音楽という食物

ジャズ系を中心に好きな音楽について

スガシカオ/Sugarless

2011-08-25 00:29:08 | 邦楽




そういえばスガシカオって最近聴いていない。
CMでこれの続編が出るというのを見て思い出した。
「Sugarless」はカップリング集のような作品だと思ったが、これが逆にある意味表面にも感じられる素晴らしい内容。

一時期すごくハマって、初期から4、5年くらい前までのものは網羅したと思う。カップリングでしか聴けない作品も持っていて、それらがまた良かったためこの作品の登場は嬉しかった。

聴き始めは単純に音や声がカッコいい、というところからだったと思いますが、最終的に最も印象に残るのは強烈な歌詞だったりしました。

普段旋律に変に本気な歌詞が付くのはちょっと気恥ずかしい、と感じている自分ですが(それぞれの音楽の立ち位置をわかっていて「歌謡」なら「歌謡」、「ポップス」なら「ポップス」らしく仕上げているものは逆にちゃんと大人の音楽として受け止められるのですが)、このスガシカオは本気で恥ずかしいプライベート的なものを惜しげも無くさらけ出している割には歌詞の力、情景を浮かばせる力が勝っていて、例外的に「歌詞の力ってすごいな」と思わされたのでした。

音楽もソリッドかつスタイリッシュで文句無しなのですが、それ以上にこのジャケットから思い出されるのは忘れがたい歌詞から浮かぶ情景の数々。

何か抜粋しようかと思ったけれどほぼ全曲ですね。強いて挙げれば
・ユビキリ
・夏祭り
・うきぶくろをもって
・坂の途中
あたりが特に好きです。

こんなに自由でいいの?
普通こんなこと考えるか?
しかし何故か惹かれる気もする。
それにしてもこれ聴いてていいのかな、
などと考えさせられたスガシカオの音楽。

改めて聴いて、その音楽の力は自分の中では増していました。

ところでこの続編は評価が低くて躊躇しています。
このSugarlessの中でも初期の作品ほどアクが強いですからね。
出し切っていったというのも想像つかなくはないですが、聴いてみないことには何ともいえません。


スガシカオ/Sugarless
●●●●● ●●●●○


1. マーメイド
2. ユビキリ
3. 夜空ノムコウ
4. ぬれた靴
5. 夏祭り
6. ココニイルコト
7. バクダン・ジュース(オリジナル)
8. ひとりぼっち
9. うきぶくろをもって
10. これから むかえにいくよ
11. 8月のセレナーデ
12. Room201
13. 坂の途中



2001年作品






連休中の食物

2011-08-17 11:31:45 | ジャズ
基本的に連休はあまり音楽を聴けません。
こども達の「あれ書け」「これ見ろ」波状攻撃で息つく暇がない。

強いて言えば乱雑にしまってあったCDを子供等に邪魔されながら整理整頓、この人を思い出しました。


Alexi Tuomarila/02

典型的な現代的カルテットという感じのジャズで、技術、楽曲共素晴らしくて非常にカッコ良いのですが、何故だかなかなか印象に残りませんでした。しかし単なる聴き込み不足で放置していたような気もして、改めてyoutube等でチェックしてみました。

そのyoutubeで引っ掛けたトリオの動画が非常にかっこ良く、勢いでその他の作品も注文をかけました。

Alexi Tuomarila Trio


技術の正確さだけでなく、フレイジング、音の張りと艶のよさ、そしてトリオとしての躍動感。やっぱりトリオの方がわかりやすいのか。


Alexi Tuomarila Quartet/Vocies of Pohjola

こちらのカルテットは「02」と似た印象。
当たり前のようにメンバーの技術は高いのですが、ピアノの音の強さと伸びやかさがしっかり「リーダー」していて聴き惚れる場面も多いです。喜怒哀楽のなにかではなく、例えば美しいモノ(建築など)を見学した際の感動に近いです。「人」というより「モノ」ですね。


Alexi Tuomarila/Constellation

聴きたかったトリオはまだ届いていません。楽しみです。

ECMからもTomasz Stanko Quintetの作品で弾いているということで、今後新譜に出会うこともあるんでしょう。



最近はいつもお邪魔しているブロガーさんのサイトで思い出すことも。J Worksさんのブログで取り上げられていたこちら。

Tore Brunborg/Gravity

Alexi Tuomarilaの音楽をもっと音数を減らして落ち着かせた感じ。リーダーのTore Brunborgはtenorですが辿り着いた音楽は近い。この人もECM常連ですね。音数が減っている分、音の意味が異なって聴こえる。もうちょっとちゃんと向き合おう。



