音楽という食物

ジャズ系を中心に好きな音楽について

Antonio Sanchez/Live in New York at the Jazz Standard

2010-10-31 02:40:26 | ジャズ



前作Migrationで演っていたピアノレス2サックス編成でライブをやっていたんですね。
あのトラックはかなり良かったと思います。

このライブ盤は尺の自由さもあって更にはっちゃけた演奏が繰り広げられていますね。
色々凄いんですが、これだけボスとフロントが暴れまわってる中でのScott Colleyの存在感が凄い。
ピアノが居ないだけでは説明が付かない存在感。静かな曲では音色の美しさでも魅了。
曲はかなり長いのですが、だれたところが無く聴けるのは中身が濃い証拠でしょうか。
全8曲ということでむしろ曲が少なめと感じるくらい。
しかし不思議な曲が多く、情景としては都市や乗り物が浮かんできますね(ジャケそのままか)。

ただしずーっと何か書き切れないものを抱えていました。

先日久々にMigrationを聴いたのですが、私はこちらでの2テナーの演奏の方がしっくりきます。
まずAntonio Sanchezのいつもながらの繊細かつツボを抑えた的確な、ある意味クールなドラミングが気持ちいいです。
あと何でもかんでもこの人っていうのはどうなんだと思いつつ、「Chris Potterすげぇ」って再確認してしまいました。

サックスで描いている物の次元が違うのか、表現力が別格です。
同じ編成なのですが何かぶっとい芯がドーンとそびえている演奏。別構造。

これを聴いていたから何か大絶賛したくても戸惑っておりました。それに気付いたのは先日。
Miguel Zenonだって凄いじゃんと聴いていて思うんですが、聴いているうちに同じくらいすごいんじゃないかと思ったりするんですが、
でもどこかであのバンドの音空間ごと鷲掴みにしてブン回すようなChris Potterのパワーが頭に焼きついていてしまっているのです。

なのでこのライブ盤で一番印象的なのはScott Colley。彼のベースをたらふく聴けるだけで幸せです。相当すごいプレイを終始テンションを維持したままやっている。このバンドにボスに負けないくらい手応えを感じているのが伝わります。

そんな訳でバランスとしてはリズム隊が勝っている様な気がしますが、これはこれでリズム隊天国的な愛聴盤になっています。



お好み度:●●●●● ●●●○○


Disc 1
1. Greedy Silence
2. H and H
3. Ballade
4. Revelation

Disc 2
1. It will be better
2. Did you get it
3. The Forgottoen Ones
4. Challenge within


David Sanchez-Tenor Sax
Miguel Zenon-Alto Sax
Scott Colley-Bass
Antonio Sanchez-Drums


2010年作品




Stefano Bollani Trio/I'm In The Mood For Love

2010-10-29 23:30:00 | ジャズ



2006年以降のピアノトリオで個人的No1はこれです。


Stefano BollaniはこのVenus Recordsで知りました。歌う(ヴォーカルとして)ピアニストという出会いです。これはほとんど聴いていなくてその後のトリオ「Volare」などは相変わらずイケメンイタリアンジャズメンという印象が先に来てあまり聴き込まず。

真面目に耳を傾けるようになったのは「Falando De Amor」というJobim集。



1曲目のイントロでこの人は「持っている」んじゃ、と急激に興味が湧いたのでした。さらっと弾いてるだけの何気ないイントロですが詩情たっぷりです。


その後はLabel Bleuなどをチェックしていきます。



ECMの間口をもう少し広げた様なカラーのレーベルでかなり自由にピアノ音楽を追究してました。現代音楽基調だったりトラッディショナルなジャズだったり、一方歌っていたりもします。


そのうちECMからも出るようになりビックリ。



ただしLabel Bleuを聴いていたので「有りといえば有りだな」とも思いましたが。日本で紹介されたBollaniは彼の音楽の中でもそのごく一部でしたが、逆にちゃんと彼の音楽でもありました。


