音楽という食物

ジャズ系を中心に好きな音楽について

Stefano Bollani With The NDR Bigband/Big Band! Live In Hamburg

2011-07-25 00:56:20 | ジャズ




Stefano Bollaniがビッグバンド、かなり引きが強いです。

小編成好きな自分としては普段好んでは聴かないビッグバンドですが、
Bollaniがやるんだったらドドーンと思いっきりやれー!という気持ちになってしまうから不思議です。
ジャケットの笑顔にまた期待が膨らみます。

この間のChris Potterらのビッグバンド作品と同じかと思いきや「N」が付いたNDR Bigbandということで違いました。こちらも歴史ある強力なバンドのようです。ドラムにはもう一人の主役、Jeff Balladが迎えられています。買ってから気付いてうれしくなる。


「1」、ラテンや4ビートなど目まぐるしくリズムは変化して、オープニングにふさわしく華やかなテンション。サックスのソリストがほぼフリー気味に暴れて痛快、行儀がいいだけの音楽ではないと宣言。Bollaniはソロ以外は手を休めていますが、出番が来るとガラッと情景を変える見事なソロでかっさらってきます。期待通りの活躍。

「2」は一旦落ち着かせるナンバーで、バラード表現でも優れたBollaniはソロがアンサンブルの中を泳ぎます。これも素晴らしい。ちなみに曲はすべてBollaniのもののようです。

「3」はリズム隊VSBollaniといった趣きで、オープニングのドラムとパーカッションの掛け合いからしてその後のテンションを決められてしまいます。この作品のハイライトか。Bollaniは鬼の連射ソロで応戦します。これはお家芸だと思うのですが、この作品の中でこそバランスがいいと思います。芯の強いピアノです。聴く前からビッグバンドに埋もれてしまうイメージは全く無かったですもんね。これは燃えます。それとこのバンドはソリストもそうですがJeff Balladを含めたリズム隊も強力。Bollaniと組んだBallad、楽しそうに叩くBalladが目に浮かびます。パーカッションがいるのでわかりづらいですが、素手で叩いたり色々やってるんじゃないでしょうかね。生で見たい組み合わせです。

パーカッションでそのまま「3」から繋がっている「4」ではまた落ち着きます。クラリネットをフューチャーしつつ、いつものBollaniの幻想的な面が出たテイクです。しかしピアノの音の美しさは完璧です(ついでにこの盤は音質も素晴らしい)。

「5」はミディアムテンポで長尺ですが、終わりに向けて準備を進める様な演奏。良いライブでした、という感慨。



世間はまた暑くなってきましたが、そんな中でも大丈夫。
むやみに暑く勢いがあるだけの音楽ではなく、
編成以上の多彩な世界を感じられる、奥ゆかしくも楽しい音楽でした。
そしてこの5曲にBollaniの良いところが全て詰まっています。

アレンジャーの力量も大きく左右するところでしょうが、
埋もれずキッチリ自分を出し切るStefano Bollaniもやはり最高です。
更にはリズムを浴びる気持ちよさも味わえて、良い意味で盛り沢山の好盤でした。




Stefano Bollani With The NDR Bigband/Big Band! Live In Hamburg
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01. Storta Va (10:56)
02. Elena E Il Suo Violino (8:19)
03. Il Barbone Di Siviglia (11:16)
04. La Sicilia (6:44)
05. Quando La Morte Verra' A Prendermi (16:55)


Stefano Bollani: piano

NDR Bigband Ensemble
Conductor, Arranger: Geir Lysne
-Thorsten Benkenstein: trumpet
-Ingolf Burkhardt: trumpet
-Oliver Groenewald: trumpet
-Reiner Winterschalden: trumpet
-Dan Gottshall: trombone
-Klaus Heidenreich: trombone
-Stefan Lottermann: trombone
-Ingo Lahme: bass trombone
-Fiete Felsch: alto saxophone
-Peter Bolte: alto saxophone
-Christof Lauer: alto saxophone
-Lutz Buchner: alto saxophone
-Frank Delle: baritone saxophone
-Ed Harris: guitar
-Ingmar Heller: bass
-Marcio Doctor: percussion

