音楽という食物

ジャズ系を中心に好きな音楽について

Pat Metheny/Orchestrion

2010-02-13 22:23:57 | ジャズ
これをはじめに見たわけですよ。


Pat Metheny - Orchestrion Preview



無人で動く楽器たち。光るボトル。

「美しい」「かっこいい」「おもしろい」「不思議」
と同時に感じてしまって、えへへへへへ?!という声になった。

Methenyがプロデュースした巨大オルゴール?
いやピタゴラスイッチか?



これが第一印象ですが、届いたCDを聴いてみるとこれが思ったより普通です。
普通っていうことがそれはそれで衝撃です。

「PMG(Pat Metheny Group)の新作は楽曲を忠実に再現するために正確に、抑揚を抑え気味で録りました」
って謳いだと結構分からないかもしれない。


それからいろいろ考えてしまったのですが、

「人と人の織りなす楽器を通じた会話を大切にするジャズメンが作った、その伝統に喧嘩を売りかねない作品」
とか。
「ここでのオーケストリオンとやらはもともと緻密なPMGの音楽にはピッタリで、むしろアドリブまで作りこめる部分は親分の一番欲しかったところなのか」
とか。
「PMGの演奏っぽく聴こえてしまった事実はどう考える?人間による演奏で出るはずの味は?僕の耳って?」
とか。


個人的には実際は聴いたものが全てで、自動演奏でも人が演奏するものでも良ければ良いんじゃないかと思います。
電子楽器だって打ち込みだって良ければいいんです。

しかし今のところPMG以上の何かってあまり感じられないんですね。録音がいつもより力が無いような気がして、それは演奏のダイナミックレンジのことなのかもしれないのですが、うーん、、、。

曲は最高に良いんですけどね。この音で聴こえる以外の情報が多すぎてクリアな頭で聴くのが難しいというのが正直なところ。

何となくこのオーケストリオンは正面からPMG再現に挑んだような内容に見えてしまう。
いや、ソロプロジェクトでもPMGみたいだから、彼の音楽は相当はっきりと理想が固まっているだけのことなんだと思いますが、、、。



だだし、それでも自分のこの作品に対する印象は好意的です。

話はそれますが、子供を楽に寝かしつけられないかなと思い、半年くらい前にオルゴールもののCDを何点か借りました。
その中に、「アンティークオルゴールの中にマイクをセットしてガチで録りました」的な本格的なものがあって、
それが寝かしつけるなんてとんでもない作品で、「怖えぇぇー」と言ってしまったくらい壮大かつ重厚なものでした。巨大な歯車の機械ならではの迫力がありました。



「あれを現代においてMethenyがプロデュースしたらこうなりました。あらら、すっかりPMG風ですね。お茶目だなぁMethenyは。」

っていうのが個人的なこの作品の位置付けです。

この作品に関しては聴いているだけだとかえって雑多な情報が多すぎる作品ですが、観たら超シンプルなんではないかと。

出来れば機械に頭を突っ込んだような自動演奏ならではの迫力とか、なにか生演奏を解りやすく超えるものが感じられればいいと思いましたが、それは見に行ったらどうかという話です。

単純にあの壮大なオルゴールセット、ピタゴラスイッチに対面してみたい。
だからとりあえずそれでいいんじゃないかと。



、、、そんなわけで早速良い席押さえちゃいましたので。あとは観て確かめます。

このOrchestrion Projectは楽しそうだなーという単純な乗りだけで久々に心動かされています。





お好み度:●●●●● ●●○○○


Pat Metheny/Orchestrion


1.Orchestrion
2.Entry Point
3.Expansion
4.Soul Search
5.Spirit of the Air

All music performed by Pat Metheny, guitar and orchestrionics (pianos, marimba, vibraphone, orchestra bells, basses, guitarbots, percussion, cymbals and drums, blown bottles, and other custom-fabricated acoustic mechanical instruments, keyboard)

2010年作品

John Mayer/Battle Studies

2010-02-13 19:40:49 | 洋楽
1曲目の2:25から始まる20秒程のjohnのギターソロ。
これがものすごい中毒性です。


音数は少なく、ライブでは特に盛り上がらないであろうちょっとしたプレイですが、
ここが聴きたくて、この盤を結局最後まで聴いてしまいます。
もちろんここだけではなくて、全編にわたって美味しいところ満載なのですが、冒頭のこれの引きがホントに強い。


個人的に、彼のギターは大好きです(歌も曲もですが)。
普段ギターだけを特に聴くわけではないのであまり信憑性はないのかもしれませんが、
彼はタイムが特に良いような気がしています。
だからかトツトツと弾いても音に力があるというか、十分というか。
テクニックに関してはソロやトリオでもっと激しく歌いながら弾くのを聴いているので、もうスーパーマン的な見方をしてしまうのですが、
それを使わずに、音色に、泣きに集中して制御するあたりが貫禄いっぱいです。


あらためて年齢を確認してみたら77年生まれって、自分より3つも年下ですが一体どういう貫禄なんだろう。
初期の作品は年相応という感じもありますが、ここ2作はこの傾向ですね。
Claptonとやったりして一気に貫禄が付いちゃったんでしょうか。
追っかけでもないのでよくわからないですが、こうなると彼のプレイはこの先どうなってしまうんでしょうか。


その他、彼の書く曲がすぐに彼の曲だと解るすごさとか、今回もsteve jordanのjohnと同じく抑えたドラムが最高とか、音数の密度が全編好みだとか色々あるのですが、特にギターソロの中毒性に参りました。

