チケットがね、天から降ってきたんですよ。
名古屋御園座、毎年10月恒例「顔見世」
今日(22日)の昼の部は、JTBとある支店の貸切だそうで、
JTBにお勤めのご主人をもつ友人(彼女も元勤務)、
いわゆる売れ残りの斡旋を受けたそうで、
「半額だから・・」
のひとことに間髪入れず「行く!絶対行く!ぜひ行かせてっ!」
うわ~~~♪お初のナマ歌舞伎観劇、お初の御園座だよ~~♪
それだけで天にも昇る心地のわたしに届いた、数日後のメール。
「一番前の席だってよ~」
半額でかぶりつきのお席の「御観覧券」がね、天から降ってきたんですよ。
歌舞伎の神様がね、「いらっしゃ~~い♪」って呼んでるんですよ。
いかいでか!!!
というわけで、その日がとうとうやってまいりました。
10月22日御園座
<昼の部>
一、歌舞伎十八番の内 毛抜(けぬき)
二、色彩間苅豆(いろもようちょっとかりまめ) かさね
三、権三と助十(ごんざとすけじゅう)
一、歌舞伎十八番の内 「毛抜(けぬき)」
<あらすじ>
文屋豊秀の許婚小野家の姫錦の前は、髪の毛が逆立つ奇病のため、
婚儀が進まず、実情解明のため秀家臣粂寺弾正(くめでらだんじょう)が
小野家を訪れる。目通りを待つ間に、鉄製の毛抜が踊り出すのを見て、
天井裏に磁石があると確信。姫の奇病の原因も姫の鉄製のかんざしと
気づき、槍で天井を突き、磁石のからくりを暴き、小野家乗っ取りを
企む悪人の根を絶つ。
粂寺弾正: 尾上松緑
八剣玄蕃: 片岡市蔵 ほか
わかりやすくて奇想天外なストーリーの面白さと、
舞台セット、衣装、小道具、多彩な見得など、歌舞伎的な面白さが満載!
初っ端から「これぞ歌舞伎だ~♪」ってテンション上がります(笑)
弾正役の松緑さん。(この方、前の辰之助さんですよね?)
豪放で茶目っ気もあり、頭がキレて腕も立つ弾正。
松緑さんの雰囲気や声は、弾正にぴったりな感じでした。
弾正のいかにも勇壮ないでたち、衣装がとても立派です。
裃、袴は、黒・金・銀をあしらった碁盤の斬新なデザイン。
紋は、演じ手は松緑さんだけど成田家さんに敬意を表して、
成田屋さんの三升なのだそうです。刀の鍔まで三升でした。
衣装などの美しさは、やっぱりナマで観ると感動しますね♪
毛抜が突然動き出すのを見て驚く様を、いくつか変わった見得で
見せてくれるのが面白いです。そこまでする?みたいな(笑)
この演目では、黒衣ではなく、素顔に紋付袴姿で出てくる後見さんが
演出や役者さんのお世話などに大活躍です。
何しろ、動くはずのないモノが動いたり、
お姫さまの髪が逆立ったりするんですからね。
(逆立つ髪ってどんなかな~と楽しみにしていましたが・・
これはちょっと不発、そりゃないだろみたいな、笑)
弾正さまに、堂々とお茶まで差し上げていました、ちゃんと三升の紋
入りのでっかい朱塗りのお湯呑みで。
ストーリーと弾正の動きがとにかく面白いのですが、
それゆえ?ほかの方の印象がまるでなかったような・・(笑)
二、色彩間苅豆(いろもようちょっとかりまめ) かさね
<あらすじ>
与右衛門は深い仲の腰元累(かさね)を捨てて逃げ出したが、
累は与右衛門に惚れているうえ子まで宿しているので、
追いかけてきて、とうとう木下川堤で与右衛門に追いつく。
そこへ鎌の刺さった髑髏と卒塔婆が流れてくる。
与右衛門がその卒塔婆をへし折り、髑髏から鎌を引き抜くと、
たちまち累の顔が醜く爛れ、片足まで不自由になってしまう。
髑髏と卒塔婆は、実は与右衛門が殺した累の父・助のものであり、
その累の姿は、まさに助が殺されたときの有様だった。
累は与右衛門にすがりつくが、与右衛門は鎌で累を殺してしまう。
立ち去ろうとする与右衛門を、累の怨念が引き戻す。
累(かさね): 尾上菊之助
与右衛門 : 市川海老蔵
ああ~~観にきた甲斐がありました!
