりだんだん好きになってきます。
数年後、10年後と聞き返す度に発見があり、Chickのフレージングのアイディアの幅が半端ないことを気付かされました。
そしてWecklのソロの終わり方がたまりません。
カバーしにくい曲かもしれないですね。
ChickのオリジナルはChickの為にあるような曲が多いと思う。


ソロピアノも魅力のChickですが、Sophisticated Ladyのイントロは彼のソロの中でも屈指の名演だと思います。
ここでもアイディアの幅を見せますが、そのつながりの自然さと歌心、音の強さと繊細さ。
土台になっている語法が全く他のミュージシャンと違うのだと思うし、
アドリブとしての純度、選択肢の幅が桁違いで、未だフォロワーは皆無だと思っています。
イントロの印象が強すぎてその後のU.M.M.Gが終わるまでちゃんと聴いたことがありません(笑)


'Round Midnightもあまり聴きません。悪くないんですけどね。このアルバムはとにかく濃いから。


Hackensackが気持ちよくなってきたとき、ジャズへの興味が深まったことを覚えています。
でもはじめは「この人は高音があまり聞こえないのでは?」と思うほど、耳にキツかったです(笑)
でもこんな音楽もあるんだ、と面白い体験をさせてくれた曲です。


ボートラのLa Fiestaですが、これがすごくいいですね。
Akoustic BandはWecklのドラムもあってひとまわり大きな編成に感じられ、ピアノトリオの枠を超えた世界観が出るのが一番の特徴かと思います。
chickの引き出しの幅も一層広がって、とにかくスケールの大きな演奏になっていきます。
この曲に限らず3年後くらいにスタンダードやオリジナルを知った後に聴いた時に聞こえ方が変わりました。


そして、聴けば聴くほど味わい深くなる、という体験もこの作品が初。
消費しない音楽。そんなコスパの高い音楽があるなんて、と思ったものでした。


そこからはジャズにどんどんのめり込み。
しかし入り口がこの作品なので随分偏った趣向にはなりました。

ピアノのタイム感もかなりタイトでないと下手にしか聞こえなかったり。
ちなみにそのタイト癖を取ってくれたのは近年の復帰後のFred Herschだったりします。


予想通り話はどんどん横に広がりますが、特に感銘を受けたピアニストを挙げてみますと


Chick Corea(フォロワー皆無の音と世界観、音楽の音の強さ)

Bill Evans(ヴォイシングやインタープレイもそうですがそれ以前に群を抜いた一音一音の強さ、歌心、楽器の鳴り)

Brad Mehldau(異常なまでの優れたタイム感、拍をまたぐセンス、音の湿度感、音の鳴りなど)

Vladimir Horowitz(圧倒的な生命力、リズムの強さ、自身も言っているが悪魔と天使の同居。bud powellに似てると感じることがある)

Fred Hersch(繊維を編むような感覚の音のつむぎ。弾くことが目的ではなく音楽を成すことが目的と思わせるオリジナリティー)


ジャズを聴き始めて25年くらいということになりますが、こうやって見返しても本当に大好きなピアニスト(ミュージシャン)はポンポン出てくるわけではなかった。
その中でもChick Coreaは鬼才ともいえるけど、異才というほうがしっくり来る。


そしてそれこそが音楽が溢れれば溢れるほど貴重に思える才能。

幸福なことに今77歳ということで私の父より年上なのにバリバリ現役。

衰えが見え始めるのは90過ぎてからなんでは(笑)。

さらには私より長生きするのではなどと思えてきてしまう今日この頃。

これからも応援していきたいと思っています。




Chick Corea Akoustic Band / Alive!
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1.On Green Dolphin Street
2.How Deep Is the Ocean?
3.Humpty Dumpty
4.Sophisticated Lady
5.U.M.M.G.
6.'Round Midnight
7.Hackensack
8.Morning Sprite
9.La Fiesta


Chick Corea-piano
John Patitucci-bass
Dave Weckl-drums



1991年録音

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