音楽という食物

ジャズ系を中心に好きな音楽について

一時間を預けるデザイン

2010-04-29 00:08:58 | デザイン
音楽を家で流すにしろ外出時にヘッドフォンで聴くにしろ、個人的にデータ化したものをシャッフルで聴くという機会が増えてきました。膨大な数のアルバムを総シャッフルで聴くというのは意外な発見が多く、聴き逃していた良い音楽をたくさん知ることが出来ています。曲順のせいで埋もれていたり,その時期好みが他のジャンルに流れていたり、ジャケが好みでなくて内容の印象が悪くなってしまったり、と音楽は案外中身以外の要素に左右されることも多いみたいです。


しかし悪い面として、アルバム単位でじっくり聴く機会が減り印象が散漫になったり、CDそのものが買って早々埋もれたり、そもそも借りることが出来たら取り込んでしまえばジャケットもPCの中でしか見ないのだから買うだけ無駄?という悲しい感覚が芽生えつつあります。


しかしながら思い入れのある盤を、好きな部分もそうでない部分も最初から最後まで飛ばさず向き合うという聴き方もやめるつもりはありません。発見にはシャッフル、掘り下げには一枚じっくり対峙がベストです。



ところでひと月ほど前にCDプレーヤーをヤフオクで購入しました。今まで使っていたものが20回に1回くらいしか読み込まないとかディスプレイがほぼ死んでるとか(よく頑張ったなぁ)というのもあるのですが、このプレーヤーは昔から狙っていたのです。


SONYのCDP-X3000という機種(販売していたのは1996年~2001年の間とのこと)ですが、実際に買おうと思ったときはもう中古で見つけるしかなかった時期でした。


しかしヤフオクなんかでの落札価格は毎回定価かそれ以上になってくるということで、結構人気のある機種の様でした。定価と言っても6万なので、こういったオーディオの類いでは安い部類なのですが、2台目のプレーヤーということでそこにお金は賭けられないということで頑張って取りにはいきませんでした。今回はもう今のプレーヤーが瀕死ということと、なんと3万で即決出来るということで迷わず落札しました。






データが主流になった近年、思い入れのある一枚にこれからの自分の約一時間を預けるという儀式が形となっているようなデザインは、発売から15年ほど経った今、その力を増しているような気がします。


なにしろ手で蓋をスライドさせて、ウェイト(メーカー的にはチャッキングプーリーというみたいですが)を外してプレーヤーの上に仮置き,盤を置き、ウェイトを乗せ、蓋を閉めてやっと再生です。LPに一番近いです。














やはり音楽は案外中身以外の要素に左右されることも多いと思います。


一枚通し聴きにはこういったおちゃらけた一手間を掛けてみると、新たな発見もありそうです。圧倒的にアコースティックなものが似合います。何を聴こうか考えるだけで楽しい。これは最終的には自分の部屋というよりはリビングの端っこに小さなセットを組んで、いつも目にとまる所で働いてもらいたいと思っています。


ちなみにこの機種はSONYのエンジニアさんが自分用に小さくて音の良いものをということで好き勝手に作ったものが営業の目にとまって市販となったというようなエピソードがあるようですが、粋な話だと感じると共に定価6万という価格設定は随分なサービス価格(これの上級機種で定価12万のCDP-X5000というのがあったのですが、そちらにしても)だと思ってしまいます。脇から見たフロントパネルのアルミの断面も重厚かつ素っ気ない感じで好きです。




Jamie Cullum Live at JCB Hall

2010-04-13 01:18:24 | ジャズ
J-Waveの先行予約で衝動的にチケットを取っていたjamie cullum。

JCB Hallというのは初めてす。想像通り客層は幅広く、何系のライブの客か当てにくい会場前です。アリーナ席なのでエスカレーターでどんどん地下に潜っていきます。ホールに入ると平面と高さが同じくらいに感じる立体的な会場となっていました。2階、3階とかでも悪くなさそうです。逆にアリーナの前から5列目なのは良いとしてステージに向かって一番右というjamieからはずいぶん遠い場所になってしまいました。正面はフロントスピーカーよりさらに外に外れているし。うーん、、、少し残念。





さて、ライブは少し押してのスタート。ドラムが鳴る。ものすごく良い音。腕の良さも感じさせて、更に新しいホールだからPAもいいのかも。


jamie登場。スーツ姿、ピアノには座らず立ってマイクを持っていきなり全開。空気一変。


ピアノは空いていてローズをメンバーが弾いている。ドラムをはじめ良いバンドだ。それを従えたjamieの声、更に凄し。ハスキーにかすれた声が力強く伸びて脳の良い所にガンガン届く。ピアノも普通に上手し。ガガーンと鳴らしたと思ったら繊細な表現も。バンドもピッタリ付いてくる。