この「I'm In The Mood For Love」が出た頃は個人的Bollaniの関心がMAXでしたが、Venus盤ということで警戒してました。値段も高いし。
吉祥寺のタワレコにて、目当ての欲しい盤が無くて少しテンションが下がっているところで、でも何か見つけたいとあれこれ探していました。このBollaniは試聴コーナーにあったのですが全然Venusスイッチが入ってなくて最後までスルー。諦めて帰る前に最後に試聴。

ヘッドフォンをして間もなく、ソロが始まった瞬間即ノックアウト。さっさと聴けば良かったと思いました。

もっと具体的に言うと、
2.の「Cheek To Cheek」が死ぬほど好きです。
ピアノトリオでの演奏として最高に好みでこればっかり聴いています。ここ5年も。
Keithのトリオのように自由な展開で演奏されていて、3人の歌がこれでもかという位胸に飛び込んできます。正直80年代のKeithに肉薄、いや、タイムに対しての食い付きの気持ちよさではこっちの方が好み。

このアルバムというか、このトラックかもしれません。ここ5年のベストトラック。

このアルバムが出たあとのBlueNoteのライブへ行ったのですが、このベストトラックだらけの演奏だったのを覚えています。最前列、手元の真後ろで見たのですが、音の方が強くてずっと目を強く閉じて下をむいて聴いてました。だ、か、ら、こういう音源はなんとか出してくれませんか。本当,ライブへ行くとミュージシャンのベストを普段ちゃんと聴けているのかと心配になってしまいます。



色々なレーベルから出ているBollani、ちょっとここいらで整理してみました。
ちなみに「凄さ」では俄然上をいくJesper Bodilsen名義の「Mi ritorni in mente」が次点です。





改めて自分はオーソドックスな「歌」が好きだと再確認しています。





お好み度:●●●●● ●●●●●



1. Makin' Whoopee
2. Cheek To Cheek
3. I'm In The Mood For Love
4. Puttin' On The Ritz
5. How Long Has This Been Going On?
6. Margie
7. Moonlight Serenade
8. It's Only A Paper Moon
9. A Kiss To Build A Dream On
10. Honeysuckle Rose
11. But Not For Me


Stefano Bollani-piano
Ares Tavolazzi-bass
Walter Paoli-drums



2006年作品




Chick Corea/From Nothing

2010-10-29 01:39:55 | ジャズ



Chickのソロの中でも特に秀逸だと思っています。

完全ドフリーの愛想なんて全くない演奏で、お蔵入りを自分のレーベルから出すというシリーズのうちの一枚なので、そもそも売り物でもなかったのかもしれないくらい。ジャケだってヒドいもんです。

しかしこれを、これだけを聴きたいと思わせる時というのは今まで何度もありました。


Bosendorferに向かい合って一音をポーンと5秒。そこから展開される情景の凄さ。

音という硬質で光と湿度を含んだマテリアルが、壁を滴る水の様なゆっくりとした引力に引かれて下へと落ちていきます。現れてはゆっくり滴る。浮かんでいたりすぐ消えたりするのではなく、滴る感じ。

もともと3次元的な音のイメージの人だとは思ってましたが、これはもう完全に「物」を出現させている。こういう筆を持った人が音楽を描いている訳です。それはもう他と違って当たり前、と納得させられてしまいます(私にとっては「違う」人なのです)。

ちょっと強過ぎると思えるタッチも、そこに空間を見ているからなんでしょうか。一音の質感の情報が沢山です。

例えば、ギャラリーにこの音楽を流して展示は無し、という状況を作ってみる。ちょっと根気のある人ならば見えてくるんじゃないかと思います。その位、音楽というより,音というより、物。研ぎすまされた音が見せようとする物。

