大石さん、あっぱれーー!!
この一豊にして、その描かれ方がひじょ~~に気になっていた場面、
みごと納得のいくものにしていただけた。
すでにわが手を離れた掛川の城の外で、家臣団を鼓舞する場面も、
一豊らしく、とても感動的だったし。なによりかっこいいーー!!
決戦を前に、すでに興奮状態はピーク。
「徳川さまにお味方すると決めた以上、とことん尽くすがよい」
その覚悟を、まず千代が身を以って示した。
三成からの書状を開封せずそのまま差し出し、さらに大阪屋敷を攻められし折は、
徳川に二心なきを示すため、千代は自害して果てる覚悟、との千代直筆の書状。
「千代は自害して果てる」の言葉に、殿、思い切り動揺・・。
聞いてはおらんぞっ・・殿の胸の高鳴りが聞こえるかのよう。
しかし、この千代の機転とあまりに潔い忠節が家康の心を動かし、
とうとう三成を討つことに、意を決しさせる。
用意周到、狡猾に事を運んでいるかのような家康とて、
此度こそは、待って待っての武将人生すべてを懸ける最大の戦、
情勢の不透明さに惑い、焦り、諸侯を猜疑し不安にかられるのはまったく当然、
それゆえに、ひとことの重みに感涙するほどの喜びも感じる。
人間くさい家康が、演巧者西田さんによって、さらに面白く魅力的に。
そして、「諸侯の心は薄野のように西へ東へと揺れておる」なかでの小山評定。
前夜意を決しかね大暴れの福島正則が口火を切って、
家康方につくことを堂々表明。続いて細川忠興。
殿もそれに続き、居並ぶ諸侯がみな徳川方として戦うことを誓う。
軍議に移り、福島が先鋒を務め諸侯が清洲に向かい軍を進めることに決まる。
そのあと。
父吉晴による秘策を携えた堀尾家嫡男忠氏、迷いから臆して言葉を発せない。
見兼ねた殿が、すっくと立つ!
そのただならぬ景色、かねてより殿と山内家の誠実さを認めている家康が、
殿を嘲笑うかのような家臣らを抑え、その言葉に身を乗り出す。
家康の、殿に対して募る信頼感を演出したシーン、みごと!
「徳川さまに、わが城差し上げまする。城も領地も、お渡しいたしまする。
存分にお使いくだされ」(言ったーーー!)
「お味方すると決めた以上、城も所領も捨てまする」(かっこいいーー♪)
妻千代とともに捨て身の覚悟を示した殿の言葉に、家康はこのうえなく感激し、
それを見た忠氏ほかの諸侯も同様に、城、所領を投げ出すことになる。
殿のこの言葉で、家康は万力を得た。
がっしりと殿の手を握った家康と、その家康の表情を見つめる殿の表情がすてき。
大石さんいわく、
「戦場でしか功を挙げられなかった一豊が、
初めて<言葉>で家康の心を動かした」瞬間。
あとで、ほっと肩を撫で下ろす殿が・・いつもの殿に戻ってた(笑)
そういや、増田氏に啖呵をきったあとの千代も同じだった。
結果として、忠氏=吉晴の秘策を、殿が我がものとしてしまったわけだが、
このドラマでこれまで描かれてきた通りの殿の誠実さが、
殿にそうさせた、させざるを得なかったように描かれたことに脱帽!