すごいわ、淀みの無い表現。

ボクサーのようにリズムを取りながら歌う。
体の中から音楽の表現欲が次々と湧き出てじっとなどしていられない様子が痛快。
小柄なんでしょうか大きく見えます。彫の深い顔立ちが照明で更に浮き立ち、jamie特に男前ではないという声(妻談。失礼)も聞かれますが、いやいや、このステージ完全に男前でしょう。男前以外の何でもない、と男の自分でも思います。


立ってマイクを掴み激しくリズムを取ってはピアノに座り、座ったと思ったら立ったまま鍵盤を叩いてはまた踊り。時にドラムに参加したりピアノ自体ををパーカッシブに叩いたり弦を引っかいたり、ピアノに登ってはビビりのふりをして降りたりで起きる笑い。歌の合間にWooo...と溜息だかなんだかで間をずらしてまた笑い。いつも来ている人にはクーポンを、的なことを言ってはまた笑い(違ったらすみません、英語力なしです)。


終盤アリーナの中央にバンドが下りてきて、チンドン屋スタイルでcry me a riverを演った時がクライマックスで、そのあとステージに戻ってからはjamieが客を煽ってアリーナをオールスタンディングにしてしまいました。席を外れて詰めかけ状態です。椅子に立っている人もいました(妻も)。この人の求心力が普通じゃないのはお分かり頂けると思います。



アルバム評で良いことずくめと書きましたが、このライブではそれに輪を掛けたjamieの歌声やバンドの力量がすばらしさ、更には常にユーモア込みの演奏やMCで完全に客を自分のものにするセンスを目の当たりにして、はたしてこのライブに文句のある人がいたんだろうかと思ってしまった。


コアなファンには盛り上がりに欠けるような書き込みも後に見受けられたのですが、私にとっては大盛り上がりなライブでした。確かにJCB Hallはシートだったので、これに対峙する人々は当然座っているのですがこれが確かに拷問じみています。後日のZEPP TokyoでのライブでJCB Hallでの鬱憤を晴らしたというファンは多くいたようですが、この老若男女問わず人を魅了するであろうjamie cullimの音楽にはもっと多くの人に触れてほしいという思いが残りました。


この人の音楽の難しいところはスタイルとしては完全小さめのホールでスタンディングで聴く向きであること、但し音楽自体はすべての世代に伝わるもので、もっと大きいところで人を集めてライブができると思われますが、本人はあのスタイルであのテンションなのでホールで静かに聴かれても困惑してしまうだろうと思われます。私個人としてはJamie cullum楽団一行の力はJCB Hallくらいの小さいホールではまだまだもったいないと思ってしまいました。FUJI ROCK FESTIVALにも参戦が決まったそうなので、そこでのステージはもっと広く、自由な場所なりの更に良いライブになる気がしています。




そういえばjamieは結構英語でjokeを飛ばしていましたが、完全に英語を分かっている人も多いようで良いレスポンスで笑いが起きていました。歌詞をちょっと変えて笑いを誘う場面もあったようですが私にはさっぱり。東京ってすごいなぁと思ってしまいました。

Jamie Cullum/The Pursuit

2010-04-07 15:36:25 | ジャズ
ジャズのカテゴリーに入っていますが、あまりジャズとしては聴いていないです。
単に洋楽ロックだとしてもチェックしているでしょうね、この人は。

いろいろな栄養が混じっていますが、バランスよく高いレベルで摂取できる音楽です。
結構間があきましたが、方向性は過去2作と変わりなく安定しています。

まず、曲にしろアレンジにしろ相当良いものを揃えてきます。
そしてその先の哀愁や情景とか、最も難しい何とも言葉にできない部分を曲によっては旋律で、またはアレンジで、自らのピアノでキチッと盛り込んできます。スタンダードやカバーも毎回やりますが、それらを生かす力も相当なもんです。
アレンジは全体的にポップですよね。聴きやすいし乗りやすい。
現代のジャズ、ロック、テクノ等周辺のおいしいところをピアノを浮かさずに使っていますね。