この質感をスパニッシュなリズムやフレーズに乗せて運んでくるのがChickの音楽、ということに気付きます。うーん、本人は意識してやいないでしょうが。

この作品はそんなことを詮索させるのです。



お好み度:●●●●● ●●●○○



1.Part1
2.Part2
3.Part3
4.Part4
5.Part5
6.Part6
7.Part7
8.Part8
9.Synthesis

Chick Corea-piano.synthesizers



1982年作品





秦 基博/Documentary

2010-10-26 23:55:26 | 邦楽




子供が産まれるちょっと前、仕事帰りに1日おきに遠くの病院へ通いながら聴き始めた邦楽、秦基博。2年前か。

これは3作目ですが、今までの2枚も飽きることなく聴いている。
というかここ2年で唯一聴き続けている邦楽だと思う。


声が良い。声に関しては今までで一番好きかも。
曲も良いです。相当上手いと思う。名メロディーメーカー。
歌詞は、、、年齢的に自分は卒業という感じ。


病院通いの頃は結構命について考えてしまう厳しい時期でしたが、その頃聴いていた秦基博はそれをまったく記憶していない。
オーガスタという趣味の良いレーベルが送り出した新人は本当に素晴らしく扱われていて、その聴き惚れてしまう鋼+絹のような声と、数々の名旋律と趣味の良いアレンジに耳を傾けていただけで、単純に楽しんで聴いていたみたいです。


この3作目も期待を裏切らない出来です。
特に「アイ」という曲が凄く好きで、弾き語りバージョンしか知らなかったのですがここで初めてシングルバージョンを聴いてまた新鮮に楽しんでます。これは歌いたい。歌いたい時日本語って良いなぁと思う。カラオケ行きたい、子供ら連れて。そろそろ行ける歳かも。しかしこれ、歌詞はやっぱり少し恥ずかしいんだけれども。


、、、今までの2作を思いながら改めて、自分にとってこの人の音楽は不思議と消費されない。今後も長いこと聴いていくことになるのかな、と思う。最近結婚したみたいだから子供が出来たあとなんか、また楽しみですね。





お好み度:●●●●● ●●●○○






1. ドキュメンタリー
2. アイ
3. SEA
4. oppo
5. 猿みたいにキスをする
6. Halation
7. 透明だった世界
8. 今日もきっと
9. パレードパレード
10. 朝が来る前に
11. Selva
12. アゼリアと放課後
13. メトロ・フィルム (Album ver.)





中村拓志/微視的設計論

2010-10-25 10:47:06 | 住宅・建築・家具



この人の作品が凄く好きです。建築家、中村拓志さん。同い年(笑)。

好きになるきっかけは「Dancing trees,Singing bird」と「HOUSE C 地層の家」。

建築家特有の過剰インテリジェンスを感じさせない、楽しさと喜びで一杯になる作品ばかり。
この前には「恋する建築」という本を出していて、その爽やかさにど肝を抜かれました。

今回はその素敵な作品群の発想のスタート地点がもっと具体的に明かされています。
その視点と発想は非常に刺激的で、読んでしまえば普遍的とも思えることですがその「気付き」が本当に凄い。
そして良いと思うのは、これらの文章より実際の作品の方が更に面白いということ。
つまり頭でっかちではなく(充分天才的ですが)、優れた感性に忠実に仕事をしているということだと思います。
建築家は逆が多いと思うのでこういうところが更に尊敬です。

久々Newsをチェックしたら羽田空港ターミナル(どこからどこまでかは未チェック)までやっているではないですか。
あれこれ世界のコンペでも勝っているようだし、どこまでも行って下さい。

本当、この人の作品は共感出来ますし何より建築が改めて好きになります。
建築に限らず音楽やアート関係で「ミニマル」に行き詰っている人がいたらお勧めです。

建築界のトップはいつの時代も夢がありますね。今後もチェーック。






Fred Hersch+Bill Frisell/Songs We Know

2010-10-23 18:58:35 | ジャズ




再びFred Hersch。

ソロの印象とそれほど変わらないプレイをしています。
一方のFrisellも同じくいつもの感じです。
お互いを全く殺さず、上手い具合に共存しています。相性良いんでしょうね。
「空中系」という風に勝手に括ってしまいましょう。

ルームシェアしているがいつも静か。でも良く聴くと結構突っ込んだ話をしていて案外熱いという、そんな感じです。

やさしいメジャーなスタンダードを取り上げているので聴きやすく、
構えて聴いているとちょっと他にも何かやりたくなる感じになり、
本など読み始めると耳を奪われ、という厄介な存在感です。