Featuring
Jeff Ballad: drums




2010年録音





Chick Corea,Eddie Gomez,Paul Motian/Further Explorations

2011-07-23 00:29:06 | ジャズ



やはりここはPaul Motianというのが最大の関心です。
ピアノトリオでMotian入りっていうのも近年は聴いてません。

Chickはといえばコンスタントに作品を出して楽しませてくれていますが、
音の重さは年々薄れて「こそばゆい」感が前面に出がちなのがどうにも気になっているところ。

いつも思うのですが、Chickって相当癖のあるプレイスタイルだと思うのですが、なんでこんなに人気があるのでしょうか。自分は大好きなので冷静な判断が出来ないのですが、KeithやHerbie,Mehldauらと違って純粋なフォロワーは未だに居ないと思っています。今回もそんなことを思いました。


1-1のイントロ、Motianがオーソドックスなスタイルで叩いて客席が盛り上がります。こっちも同じ同じ。思いっきり懐かしい感じがします。Peri's Scopeはひねらず、楽しく演奏されます。1-2,1-4あたりはGomezもわかりやすく頑張るので例のトリオを彷彿とさせますが、その分Chickのピアノはエグさが際立つ。こそばいし、重心の高い和声。

1-3のイントロあたりは個人的に大好物でこの色彩に会えるだけで満足してしまいます。Piano Improvisationsの音とそう変わっていない。この世界観を長い時間自分だけが宝のように持ち続けられていることに感動する。

1-7,2-1,2-9はビバップらしさや疾走感が良いアクセント。2-3のタンゴはEvansらしさ皆無で笑ってしまう。こういうのはChickらしいなぁ。

1-5はEvansの未発表曲とかなんとかですが、それはさておき良い出来です。料理の仕方が良いのか、Chickに合っているのか、彼のオリジナルの様です。

1-8の繊細さは普段は聴かれないもの。ピアノから生まれる音楽であって、編成はジャズですというだけ。

1-9のChickオリジナルはEvansの曲の特徴を掴んでいるものなのか、非常に秀逸。名を冠したタイトルからしてロマンチックなテイクかと思いきやそんなに甘いものではない。それがまた嬉しかったり。


EvansのメジャーなスタンダードではいわゆるBill Evans Trioを思わせるプレイで叩いているMotianにまんまとやられてしまうのですが、これだけでは正直楽しみ切れない内容だったと思います。変に音が近い時があり、しかし当然Evansトリオにはならないわけですから。

こうやって並べられてさらに面白いと感じたのは1-3,1-5,1-6,1-8,1-9,2-2,2-5あたりで、Motianにあやかった様な自由な音世界が広がります。とは言ってもまだまだこそばゆく弾き過ぎ感ありのChickではありますが、変わらず独創的な音選びで際どいところを駆け抜けて行きます。


この作品はメンツと選曲のバランスが良く、Chick Coreaトリオの中では好きな部類のものになりました。聴き終えてみると案外Evansとは直接関係のない様な部分が作品の芯として残っていて、そこも好感度高いです。




これはリハの模様とのこと。よく聞き取れないのですが和やかな会話が楽しいです。ChickのHumpty Dumptyを「君の?」なんて聞いているMotian、基本的に普段の交流はないですよね。新鮮なセッションだったのだろうと勝手に想像してしまいます。




Chick Corea.Eddie Gomez.Paul Motian/Further Explorations
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DISC1
01.Peri's Scope
02.Gloria's Step
03.They Say That Falling In Love Is Wonderful
04.Alice in Wonderland
05.Song No.1
06.Diane
07.Off the Cuff
08.Laurie
09.Bill Evans
10.Little Rootie Tootie

DISC2
01.Hot House
02.Mode VI
03.Another Tango
04.Turn Out the Stars
05.Rhapsody
06.Very Early
07.But Beautiful Part1
08.But Beautiful Part2
09.Puccini's Walk


Chick Corea-piano
Eddie Gomez-bass
Paul Motian-drums



2010年録音





Aaron Goldberg & Guillermo Klein/Bienestan

2011-07-12 22:08:35 | ジャズ



「ずっと気にはなっていたAaron Goldbergをちょっと突っ込んで聴いてみたくて」買い。
もちろん鉄板な面子も後押し。

しかしGuillermo Kleinaという人も鍵盤ということでちょっと予測がつかない。
管も数曲で入っていて純粋なトリオ系とはかけ離れていそうだけど、店頭の試聴で興味が湧いた。


これは、いつもの自分だったら
「理屈的にはカッコいいはずなんだけど感覚的になんか馴染めない」
となりそうな音楽なんですが、今回は逆で
「理屈的には馴染めない感じのややこしい音楽のはずなんだけど感覚的になぜか気持ちがいい」
という状態。なんで?