(原作のようなシチュエーションのままでは、この殿には違和感ありすぎ。
この殿なら絶対しない、と思っていたので。)
「城を明渡す」ことでこれ以上ない忠誠心を示すという、
古くからの朋友茂介(吉晴)の妙案に、殿は舌を巻く。
味方する以上、とことん尽くせという千代の覚悟にも通ずる。
ただ、まだ若い忠氏にはそこまでの覚悟がつかない。
評定の場において、殿に促されても、どうしても口を開けない。
忠氏のその姿を見兼ねて、殿が意を決する。
徳川に真っ先に味方することを決めたにもかかわらず、太閤への恩義も捨てきれず、
隠居を決めた茂介の苦渋の決断を、誰よりも知る殿。
今、忠氏をして徳川への忠義と覚悟を示させんとしている茂介の気持ち、
誰より理解するのは、息子忠氏ではなく、朋友一豊だろう。
茂介の思いを決して無駄にしたくない気持ちが、殿を突き動かしたのだと思う。
長き男の友情、ややいびつなれど(笑)ここにまた。
・・という解釈は、美しすぎだろか。
評定のあと、忠氏に謝る殿。しかし、忠氏の言葉がよかった。
己のふがいなさを恥じ
「かような評定の場でも、すでにひとりひとりの戦は始まっていること、
しかと学び申した」
さすが吉晴の息子!(感涙)賢く謙虚で心が広い。
殿は依然複雑な表情だったが、
その息子が言うとおり、殿の成したこと、朋友茂介も喜んでくれると思う。
さて、いよいよ西進。
雨の降りしきるなか、すでに家康のものとなった掛川城には入ることはできず、
山内軍は濡れねずみ。疲労も重なり、不満や不安を口にする家臣が出てきた。
そこで、殿。
家臣を前に馬上より、家康に見せたのに負けないくらいの、一世一代の名演説!(?)
「われらが徳川さまを勝たせるのじゃ」
「わしは運が強い!みなもその運を信じろ。」
そして家臣ひとりひとりの名を呼び、ひとりひとりの顔を見ながら・・
「そなたらが討ち死にしときには、必ずや子を立ててやる。
子がなくば兄弟を、兄弟がなくば親類縁者を探し訪ねてやる。
必ずや、必ずやその功に報いる」
「此度わしは死力を尽くして戦う。
みなの者、死に物狂いでともに戦おうぞ!」
やればできるではないか~~!
すばらしく上手の大将になられた(感涙)
雲上で吉兵衛が顔をくしゃくしゃにして笑っていよう。
穏やかに、ひとりひとりに語りかけるように説き、
家臣の名を呼び始めたところから、涙が出て止まらなかった。
かつての吉兵衛の言葉が、完全に殿自身の言葉になり、
比類ないほどの熱と力を帯びていた。
殿の迫力のお顔・・最高♪
殿、いつのまにか、言葉で家康の心を動かし、
言葉で、家臣の心を奮い立たせ、ひとつにまとめ上げられるほどに。
屈指の名シーンがまたひとつ。
東軍は清洲城、西軍は大垣城にて、木曽川を挟んで睨み合いが続く。
清洲にて、さまざまに立派な甲冑姿の武将たちが、
依然江戸を動かぬ家康に焦れ、ひと悶着。
えらくしょぼい軍議の様子に、あのご立派な兜・・
なんだか「世界のクワガタ・カブト展」みたいだったわ(笑)
(兜の前立は、それぞれの武将の主義・願いを象徴するものだとか。
殿のそれは、神主さんが振るアレ(名前知らない~)みたい。
それって「神頼み」ってことーー?有り得そうで笑える)
西軍についた小早川秀秋は、高台院に東軍に寝返ることを示唆される。
家康は、依然豊臣恩顧の諸侯の本心を怪しみ、様々に試して窺っている。
三成は、己の正義に心酔し、西軍諸侯の心を掴み損ねている。足元から
崩れつつあるのに、まったく気づかない。
「ほかの者が(三成の)正しさを見て、己の欲深さ、小ずるさを
焙り出されるようで、嫌になる」
宇喜多秀家の言葉は、まさに当を得ている。(これって、結構人間の本質的な
心理のひとつじゃないかと思う。)
東軍家康は、諸将に異心なきをしかと確認のうえ、とうとう江戸を発った。
西軍三成は、分裂の危機をはらみながらそれに気づかず、
関ヶ原にて、東軍を迎え討つために進軍。
いよいよ、決戦!
「功名が辻」視点が、いまや楽しみに!