しかもいつも新たなポイントで音が飛び込んできます。
結構凄く深い展開じゃんかとか、
こんなに力入ってたっけとか、
しっかり考えて集中して作られていると思わされます。

これを集中して向き合っていると気付くというわけでなく、
何気に聴いていると気付くんだから不思議です。
不思議系、空中系。


しかしこのくらいのスタンスで居てくれる音楽はすごく心地良く、
結果長いこと定期的に聴くことにもなっているので、これはやっぱり名盤です。

あとジャケもすごく好きです。nonsuch盤はいつも良いです。







お好み度:●●●●● ●●●○○




1. It Might As Well Be Spring
2. There Is No Greater Love
3. Someday My Prince Will Come
4. Softly As In A Morning Sunrise
5. Blue Monk
6. My One And Only Love
7. My Little Suede Shoes
8. Yesterdays
9. I Got Ryhthm
10. Wave
11. What Is This Thing Called Love?


Fred Hersch-piano
Bill Frisell-guitar


1998年作品

Alan Broadbent/You and the Night and the Music

2010-10-22 19:57:08 | ジャズ



美味い。もうそれに尽きる。そんなんじゃ駄目か。
再度登場のAlan Broadbent。ただのピアノトリオです。

それなりに弾きまくって、解りやすい曲で解りやすいフレーズばっかりなのに何回聴いても不快にならず。緊張感あるのにリラックスしていて、まだまだ全力でないような気もするのに嫌味にならず。

流し聴きさせるようなジャケと選曲とメンツのようで、全くそれはさせてもらってません。全くもって最高です。

「2」の美しさやら「3」の躍動やら、なんやかんや書くのももういいか。



しかし今ふと思ったのですが、最近は10年ほど前より後期Evansはプロアマ共ファンが増えていませんか。今やEvansはそれぞれの時期に違った音楽性でそれぞれの支持を受けて生涯のキャリアを愛されているんですね。個人的に後期は弾きすぎ荒すぎ寂しすぎという感じで好きでなかったのですが、最近後期の影響と思われるトリオをやたらと多く聴き、良いなぁと思っております。このトリオもそのひとつかも。もっと垢抜けてはいるけど。

あと何気にBrian Brombergを聴くのは久しぶりだったりするんですが、改めて結構好きだなぁと。初めて彼を聴いたのはDave Gruisinの「Homage To Duke」でした。急に蘇ってきましたが今でも好きな作品です。やたらと音質が良かったですね。久々聴いてみよう。



、、、このAlan Broadbent盤でなにやら猫にマタタビ状態となってしまいました。酒を飲んでいるわけではないのですが少し酔っています。どこから聴いても単なるピアノトリオというジャズですが、それ以上に美味い音楽です。これ。




お好み度:●●●●● ●●●●○


1. You And The Night And The Music
2. I Wish I Knew
3. With The Wind And The Rain In Her Hair
4. Baubles, Bangles, And Beads
5. Ceora
6. What's New
7. Dearly Beloved




Alan Broadbent-Piano
Brian Bromberg-Bass
Joe La Barbera-Drums



2003年作品

音楽データの格上げ SONY Walkman NW-A845

2010-10-21 20:14:03 | 日常


これを使い始めて半年程経った。

初代のiPodNanoからの乗り換え。会社でデータ系のウォークマンは今SONYが凄いと聞いたので、色々調べて乗り換えた。もともとSony好きだし。

家はMacなのでこのWalkmanのソフトは使えず、データの取り込みは原始的な方法を取らないとならないなど面倒な点はあるにせよ、これに替えて良かったと思う。

まず、音質が全然違う。iPodをステレオなどにつないだ時音質の劣化はハッキリと解るものだったがこれは結構頑張っている。付属のヘッドホンでもそれは解る。ECM系の余韻が重要な音源が聴きたくなるほどに。