基本的にはお目当てのAaron Goldbergのいい演奏がたくさん聴けて、この人もやっぱりいいなぁというのがありますが、
毎度のEric Harlandaがこのややこしい構成の音楽を楽々歌わせているのが効いている、というのもわかるのですが。

でもそれだけじゃなく、鍵盤隊がちょくちょくミニマルな表現をソロやらデュオやらで入れてくるのが何故か嫌じゃない。むしろいい。こういうのは大抵良くないパターンなんですが、、、(ちなみにGuillermo Kleinという人はたまーに出てくるくらいですね。意表を突かれましたがそれはそれでいいです。曲を多く提供しているんですね)。

ついでに今まであまり引っかからなかったMiguel Zenonのアルトが今回グッときてます。
この人良いじゃないですか。追っかけてみようか。その前にAntonio Sanchez盤でも復習しようか。



この作品は考えすぎなくらい練られて作られている様ですが、そういう考えを飛び越えてひたすらリピートさせる力を持った音楽になっています。奏者の力量というのは当然大きいですが、曲やアレンジにも大きな力が潜んでいるのかもしれません。

こういう「わけわかんないけどなぜか良い」っていう作品はある意味理想的な出会いです。気になるミュージシャンも増えたというおまけつきで、本作は当たりでした。





Aaron Goldberg & Guillermo Klein/Bienestan
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1.All The Things You Are
2.Implacable
3.Moose the Mooche
4.Burrito
5.Human Feel
6.Anita
7.Blues For Alice
8.Manh・De Carnaval (black orpheus)
9.Airport Fugue
10.Manh・De Carnaval (orfeo negro)
11.Yellow Roses
12.Impresion De Bienestar
13.Amtrak / All The Things You Saw



AARON GOLDBERG-piano
GUILLERMO KLEIN-fender rhodes
MATT PENMAN-bass
ERIC HARLAND-drums
MIGUEL ZENON-alto sax(3.5-7.11)
CHRIS CHEEK-tenor,soprano sax(5.6.11)




2009年録音






夏に帰ってくる3枚

2011-07-04 23:36:30 | ジャズ
暑いので音楽を聴こう、という流れで出てくる3枚。
今年も帰ってきました。



Chick Corea&Gary Burton/In Concert Zurich
1979年作品

言わずと知れた名盤ですが、冷却効果も抜群。
この編成だから涼しいんじゃなくてこの二人だから涼しいのです。
暑くても負けない氷の世界。
散らばるだけ散らばった後にユニゾンで一体になる瞬間いつも軽くショックを受けます。基本的にこれは人間技ではないんでしょうね。痛快です。




John Scofield/Quiet
1996年作品

アコースティック、スコフィールド。
草原の上を撫でていく風のような音世界(書いていて何だこれ?っていう感じですが、聴けばやっぱりそんな感じなのでご容赦を)。
余興なんて印象は全く皆無のジョンスコのアコギだけじゃなく、涼やかでセンスあふれるホーンアレンジ、ビルスチュのいつもよりは控えめながら竹のように生き生きとしなるドラム、風そのものの様なショーターなど全てに自然の風を感じる。これはほんと、大好きです。




Lee Ritenour/Color Rit
1989年作品

逃げないで夏に向かって行くブラジリアンフュージョン。
同じ傾向の作品でマーカス・ミラーがいた「Festival」では音が若干被っていたがこの作品はそういう問題がない分良い。アコギが盤全体の完全なる主役なのが良いし、ヴォーカル曲も良い。夏の良いところの空気感が詰まっているのが魅力。フュージョンにしてはかなりアコースティック色が強く、木陰のような間も感じられて気持ちがいいのです。
これを聴けているときは暑さを楽しめている時です。



正直ここ数日早くも夏バテ気味ですが、なんとかまだまだ続く夏を楽しく乗り切りたいものです。

良い音楽をもって。