次はToshiya様のブログをきっかけに思い出したPrysmのトリオ作。

Prysm/On Tour

最近復活して話題になっていますが、最新作はまだ聴いていません。
拍手が起こることに違和感がある(ライブだったの?!的な)ほど緻密なアンサンブルのピアノトリオです。Alexi Tuomarilaと同様適度に感動した後、なぜか放置していた作品ですが、こうも揃いも揃って硬質なジャズを再度聴き直したいと思っていることが自分的に意外。

このタイプの音楽は他にも世にあふれていて、それぞれはとても魅力的なのですが、気付いたら皆同じ広場に集合してしまっているような感覚はなんなんでしょう(それを言ったらECMが丸ごとそうなのでしょうが)。

「新しい物を」という意図なのか「心の赴くままに」なのかはわかりませんが、人が作った人を惹き付けるものは大枠は似てしまうんでしょうか。いや、単純に私の聴き込みが足りないのかもしれません。少なくとも私にとっては2000年より前のジャズよりは個性を感じとりにくい音楽というのは確かです。そして感情を表現というよりは、芸術品を出現させるという方向が増えているようにも感じます。



その他はMarc Coplandが再ブームです。当時取っ付きにくかったこちら。

Marc Copland/Poetic Motion

いつでも向き合えるわけではないですが、上に挙げた諸作を聴いた後にこの作品を聴くと音楽がここに到達する理由がわかる気がします。「これも美、いやこれこそ美?」などと、超怪しい独り言をつぶやいてしまいました。これこそ聴き込まな。そしてこの人の持ってない作品数多し、困った。

HMVのサイトでJohn Abercrombieとの新作が紹介されていたような気がしますが、随分長い間サイトが見れなくなっていますね。注文したかったのですが、このトラブルは一体どれだけの損害が出るものなんだろうと思ってしまう。



明日からは仕事です(フー、、、)。この連休の流れって仕事が始まると途切れてしまうことが多いんですが、せっかく掘り起こしたので聴き込んでいきたいと思います。



Stan Getz/Apasionado

2011-08-13 03:02:47 | ジャズ




これは5年くらい前のJeff Porcaro買いですが、呆れるくらいのGetzの歌いっぷりに全て持って行かれているという結果オーライ盤。

よく聴けばフュージョンの様なビックバンドの様な、かなり色々なジャンルの音の間を行くサウンドプロダクションなのですが、しばらくはそんなことさえ考えなかった。Porcaroやっぱり控えめながら良い仕事だなぁくらいしか。何しろ色んな楽器が出てくる割に誰も親方の邪魔をしないわけです。しかし足も引っ張っていない。

シンセが主でピアノは味付け程度。ホーン隊が抑揚を付けるがどこか涼やか。
危険な編成のようで古さは感じない。むしろ見事な音作りで、流しても聴き込んでも大丈夫。しっかりと作り込まれている印象です。

そして何と言ってもGetzの吹きっぷりは、、、いつもこのくらいやっている気もしますが、バックが新鮮だったのかいつもとは少し異なる引き出しを開けてこの作品を楽しんでいる。ジャズ系はもちろんフュージョン系の奏者でここまで多彩で的確な歌を歌える者は果たしているんでしょうか。

こういうものを聴くと全員が反応し合って展開していくことだけが可能性じゃないと思わされる。この盤の場合、Getzはこのサウンドプロダクションの上で更にきめ細かい音選びや感情を表現することが可能になっていると感じるし、聴いていて気持ちいいのはもちろん、Getzはとにかく楽しそうなのです。

しかし誰にでも出来るわけでもないでしょう。バックが大きく流動的にフォローしてくれるのではないし。俺の邪魔をするなよくらいでいかないと。そういう意味でこの作品が成立するのはこの親方があってのこと、ということをつくづく思うのです。そしていつもよりワンマンショーな親方を目の当たりにして、その影で同時にPorcaroのプレイが相当貢献していることにも気付くのです。


この作品は涼やかなGetzの歌に嫌味のないシンセと繊細なドラムがフォローして、どこにでもあるような音ながら実際他のどこでも聴けない音を展開していて、私にとってはすごく貴重な作品という位置付けです。暑い日が続きますが、ECMとはまた違った清涼感や空間の美しさが欲しくてこの作品を聴いています。




Stan Getz/Apasionado
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1.Apasionado
2.Coba
3.Waltz For Stan
4.Espanola
5.Madrugada
6.Amorous Cat
7.Midnight Ride
8.Lonely Lady



Stan Getz-tenor saxophone
Eddie del Barrio-synthesizers
Mike Lang-electric piano,synthesizers
Kenny Barron-piano
Paulinho da Costa-percussion
Jimmy Johnson-bass
Oscar Castro Neves-electric guitar
Michael Landau-electric guitar(4)
Jeff Porcaro-drums
George Bohanon-trombone
Reginald Young-trombone
Noland Smith Jr.-trumpet
Rick Baptist-trumpet
Oscar Brashear-trumpet
William Green-sax
Tom Johnson-tuba