そしてディスプレイが美しい。バックライトで映されて下手すると本来のジャケより美しく感じる。小ささをカバー出来てる。

おまけに自分はあまり普段電車に乗らないが、たまに乗る時にノイズキャンセリング機能が効く。もともとヘッドフォンが耳栓みたいなところがあってそれだけで音が結構遮断されるんですが、ノイズキャンセリングをオンにするとかなりの静寂に包まれる。よって音量を上げずに済んで、周囲にほとんど音が漏れることなく大音量で聴ける。画期的。
一度車の運転で試してみたが、エンジン音がほぼ聴こえなくなった。コンパクトカーがセルシオ状態(今はLS?)です。危険なのでもうやってないですが。

最後にデザインが好みです。ゴチャゴチャしたデザインが多かったところにiPodのデザインは圧倒的に優位でしたが、このウォークマンは大分品が良くなりました。

欠点はWindowsありきという部分と、あと充分だと思って16GBのモデルを買ったのですが、64GBのものにしておけば良かったと思うこと。結構足しては消しての繰り返し。すべてこれに詰め込みたい気分です。そのくらい気に入っています。



これを買って以来、借り物をCD-Rに焼いたりしなくなりました。CDの代用ではなくなったのだと思います。ジャケットも美しく表示されるので格が落ちた気がしない。丁寧にパッケージングされている気がするのです。

今は子供に邪魔されてじっくりステレオに向き合って聴くとか出来ず、寝静まってからヘッドフォンで聴く生活なので非常に心強いアイテムとなっています。

ゆっくりと音楽をスピーカーで聴ける日までこれでなんとか我慢出来る。あとはちょっと良い値段のする密閉型のヘッドフォンを検討中です。

Charles Lloyd Quartet/Mirror

2010-10-20 20:08:36 | ジャズ




驚きはJason moranです。この人は結構前のリーダー作「Soundtrack to Human Motion」を聴いて以来で、Charles Lloydと絡んでくるイメージではなかったです。

当時は期待した割にはいまいち入り込めず、今ちょっと聴いてもやっぱりピンと来ません。


Charles LloydはコンスタントにECMから出し続けていてますね。以前Brad MehldauとBilly Higgins目的で「The Water Is Wide」を買いましたが(ほんっっとうに良い作品でした)それ以降は特にチェックしていませんでした。

今回はKurt Rosenwinkelのトリオ、ReflectionsでのEric Harlandが最高に良い仕事をしていたので、おそらく今までと変わらないであろうLloydのなんというか、静寂を起点とした音世界に絡むHarlandを期待した形での買いです。

「1」からして期待通りの音、というかこのピアノは危うい。なんという危うい音選び。それと潤い感と一音一音の密度が凄い。Jason Moranはこういう音を出す人だったのか。10年ぶりに聴くので変わっているのか、10年前の自分は気付かなかったのか。

ドラムレスで進むこの展開、集中してお互いが音を厳選してトツトツと置いていく、最高にジャズしています。ものすごく危ういバランスで3人が積み木をひとつひとつ積み上げて行くのを見守るような気分です。

「2」から待ってましたのHarland。暗闇にボッと火が灯ります。いきなり部屋の電気を付けてしまうようなことはしません。ゆらゆらとうごめく火のような、時間がゆっくり感じられる明かりです。やっぱり良いです。

MehldauがJason Moranに変わって「The Water Is Wide」を超えることはないと思っていましたが、ありました。そんなに単純なものではないですね。近年のMoranのリーダー作が凄いかどうかは解りませんが、このカルテットの中でのMoranは本当に素晴らしい。Charles Lloyd Schoolで活かされているのかもしれません。

凝ったアレンジもキメもない。アップテンポな曲もない。
それでこれだけ聴かせる音楽を若手だけではなかなか出来ないでしょう。

驚きや仕掛けに満ちた現代の建築を見ることが多い中で、不意に人知れず存在する飾り気のない、かつ質素で美しい生活を感じられる山荘を見かけたような気分です。


もう一作このメンバーの作品があるんですね。チェックしないと。
あとMoran絡みもいってみようかな。


お好み度:●●●●● ●●●●○


1.I Fall in Love Too Easily (For Lily)
2.Go Down Moses
3.Desolation Sound
4.La Llorona
5.Caroline, No
6.Monk’s Mood
7.Mirror
8.Ruby, My Dear
9.The Water Is Wide
10.Lift Every Voice And Sing
11.Being And Becoming, Road To Dakshineswar With Sangeeta
12.Tagi