そして相変わらず声は良いです。大人になったスネオです。これだけでも相当な武器なんですが、ピアノも文句なしに上手いです。
上手いというのはこの音楽のスタイルにおいて使い方の上手さというのがあり、その他技術的な巧さ、音の良さ、歌いっぷり、適度なラフさといった各所を満たします。歌いながら弾く人にはうまいと感じる人が多い気がします。歌をわかっているからでしょうか。Norah Jonesあたりも上手いなぁと感じます。歌を邪魔しない少ない音数でパーンと鳴らしますよね。

というわけでいいとこずくめのJamie Cullum。
通常弾き語りとかピアノトリオでとか聴きたくなるんですが、この人の場合は今のままが良いかも。
時代の音楽をうまくまとめてハイレベルに聴かせてくれる名手ですね。居そうで居ない。



ところでこのJamie Cullumの今回の来日はチェックしています。どんなライブになるのか,結構暴れるイメージなので楽しみです!




お好み度:●●●●● ●●●○○

Jamie Cullum/The Pursuit


1.Just One Of Those Things
2.I'm All Over It
3.Wheels
4.If I Ruled The World
5.You And Me Are Gone
6.Don't Stop The Music
7.Love Ain't Gonna Let You Down
8.Mixtape
9.I Think I Love
10.We Run Things
11.Not While I'm Around
12.Music Is Through

2009年作品

Herbie Hancock/River:The Joni Letters

2010-04-04 00:21:07 | ジャズ
お恥ずかしながらherbieの凄さを再確認したのはこの作品が出た2年半ほど前。最近Corinne Bailey Raeが復帰してベビロテ状態なので思い出してこの作品も聴いています。

基本的にトリオが好きなので、Herbieって聴いているようで意外と聴いていない。jazzdoorから出ているイケイケのブートなんかはすごいなぁとか思いつつ、右手のヒラリラリが頻出するころにはやっぱり最後はここにきて終わるのね、という悲しい思いがありました。マイルス時代もそれ程聴いていないしなぁ。そんな中でも「トリオ81」は一番の愛聴番でした。

このJoniトリビュート盤はほぼトリオではないのですが、Joni Mitchellの落ち着いた音世界に終始入りっぱなしのherbieという印象で、行き着く先の特急ヒラリラリ号が出てこないのが良い。スローな世界で皆が深い集中力を見せていて、安易な言葉ですがここでこそ言いたい「超一流」の演奏。

Herbie、まったく弾きまくらず、大きなタイム感で大きな音選び(どんなだ?もの凄く自由だけど説得力のある展開、というか)。下手すると現代のジャズピアニストの半数はherbie派なんじゃないかと思うんですが、いやいや、実際はこういうピアノを弾ける人は他には居ないんじゃないか?と思ってしまいます。Herbieをコピーしている人はこれ聴いてまた参ってしまうんじゃないでしょうか。Chickにしてもそうだけど、スタイルの基になっているものが違うので、表面を真似しても全然違うんですよね。基本的な生命力みたいなところでも差を感じるところではありますが。

ところでこの盤は自分も好きなNorah JonesやCorinne Bailey Raeなんかが参加していてこれも聴きものです。shorterにしてもやっぱり素晴らしい。でも無心で聴いているとそんなに強い印象は残さない。これだけのメンツでも付加的な魅力として有るくらい、この作品でのherbieは聴き物です(ここで情報をまとめながら気付いたのですが、ドラムVinnie Colaiutaなんだー。)


蛇足ですがこのアルバムのプロモを見ていると、スタジオの各室でメンバーがヘッドフォンをしながら演奏に集中する絵が見れるのですが、歌姫フューチャリングの曲でも歌姫本人が登場しないんですね。もしかしたら別録りかなと。今は当たり前のことかもしれないですが、ちょっと切ない気分になってしまいました。歌姫がherbie達に触発されない構図なわけだから、ね。





お好み度:●●●●● ●●●○○


Herbie Hancock/River:The Joni Letters

1. Court and Spark
2. Edith and the Kingpin
3. Both Sides Now
4. River
5. Sweet Bird
6. Tea Leaf Prophecy (Lay Down Your Arms)
7. Solitude
8. Amelia
9. Nefertiti
10. Jungle Line
11. A Case Of You



Herbie Hancock-piano
Wayne Shorter-soprano and tenor saxophone
Dave Holland--bass
Vinnie Colaiuta-drums
Lionel Loueke-Guiter
Norah Jones, Tina Turner, Corinne Bailey Rae, Luciana Souza, Leonard Cohen, and Joni Mitchell-vocal


2007年作品