最初の「毛抜」とはまったく違う歌舞伎の面白さです。
ためいきが出るくらい美しくて、終盤はほんとに怖い!
以前三谷幸喜さんがパルコ歌舞伎のときに、
「(歌舞伎で)これは面白い!と思ったときには、(演劇とか映画とか
いろいろジャンルはあるけれどその中でも)おそらく最上級の面白さだと
思います。それは僕たちが日本人だから感じられるものであると・・」
云々おっしゃっていて、至極納得しましたが、
この怖さって、まさにそういう類のものじゃないかと思います。
菊之助さんの累が「もうどうしてっ!?」てくらい美しい!!
この演目は舞踊なので、かさねには一切台詞がなく(記憶では)
すべて舞で表現されます。
ふたりの出会いから、子を身ごもっていることを仄めかすなど・・
イヤホンガイドのおかげで、所作のひとつひとつが何を表現して
いるのかがよくわかり、こういうものを生み出した先人たちの、
表現の豊かさとか巧みさみたいなものにもう感激しまくりました~。
ところで、累が与右衛門に殺されるとき、
跪いた累が後ろにぐーーーっと腕をつかないで)ブリッジするみたいに
反り返るところがあります。
あんなお綺麗なお姿で、むちゃくちゃスゴイです(笑)
思わず客席から感嘆の声が起こりました。
注目の海老蔵さん、色悪の典型与右衛門・・まんまじゃん(笑)
歌舞伎若葉マークなので、この海老蔵さんの与右衛門が
うまいのかまずいのか、そんなことはまったくわかりませんけど・・
やっぱり華がある役者さんだな、とは思いました。
この与右衛門なんて、海老蔵さんにはぴったりの役なんじゃないですかね。
さて、その海老蔵さんですが、白塗りに黒の紋付を端折った姿。
大柄なイメージだったのですが、思ったより細くて、
身体の大きさをまったく感じなかったのが、ちょっと意外でした。
でも、後半激しく立ち回るときの御々足の筋肉の美しいこと、
かぶりつきでほほぅ!でした。(友人もおんなじこと言ってた、笑)
前半、もう少し冷たく悪い感じが漂ったほうがよかったかも、です。
累を殺そうとするあたりから、舞台は静から動に変わり
累と与右衛門、すごい迫力で相対します。
累、あんなお綺麗なお姿で、かな~りしぶといです(笑)
与右衛門は、死んだ累をそのままにして、花道を去ります。
すると、橋の上で死体となった累の右手だけが、かすかに動き始めます。
(これがめちゃめちゃ怖い!)
その指先のかすかな動きに手繰り寄せられるように、
与右衛門が花道を、もがきながら引っ張り出されてきます。
「連理引き」というそうですね。
言葉は綺麗なんだけど、怖いのねぇ・・
与右衛門がもがけばもがくほど、累の怨霊が激しく絡みつくようです。
前半の切なく美しく艶かしい情景がウソのような激しいシーンです。
ラストは、累の怨霊に相対する与右衛門(実際は正面を向いて、
見得を切る)と、その後ろにいつのまにかすぅーーっと立ち上がった
爛れた顔に無表情の累。
ぎゃあああ!めちゃめちゃ怖ーーい!