Charles Lloyd-tenor, alto saxophone, voice
Jason Moran-piano
Reuben Rogers-double bass
Eric Harland-drums


2009年作品

山中千尋/Forever Begins

2010-10-19 23:45:15 | ジャズ



以前この人のブログ見て軽くショックを受けました。

「家で一人やることといえば、部屋を暗くしてろうそくの炎を操ること」
なんて言っていました。

本気か冗談かわかりませんが、しかし僕にとってはこの怪しい人柄がそのまんまこの人の演奏への信頼感になっています。情熱大陸とかも見ましたが、どこか自分を追いこんでいる危うさは芸術家としてプラスですよね。ジャズなんて特に危険な人の方が良い演奏になってしまう様に思います。平和ボケの現代日本において貴重な人です(完全に褒め言葉ですので)。

結構前のWhen October Goes以降はそれ程聴きこんでいなかったので今回も迷ったのですが、ちょっと評判が良さそうだったので聴いてみました。

ブログだけ見てると一体どんな音楽をやる人なのかと思ってしまいますが、演奏はとてもシンプルでストレート、特に今回は他の楽器無しの純粋なピアノトリオです。



「1」は「ハァー!こうくるかー」と言ってしまったくらいベタなテーマで、泳げたいやき君的「泣き」を放ってます。
ソロがまた完璧で、スタジオレコーディングにおけるはっちゃけ度としてこれ以上の展開は無いんじゃないかと思います。来てほしいように来てくれて痛快極まりないです。


「3」は筒美京平(僕にとっての歌謡曲デビュー曲、CCBの「Romanticが止まらない」を思い出してしまいました。)の歌謡曲をアレンジしたとのことですが、このイントロのさわやかさ、風速具合が素敵で、アレンジに対するセンスを感じてしまいす。


この二曲が素敵すぎてしばらく、A面泳げたいやき君、B面歌謡曲というシングル盤のように聴いていました。両面当たったEP盤(古い)のような充実感です。


最近やっと通して聴いてますが、全編日本人好みのテーマ曲が続く印象ですね。
アルバムタイトル曲はBrad Mehldau Trioの「Exit Music」とかを思わせます。When October Goesの中で「Plum The Cow」というトラックが凄く好きなのですが(ついでにjeff Ballardもメチャメチャカッコいい)、それ以来の現代的な凄みを感じる演奏です。もっと言ってしまえば思いっきりMehldauしています。Mehldauは今の時代の指標なのでしょうね。

それにしてもアレンジが結構凝っている割には煩くないのは不思議。知性と野性のバランスがいいんでしょうね。というか知性先行なんだけどそれをわかって抑えているという印象。

ちょっとブログと演奏はギャップがあるのですが、それだけにこれらの正攻法に聴き手を圧倒する音楽にはしたたかな狙いを感じます。この辺りがピアノトリオの一番おいしい所でしょ、というような。僕なら「はいそうです」と答えますが(笑)。

レーベルが大手なので厳しいでしょうが、一度陰でこっそりやっているであろう炎を操るようなフリーでも出してもらいたいと思います。今作はシンプルなトリオで才能の全開っぷりを楽しませて頂きましたが、まだまだ猫を被っている気がしないでもない、と思っています(無い物ねだり?)。






お好み度:●●●●● ●●●○○



01.So Long
02.Blue Pearl
03.Summer Wave
04.Cherokee
05.w.w.w.
06.Good Morning Heartache
07.Saudade E Carinho
08.Forever Begins
09.The Moon Was Yellow
10.Avance

Chihiro Yamanaka-Piano
Ben Williams-bass
Kendrick Scott-drums

2010年作品