1990年録音







Esperanza Spalding/Esperanza

2011-08-06 22:42:22 | 洋楽




ヴォーカル兼ベーシストのEsperanza Spaldingの2008年作品。
巧みなアレンジと楽曲で鮮やかに、軽やかに聴かせます。

全般ブラジリアン、ラテンといったテイストで夏にピッタリですね。
キメの効いたアレンジが今のジャズ風。

そして何故にベースを弾きながら歌うのか?というのがよくわかる楽曲群が素晴らしくて、この人のポイントになっていると思います。ベーシストが歌うと曲の底から意図が伝わってくる感じがして良いです。

ヴォーカルはもちろん上手いのですが、結構ライトテイストでそれが明るい楽曲群と合っているのでこれはこれで良いなぁと。ただし声が前面に出てきて圧倒的、という感じよりはトータルサウンドが勝負というところもあり、この楽しい音楽を気楽に楽しむというスタンスが合っている気がします。

「8」のMelaではちょっと牙を剥いていて、本気出したら結構凄いなとも思わされます。Shorterのソプラノかと思っちゃいました。

ピアノのLeo Genoveseという人もHancock系のキレキレスタイルで弾いていて十分すぎるほど上手く、結構フューチャーされていて作品に華を添えています。

ちなみにこの鳴り物系担当のJamey Haddadという人は、やたらといろんな名前の楽器がクレジットされているのですが、半分は冗談なのかなという気もしています。全部は書きませんでした(これでも抜粋した)。でも、そういうテンションの作品です。




どう聴いても秀作なのですが、本音をいうとヴォーカル自体にもう少し音圧というか、楔感が欲しかったのか、何回聴いても薄味という感じがしています。それだけに結構聴く回数は多いんですが、、、。他の作品も聴いてみようとは思っています。





Esperanza Spalding/Esperanza
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1. Ponta De Areia
2. I Know You Know
3. Fall In
4. I Adore You
5. Cuerpo y Alma(Body and Soul)
6. She Got To You
7. Precious
8. Mela
9. Love In Time
10. Espera
11. If That's True
12. Samba Em Preludio


Esperanza Spalding-vocal,acoustic bass,doolin bass(2)
Leo Genovese-piano,wurlitzer(7)
Gretchen Parlato-background vocals(1,4)
Jamey Haddad-caxix,hadgini,drums,shaker,bongo,cymbals,crotales,reco reco ganza,triangles,china cymbal,djembe,brooms,surdo,ribinique,angklung
Otis Brown-drums(1,2,5,7,9-11),background vocals(4,7)
Horacio Hernandez-drums(4,6,8)
Donald Harrison-alto saxophone(6,11)
Ambrose Akinmusire-trumpet(8,11)



2008年作品





Marc Copland・Ralph Towner/Songs Without End

2011-08-01 00:40:01 | ジャズ



自分にとっての初Ralph Townerでかつ初Marc Copland作品。もう17年くらい前になるのか。時間の経つ早さに驚くが、内容が消費されずにいつまでも新鮮なことにもそう感じる要因がありそう。


当時は雑誌のレビューを頼りにしていたこともあって、やたらと評価が高かったことで購入した。デュオは好きだし、知っている曲もあったし。

内容は期待以上で、聴きやすく美しく、何故かどこか物悲しく、たまにふざけてみたりといったもので、今聴いてもかなりストライク気味の音楽です。

聴く前はNardisあたりが結構目玉だったのですが、彼らのオリジナルも相当良くて(むしろそちらがこの作品の主役となっている)捨て曲無しの充実した内容。Tern,Goodbye,Jamaica Stopover,All That's Leftといずれも素晴らしすぎるんですが、Snowfallのタイトル通りの演奏がまぁ聴き惚れます。相当「詩人度」高いです。

唯一若干フリーが入ったFreebopもなんだか聴きやすく。
各スタンダードも良い出来です。

近年はもっと硬派寄りの演奏をしている二人ですが、ここでは曲の美しさに身を委ねて楽しく演奏している二人がいて、たまにはこういう演奏も繰り広げて欲しいと思っています。


しかしMarc Coplandの音の潤いと揺らぎといったら不思議です。なんでこうも人によって音が違うのか、と考えてしまう人のひとりです。Ralph Townerとのバランスも絶妙で、全体的に程よい保湿感みたいなものが漂っています。

ピアノとギターのデュオでベストを選ぶとしたら個人的にはこの盤は間違いなく入ってきます。再生回数は間違いなく一番。乾燥した季節に入ってきたらますます魅力を増していきます。



Marc Copland・Ralph Towner/Songs Without End
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1.Nardis
2.Zingaro
3.Tern
4.Goodbye
5.Freebop
6.All That's Left
7.Jamaica Stopover
8.Snowfall
9.Blue In Green
10.Love Walked In


Marc Copland-piano
Ralph Towner-guitar


1994年作品