けれど、めちゃめちゃ美しいラストシーンでした。絵になるなあ~~♪
前の「毛抜」のときにはなぜかなかった、大向こうからの掛け声。
御園座では聞けないのか??と思っちゃった。
この「かさね」ではちゃ~んと出ました。
やっぱり、コレがなくちゃね♪♪ と思いました。
三、権三と助十(ごんざとすけじゅう)
<あらすじ>
江戸神田橋本町の長屋での話。
無実の罪で牢死した小間物屋彦兵衛の倅、彦三郎に同情した
長屋の権三と助十、そして長屋の大家さんまでもが、
彦兵衛の無実を晴らそうと、知恵を絞って大騒動。
すったもんだの末、真犯人の勘太郎が捕まり、
彦兵衛も実は牢死しておらず、無事戻されることになる。
権三 : 市川團十郎
助十 : 尾上菊五郎
権三女房 : 中村魁春
家主六兵衛: 市川左團次 ほか
「毛抜」「かさね」とはまたガラッとタイプの違う演目。
これだから面白いんですね~。
これは、いわゆる世話物と呼ばれる話で、
大岡越前守で有名な「大岡政談」のなかの一件をベースにして、
江戸長屋の住人たちを中心に描いた喜劇です。
う~~ん。
面白いのだろうな~とは思いましたが・・
わたし、小説やドラマでもそうなのですが、町人モノがちょっと苦手。
端から避ける傾向にあるせいで、いいモノに出会ってないだけかも
しれませんが・・いや、きっとそうですね(汗)
なので、この演目は気分的に乗りきらぬものがありまして・・
正直なところ、途中で意識が朦朧としてきたし、
観るべき(楽しむべき)ところを失していると思います(恥)
でも、いつかこういうものも楽しめるようになりたいな、とは思います。
神田橋のとある長屋で、恒例の「井戸替え」を長屋の住人総出で
行うところから始まります。ここで面白いシーンが。
井戸替え(簡単にいうと、井戸のなかの掃除)のための長い綱を、
綱引きのごとく、老若男女みんなして引っ張るのですが、
舞台上手から、ずーーーっと花道の先まで、総勢30人ほどの
役者さん(子役ちゃんも数人)が綱を引いて登場します。
この「顔見世」公演にこ~んなにたくさん来ているの??とびっくり!
いちばん面白かったシーン。(ここかよっ!爆)
團十郎さんの権三と、菊五郎さんの助十もいいのですが、
わたしは、権三の女房おかん(魁春さん)と助十の助八
(河原崎権十郎さん)のほうが観ていて楽しかったです。
どうも女形に目がいってしまうんですね(笑)
魁春さんの女房、匂い立つような姫さまや奥勤めの老局ともまた違う
女っぷりが「どうしてこうも自然かな~」と面白くてたまりません。
そう思うと、團十郎さん演じる生粋の江戸っ子で怠け者の駕籠担ぎ、
わたしには、なんとな~く違和感。
團十郎さんは、やっぱりせっかくだから派手で豪快な役で
観たかったな~。(ま、これからの楽しみですね♪)
あ、猿回しの与助の猿が面白かったですよ(笑)
ただのお猿の人形なのに、妙にリアルだったの。
権三、助十をはじめとする長屋住人を巻き込んだ騒ぎは、
結局、名奉行大岡越前守の仕組んだ真犯人あぶり出し作戦で、
真犯人がみごとに捕まり、無実の罪をかけられていた勘太郎は
無事帰されるというハッピーエンド。
大岡越前守かい・・
なんだかウルトラC級の展開に苦笑。
しかしこれが歌舞伎じゃん。そういうのを昔の人は喜んで観たわけよ。
ということで、あっぱれあっぱれ(爆)
ほんと、よく観てないのバレバレな感想しか書けません、すみませんっ。
初めての歌舞伎、ほんとに楽しかったです。
勢いで夜の部まで観たかったなあ!
夜の部は「鳴神」「絶陀(だったん)」「義経千本桜から川連法眼館の場」
またまた違う楽しさが味わえそうですよね~。
とうとう歌舞伎道の味を占めてしまったので、
これからぼちぼち、楽しんでみようかなあと思います♪♪
先輩がた、よろしくお願いしま~す。
なかなかナマでは観られそうもないのが残念ですがね~。
名古屋で観られるようなときには、次からは自ら喰いつこうと思います♪
これからボチボチ(!?)・・・極めて行かれるのでしょうね~!