もっと言えばソロでなくてもトーン、、、と出したあっけない位の単音にも殺傷力があります。不思議だ。これ狙っているんでしょうか?、、、でしょうねぇ。



お好み度:●●●●● ●●●●○


John Mayer/Battle Studies

1. Heartbreak Warfare
2. All We Ever Do Is Say Goodbye
3. Half Of My Heart
4. Who Says
5. Perfectly Lonely
6. Assassin
7. Crossroads
8. War Of My Life
9. Edge Of Desire
10. Do You Know Me
11. Friends, Lovers Or Nothing

2009年作品

Windfall Light: The Visual Language of ECM

2010-02-09 23:53:37 | 書籍
ECMの音楽。

非常に硬派でピュアな音楽が多い、というかそういう音楽専門という趣きのレーベルですが、ジャケ買い率No1という不純な購入動機もセットになっているところがなんとも不思議。

ECMの音楽的な内容は自分にとっては時に激し過ぎ、寂し過ぎ、フリー過ぎといったことも多いですが、ジャケに呼応して一転素敵に感じてしまったりすることもままあり。
ジャケは音楽とは関係ないという方も多いでしょうが、実際にはかなりの影響があるというのが私個人の考え。

Bill Evansの肖像は音楽と呼応している。
最近ではJan Lundgrenだってそうだと思う。
イケ面というわけではなくてもMonkやHerbieだって風貌通りの音楽でしょう。

というわけでこの結構な値段のするジャケ写集、迷った挙句結局手元にあります。
持っているCDのがバーンと載っていると少し損をした気分ですが、やっぱり良いですね。
この写真集は第2弾らしいですが、自分は最近のジャケの傾向が特に好きです。
中古であったら中身が何でも買っちゃうだろうな、ジャケ次第では。

ECMの音楽は特にこの種の音楽が好きな人でないとお勧め出来ません。
知り合いに聴かせたりすると距離が出ます。下手すると心配されたりするし、どことなく後ろめたいものが多い(全然大けするものも中にはあると思いますが)。

簡単に言うと「暗い」です。
簡単に言ったらこうなっちゃうんですよね。

でも深―い感動をもたらしてくれた盤も多いです。
暖かみもあれば優しさもある盤もある。

いずれにしてもそれはジャケ写の様な音世界です。









ミニマルなものから人の気配のあるものまで様々ですが、いずれにしても美しく、どこか寂しげな部分は共通しています。たまに考えるんですが、こういう美しさや寂しさにすがる音楽時間というのは如何なもんなんでしょうか。

ECMが良いときは一人が心地いい。
なんで一人になりたいか?
どこか少し病んでいるから?
お疲れ?
などなど色々なことを考えてしまいがちですが、
最近全然関係ない分野のものとちょっと結びつきました。




妹に勧められて「岳」という漫画に今かなり入れ込んでいるのですが、これの10巻で、山岳救助見習いの阿久津君がボランティアで山岳救助をやっている主人公の三歩という男に山のどこが良いのかを聞くシーンがあるのですが、いっぱいある中でたとえばということで挙げた話が、

「高いけど高過ぎない、5千メートルくらいの冬の山。

まだ月が昇ってる夜中に雪の稜線のテントから顔を出すと山の空気はさすように冷たくて、、、

風はなくて静かで・・・

あたたかいコーヒーを一杯飲んで、残りはテルモスに入れる。

月が明るいからヘッドライトも点けないでテントを出る。

雪はウェハースをふんで歩いているように気持ち良くて、
クランポンの全ての刃をしっかりとらえる。

そんな冬山の稜線を一人で歩いていると、
この世には自分しかいないように感じてくるんだ。


でも孤独じゃなく,

恐怖もなく、

ただただウェハースの雪を感じながら歩く。


そんなときはいいなぁって思うよ。山が好きだなぁって・・・」



このセリフはきっと作者本人か、もしくは実際のクライマーの感想なんだろうなと思うくらいリアルに情景の浮かぶもので、この描写にハーっ、、、と溜息が出てしまいました。
そしてその感動の類いがECMのそれに非常に近いなぁと思ったのでした。

特に

「でも孤独じゃなく,

恐怖もなく、

ただただウェハースの雪を感じながら歩く。」

というところが素晴らしく、何でもかんでも意味があるか否かを考えるのが無意味であることを教えてくれます。


昔学生の時に、建築学科の他校の先輩の作品を見た際、違和感を感じた自分は、

「そういうのは実際に人が使う建築としてはあんまり意味がないのでは」

みたいな質問を投げかけたら、

「建築と空間が好きだからやるだけだよ」

とバシッと言い切られて衝撃を受けたことを今思い出してしまいましたが、それに近いものがあります。

いいなぁ。ベタですが,「人は何故山に登るのか、そこに山があるから」ってのがありましたね。ベッタベタですが(笑)。

自分はまだまだ理屈っぽくて、感性で生きていないのかなぁなどと考えてしまいますね。



ECMの音楽は孤独です。山岳、深海、宇宙、ミクロの世界といった世界を感じる音楽。
普段の日常生活とはちょっと距離のある世界です。

ここに行きたいなんてやっぱりどこか疲れているんじゃないか、などとまだまだ考えてしまいますが、、、。

惹かれるんであればそれ以上のことは考える必要は無し!



などと軽く誓ってみるのでした。