「体温超えの気温」にどう対処する?
ー40℃越えの日の熱中症対策を漢方的に考えるー
近年、7月から猛暑日が続き、40度を超える地域も珍しくなくなってきました。「まるでサウナの中にいるような暑さ」「外に出た瞬間、息が苦しい」といった声も聞かれる中、私たちの身体には過酷なストレスがかかっています。特に注目すべきは、“気温が体温を超える”という状態。体の中の熱を外へ逃がす仕組みが機能しづらくなり、熱中症リスクが一気に高まるのです。
では、どうすればこの危険な暑さから身を守れるのでしょうか? この記事では、西洋医学的な熱中症対策とともに、漢方の視点「清熱(せいねつ)」「養陰(よういん)」「益気(えっき)」の知恵をもとに、体と心のバランスを守る方法をご紹介します。
■ 40度超えの日、体はどうなる?
通常、私たちの身体は、汗をかき、その汗が皮膚表面で蒸発することで熱を逃がしています。しかし、外気温が体温(およそ36.5〜37度)を超えると、汗をかいても気化しにくく、体温が下がらないという状態になります。しかも湿度が高いとさらに汗の蒸発効率が落ち、「発汗→冷却」という自然な体温調節機能が働かなくなるのです。
その結果、体に熱がこもりやすくなり、軽度の脱水から重度の熱中症まで、さまざまな不調が起こります。特に以下のような方は注意が必要です。
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高齢者や小児(汗腺の働きが弱く、体温調節が未熟)
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運動や外出で汗を大量にかく人
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冷房の効いた室内で長時間過ごし、自律神経が乱れている人
■ 熱中症の前兆と症状
熱中症は、以下のような段階で進行していきます。40度越えの日には、自分の体調の変化に細かく目を向けましょう。
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初期症状: めまい、立ちくらみ、筋肉のけいれん(こむら返り)、大量の汗
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中等症: 頭痛、吐き気、倦怠感、集中力の低下
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重症: 意識障害、けいれん、40度以上の高熱、皮膚が乾燥してくる(汗が出なくなる)
こうした症状が現れたら、まずは冷房の効いた場所へ移動し、衣服をゆるめ、水分・電解質を速やかに補給しましょう。応答が鈍かったり、意識が曖昧な場合はすぐに救急搬送が必要です。
■ 漢方から見た「酷暑」と体への影響
漢方では、夏の暑さは「暑邪(しょじゃ)」という外邪とされ、「心(しん)」や「気(き)」にダメージを与えると考えます。暑邪の特徴は「陽性で上昇しやすく、乾燥と熱を伴う」ことです。体液(津液)やエネルギー(気)を消耗させ、のぼせやイライラ、口渇、動悸、脱力感などを引き起こします。
さらに、日本の夏は湿度が高く「湿邪(しつじゃ)」も加わり、「暑湿(しょしつ)」という重だるい、蒸し暑さ特有の症状が出やすくなります。
このような状態に対し、漢方では以下のような視点でケアを行います。
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清熱(せいねつ)… 体内にこもった「熱」を冷ます
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養陰(よういん)… 発汗や熱で失われた「津液(体の潤い)」を補う
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益気(えっき)… 脱力感・疲労感を補い、気力・体力を回復させる
■ 熱中症対策に使われる代表的な漢方薬
● 生脈散(しょうみゃくさん)
麦門冬、人参、五味子の3種からなる処方で、気と津液を同時に補うのが特徴。
特に「大量に汗をかいて体力も潤いも失ったとき」に最適で、スポーツドリンクのような役割を漢方的に担う処方です。
症状:のぼせ、口渇、動悸、倦怠感、寝汗など
● 白虎加人参湯(びゃっこかにんじんとう)
強い口渇や高熱に対応する清熱剤。白虎湯(石膏+知母)に人参を加え、熱を冷ましながら気も補う処方。
症状:高熱・発熱後の脱力、熱中症の初期などに適応。
● 補中益気湯(ほちゅうえっきとう)
夏バテ・慢性的な体力低下に使われる「益気剤」の代表。
汗をかいた後のだるさ・疲れ・やる気のなさに効果的で、胃腸機能も改善する処方。
症状:夏のだるさ、食欲不振、疲労感、立ちくらみなど
● 清暑益気湯(せいしょえっきとう)
名前の通り、暑さに負けた体を立て直す夏専用の処方。清熱・養陰・益気をバランスよく行い、酷暑の不調全般に対応。
■ 暑さに負けない!日常生活でできる漢方的セルフケア
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こまめな水分補給は「冷やしすぎず、少しずつ」
麦茶、薄い番茶、白湯、はと麦茶など、体を冷やしすぎない飲み物が理想です。冷たい清涼飲料水の飲み過ぎは胃腸を弱らせ、かえって夏バテの原因になります。 -
潤いを保つ夏の食養生を
漢方でいう「養陰(よういん)」には、体を潤す食材の摂取が有効です。例としては、麦門冬のような作用を持つ白きくらげ、はちみつ、豆腐、れんこん、梨、緑豆スープなどがおすすめです。 -
汗をかいたあとの“補気”を忘れずに
大量の汗とともに「気」も失われます。食欲がないときは、梅干し入りのおかゆ、山芋入りの味噌汁、生姜入りのスープなど消化の良い温性の食事で胃腸を支えましょう。 -
外と内の寒暖差をなくす工夫を
外気温40度、室内25度では体がついていけません。設定温度は27〜28度程度に。首・腹・足首を冷やしすぎないよう、腹巻きやレッグウォーマーもお勧め。
40度を超える酷暑は、もはや「異常気象」の一言では済まされません。現代人の体は、エアコン生活や栄養バランスの偏り、睡眠不足などで本来の“暑さに耐える力”を失いがちです。
西洋的な熱中症対策と合わせて、「気」「血」「津液(潤い)」のバランスを整える漢方の知恵を取り入れることで、体調管理は格段にしやすくなります。今年の猛暑も、自分の体に目を向けながら、賢く・快適に乗り切っていきましょう。
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