こないだmidoriさんに
「しろうさんもいよいよデビューらしいよ~。
あ~~あ。しろうさん極めだしたら早いからさ~
もう先輩ズラできないわあ・・。」
・・・とボヤいて(笑)いたところなんですよ(笑)
またいろいろ教えてくだされ。がはは・・・。
今度会う時がめちゃ楽しみだわ♪♪
あの冷静で分析文体のしろうさんが、コレですもんねえ!
↓
> 「もうどうしてっ!?」てくらい美しい!!
> けれど、めちゃめちゃ美しいラストシーンでした。
実は私もビギナーにつき、このなかの演目は「色彩間苅豆」しか見てません(泣&笑)。海老蔵&菊之助でこれが見られたなんて、羨ましいぞ!! 反り返るところを初めて見たとき、歌舞伎の役者さんって体もすごい鍛えてるんやなあといらんことを考えました(笑)。
> とうとう歌舞伎道の味を占めてしまったので、
おお~、すごいです。早いです~!!
たしかにウルトラC級のジ・エンドもしょっちゅうあったりするけど、そんなことも含めてこれからもいろいろと楽しめたらいいねっ♪
お互いに未知の分野につき、こちらこそこれからもいろいろ教えてね。また大阪にも見においで~。なんてねっ!
>極めだしたら早いからさ~
熱しやすいだけです(笑)極めたりはできません。
あっという間に冷めたら、大笑いしてやってください。
今度会うときには、話に乗っかれるでしょうか?
でも、さとしバルジャンでは乗れないわ・・(笑)
ムンパリさま♪
パンフのなかに、各演目の上演記録が掲載されていて、「かさね」は今年4月松竹座、愛之助・孝太郎
とあったのでびっくり。
きっとご覧になったんだろうな~と思っていました。
さっそく読んでまいりましたよ、当時のレポ。
今ならわかる!(笑)
ムンパリさんの歌舞伎レポも、まだ初々しい感じですね~(笑)
今度は、愛之助さんをちゃんと歌舞伎で観てみたいなと思います。(先日のBSのは、ほんとにちょこっと
だけでがっかり~)
初歌舞伎観劇の大作レポ、楽しく読ませていただきました。
最前列のかぶりつきとはうらやましい。
それに演目もやはり「顔見世」だけあってリキ入っていますね。
> 注目の海老蔵さん、色悪の典型与右衛門・・まんまじゃん(笑)
私も去年、こんぴら歌舞伎の金丸座で海老蔵さんの与右衛門観て、
「ぴったりじゃん!」と思いました(笑)。
色悪って、美しくて色気もないとできませんから、今の若手なら
海老蔵さんか染五郎さん(贔屓目!)、愛之助さんあたりかな。
思ったよりほっそりというのは、「ドラクル」でずい分減量
なさったと聞いていますので、その影響でしょうか。
「かさね」の殺しの場面の様式美は本当にこれぞ歌舞伎という
極めつけの美しさですよね。それを海老蔵さんと菊之助さんという
当代一の美しいお二人が演じられるのですからなおさら。
いや~、最初からいいものご覧になり過ぎたのではないかしら?
お返事遅くなりました。
歌舞伎って、いろ~んな面白さがあるんだなあ!と
実感してまいりました。
みなさん、ハマるわけだ(笑)
冗談でなく、日本人でヨカッタと思いました。
エビさん、「ドラクル」ダイエット効果(?)
だったのですね。
じゃ、もしかしたら次に観るときには、
イメージどおりにデカいかも?(笑)
どちらが良いのかしら?
>いや~、最初からいいものご覧になり過ぎたのではないかしら?
え~、そうなんですか!?
それは喜んでいいのか悪いのでしょうか?(笑)
でも、きっともっともっと奥が深いのでしょ?
歌舞伎の世界って。